パニッシャー(シーズン2)_すべてが失敗しており全く面白くない【4点/10点満点中】(ネタバレあり感想)

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マーベルコミック
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(2018年 アメリカ)
悪役ジグソウの逆ギレが酷いわ、ヒロインのマダニ捜査官がうじうじ悩んでめんどくさいわ、パニッシャーの成敗にキレがないわで、驚くほど面白くなかったです。

©Netflix

全体構成がうまくいっていない

2本のラインが並走していたシーズン1を踏襲し、本作でも2つの物語が同時進行します。

  • 記憶を失ったビリー・ルッソがジグソウとして復活する物語
  • キリスト教原理主義勢力に狙われた不良少女エイミーの物語

ただし、2つの物語がうまく結合して力強い流れを生み出していたシーズン1と比較すると、本作では2つの物語が終始バラバラに進行しており、ビリーの話が始まるとエイミーの話がピタっと止まり、その逆もまた然りでした。

全体構成がまったくうまくいっていなかったと思います。

クライマックスに向けて三つ巴の争いになるか、ビリーとキリスト教原理主義勢力が結託してフランクに襲い掛かるという展開にすれば良かったものを、なぜか最後まで両エピソードを合流させない形にしたことも理解に苦しみました。

それぞれの物語の完成度も高くない

記憶を失ったビリー・ルッソがジグソウとして復活する物語

導入部だけは良かった

シーズン1にてビリーはキャッスル一家惨殺に関係した人間の一人であることが判明し、パニッシャーことフランクからの容赦のない制裁を受けましたが、本シーズンでは傷は治ったものの記憶の戻らない状態で再登場します。

ただしここでの彼は非常に弱弱しい存在であり、記憶がないのでなぜ自分が大勢から厳しい視線を向けられているのかが分からないという、前シーズンでの極悪非道ぶりを知っていてもなお、「ビリー、ちょっとかわいそうだな」と思うような状態です。

しかも、前シーズンでフランクから受けた傷が相当深かったのか顔面をマスクで覆い隠して生活していることも、ビリーに対して抱く憐憫の情を深めています。

吹替を担当した佐藤拓也さんの巧さもあって、この導入部のみ非常によくできていました。

顔の傷が意外と浅い

その後、肉体の回復と共にかつての戦闘スキルが戻り、監視環境から脱走するビリー。ここでようやくマスクの下の素顔がオープンになるのですが、これが拍子抜けするほど綺麗な状態だったので落胆させられました。

さっきまでしきりにマスクを着け続けていたのは一体何だったんだと。あの勿体ぶり方だと、『ハンニバル』(2001年)のメイスン・ヴァージャーくらいの顔じゃなきゃダメでしょ。

そもそもこの傷は、フランクがあえてビリーを殺さず、罪を背負って生き永らえさせる道を選択したことにより付けられたものです。ビリーの原罪とフランクの怒りを象徴する傷なのですが、それがこの程度では前シーズンの復讐劇までが薄まってしまいます。

『パニッシャー:ウォー・ゾーン』での気合の入りまくったジグソウの特殊メイクを念頭に置きつつ、男前のベン・バーンズがあの化け物になるのかと思いながら見ていた前シーズン最終話での私の感慨を返して欲しいものです。

これかと思いきや…
© Lions Gate Home Entertainment
これですからね。

ビリーの逆ギレがすごい

結局ビリーに記憶が戻ることはないんですけど、自分がフランクに何をしたのかということだけは情報として把握します。

これを聞いたビリーは兄弟と慕っていたフランクに俺はなんてことをしてしまったんだと絶望するのかと思いきや、「それならそれで俺を殺せばよかったじゃないか」「俺の顔をこんなにしやがって~!」と逆ギレを始めます。

そんなセリフは『パニッシャー:ウォー・ゾーン』のビリーぐらいの顔になってから言いやがれという感じですが。女子供を殺しといてこの程度の傷で済んだことをむしろ感謝してはどうなのと。

転がり込んだ精神科医クリスタの自宅でうだうだとしたやりとりを重ねた末に完全に拗ねた結論に至ったビリーは、『ファイト・クラブ』のタイラー・ダーデンのように退役軍人を集めた闇の組織を結成し、その後は悪行三昧。

まぁしょーもないんですよ。しょーもないんだけど、そんなビリーのドラマが全体の50%を占めているので、ドラマ全体がしょーもないことになっています。

マダニ捜査官までがうだうだ悩む

ビリーとクリスタのうだうだとしたやり取りにげんなりさせられた上に、マダニ捜査官までがうだうだと悩むので、まぁ面白くない話になっています。

特にマダニの悩みは出口がないんですよ。

かつて恋仲になったビリーが極悪人だった上に、前シーズン最終話では頭を撃たれて殺されかけたというトラウマは分かります。

ただし、結局ビリーをどうしたいんだという点に明確なゴールがないので、自己愛の強い女性が昔の男に裏切られたことを根に持ち続けているだけという見え方になっています。

フランクがビリーに甘すぎる

一方フランクはと言うと、復讐の鬼と化した前作での執念がウソのように、「俺と奴は同類かもなぁ」なんて言ってビリーに対して達観した分析ばかりをしています。自分の家族を殺した上に、反省の色もなく今も悪行三昧のビリーを見れば、もっと怒って当然だと思うのですが。

この点でも、前作からのドラマに断絶が生じているような感覚を覚えました。

キリスト教原理主義勢力に狙われた不良少女エイミーの物語

今時ネガフィルムの争奪戦

不良少女エイミーが場末のバーで複数人の殺し屋に襲われ、これをフランクが助けたことから、2人の旅は始まります。

なぜエイミーが狙われたのかというと、将来的に大統領を目指している政治家の重要な秘密を撮影し、これをネタに政治家の支持母体であるキリスト教原理主義勢力をゆすろうとしたためです。

画像なんてデジタル形式が常識であり、かつ、撮られた画像は瞬時に拡散するこの21世紀に昔ながらのネガフィルム争奪戦かと、あまりに時代錯誤な内容に参ってしまいました。

殺されかけたのに危機感のないエイミーがウザイ

バーにいた他の客を平気で殺すほどのヤバイ殺し屋集団のターゲットとなったにも関わらず、エイミーの言動が軽いのでイライラさせられました。

また、身を挺して守ってくれたフランクへの感謝がないばかりか、絶望的なこの状況において彼女にとって唯一の生存の道であるフランクからのアドバイスにも当初は耳を貸さず、いくら子供とはいえ、今は緊急事態の真っただ中であるという認識が著しく欠如した愚か者にしか見えませんでした。

フランクもフランクで、10代の少女がプロの殺し屋集団に狙われるなど余程のことなのに、エイミーが何をして狙われることになったのかという点を前半ではロクに聞きもしないので、これはこれでフラストレーションが溜まる原因になりました。

エイミーとフランクに共通するのは、このシチュエーションに置かれた人間ならば当然にとるであろう言動がないということであり、やはり本シーズンの構成は失敗したとしか言いようがありません。

ロシアン・マフィアのくだりが不要

そしてキリスト教原理主義勢力のみならず、この画像をゆすりたかりの道具にしようと考えるロシアン・マフィアもまた、エイミーを追っています。

シーズン中盤ではロシアン・マフィアvsフランクの戦いも描かれるのですが、全体の流れを考えるとこのパートは明らかに浮いており、尺を埋めるために仕方なく挿入された無駄なエピソードのように感じられました。

クライマックスに向けて粗さ加速 ※ネタバレあり

エイミーにフランクという用心棒がついたことで事態の収拾が難しくなったキリスト教原理主義勢力は、二人のクビに500万ドルの懸賞金をかけてNY中のヤクザ・殺し屋達に二人を狙わせるという『ジョン・ウィック:チャプター2』みたいな戦略に出ます。

これを受けてフランクは「根元を断つんだ」と言って戦友のカーティスと共に敵の拠点への奇襲をかけようとするのですが、その標的がなぜかビリーと退役軍人仲間達が夜な夜なたむろしている廃工場なんですね。なぜ彼は懸賞金とは無関係なビリーを襲いに行ったのでしょうか。

一方ビリーはというと、フランクからの奇襲を想定した上で、彼を追い込むための罠をちゃんと張って待っていました。クリスタ発案のもと、無関係な民間人を戦闘の巻き添えにすればフランクのメンタルはやられんじゃないのということで、ビリーが事前に殺しておいた若い女性の死体を現場に仕込んでおき、フランクに「俺が殺しちまったのか」と思わせるという作戦です。

ただし、こんな面倒くさいことしなくても、戦闘の過程では明らかにビリーが優位に立っており、フランクを殺せるチャンスがあったんですよね。そんなチャンスを棒に振ってまでフランクを仕込みの場所にまで誘導し、式次第通りに「俺が殺しちまったのか」をやる意味って何だったんだろうかと。

で、フランクは一時的にメンタルをやられて戦闘不能状態に陥るのですが、次のエピソードではアッサリと復活します。なんじゃこの話。

その他、マダニに窓から突き落とされてクリスタが死んだと見せかけておいて、実はクリスタの部屋は3階だったので死ぬほどの傷ではありませんでしたとか、激昂したビリーに首を絞められてマダニが死んだと見せかけておいて、次の場面では蘇生したりとか、命のやりとりがドラゴンボール並みに安っぽくなってしまっています。

あと、クリスタが死んだと思い込んだビリーがとんでもないバカに見えてしまっていましたね。ずっと潜伏生活を送ってきたマンションなのに、死ぬほどの高さではないことも分からなかったのと。

マーベル×Netflixは終了らしいです。

『アイアン・フィスト』『ルーク・ケイジ』『デアデビル』の打ち切りが続々と決定する中で囁かれていたマーベル×Netflixの一連のシリーズの終了が、2019年2月19日に両社より正式に発表されました。残るは、撮影済の『ジェシカ・ジョーンズ(シーズン3)』のみのようです。

当初は、親会社のディズニーが独自の動画配信サービスを開始するのでマーベルが権利を引き揚げてるんじゃないのという憶測がなされていましたが、2月19日の両社の声明からは、マーベルは継続を望んだものの、Netflixが大ナタを振るったという構図が見えてきました。

まぁこのシリーズはしんどくなってきていたので、ここいらを潮時と考えたNetflixの判断こそが正しかったと思います。

≪マーベル×Netflix≫
デアデビル(シーズン1)_素晴らしいキャラ達いっぱい【7点/10点満点中 】
デアデビル(シーズン2)_有耶無耶に終わる正義論【6点/10点満点】
デアデビル(シーズン3)_壮絶なドラマと鬱展開…つまり最高のデアデビル【9点/10点満点中】
パニッシャー(シーズン1)_コミックを越えたバイオレンスヒーロー【8点/10点満点中】
パニッシャー(シーズン2)_すべてが失敗しており全く面白くない【4点/10点満点中】

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コメント

  1. 匿名 より:

    同感 ブログ拝見してすっきりしましたw

  2. 匿名 より:

    はじめまして。
    1がおもしろかったのに、2がつまらなくてイライラして、ここにたどり着きました(笑)
    もう1回S1観ようとおもいます。

    • コメントいただき、ありがとうございます。

      シーズン2のビリーとクリスタのうだうだしたやり取りが本当にしんどかったですね(笑)。
      竹を割ったようなバイオレンスだったシーズン1からここまで落ちるかと、悪い意味で驚かされました。