仁義なき戦い 頂上作戦_小林旭がかっこいい【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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実録もの

(1974年 日本)
シリーズ第4弾。愚か者や卑怯者が足を引っ張るという構図は従前の通りなのですが、その足を引っ張る者の一人に主人公 広能(菅原文太)も加わるという点が斬新で驚きました。モラルの規範的存在だった広能の無能化は、ヤクザの時代の終焉を意味しています。

感想

戦争には金がかかる

前作ラストにて「明石組系打本組・広能組 vs 神和会系山守組」という構図が出来上がり、本作ではいよいよ大組織をバックにした広島大戦争が始まるのかと思いきや、組織同士の衝突はほとんど起こりません。

なぜかというと、それまで静観を決め込んでいた広島県警が市民とマスコミに突き上げられる形で暴力団対策に本腰を入れ始め、ヘタに動けばライバルを倒す前に警察に逮捕されるという状況が出現したためです。

そうなってくるとこの喧嘩は長期戦の様相を呈し、そのうえ関西からの応援部隊も受け入れているだけに、戦時体制の維持が両組織の課題となってきます。

そこで広能組は呉市をがっちり押さえることで、山守組の資金を止めて兵糧攻めに遭わせるという作戦に出ます。ヤクザの抗争の大きなファクターが暴力から資金に移ったわけです。

実際、山守組の若頭 武田(小林旭)は日々湯水のように垂れ流されていく経費に頭を痛めており、資金ショート寸前の状況にまで至ります。

本シリーズは現実的な組織運営を描いていることが魅力の一つなのですが、資金の話をし始めると、いよいよ広島弁を話すビジネス映画みたいになってきますね。見ていてとても楽しめました。

やはり課題は阿呆な身内のコントロール

そしてもう一つ重要になってきたのが知略。殺し合いで決着を付けられなくなった以上、知恵で相手を上回るしかないわけです。

山守組でこれを担うのは若頭の武田(小林旭)、広能組では明石から応援に来ている岩井(梅宮辰夫)なのですが、ヤクザというのは基本的に阿呆揃いなので、彼ら司令塔は作戦を理解できない身内のコントロールに苦労することになります。

武田の悩みの種は山守組長(金子信雄)。武田はこの喧嘩で中立を保っている県内の第三勢力 義西会を刺激したくないと思っているのですが、一方、山守組長は女を巡るいざこざで義西会会長に対する私怨を抱いています。

結局、山守は義西会に手を出してしまい、それが神戸をも巻き込む一大抗争に発展していくのだから、阿呆に勝手に動かれると組織が本当に迷惑します。

岩井の悩みの種は打本(加藤武)と広能(菅原文太)の両組長。

打本は全くやる気がなく、できればタクシー屋に戻りたいなどと言い出す始末。そもそも打本が村岡組二代目の座を欲したことがこの抗争の発端であるにもかかわらず、一抜けしたいなどとは身勝手でしかありません。

これを岩井は叱責するのですが、

わしらタクシー屋のおっちゃんに用はないさかい、これから1人で歩いたらよろしいがな。でもええでっか。前向いても崖や、後ろを向いても崖やで!

当の打本は糠に釘状態。この後二度、山守組を倒すチャンスが訪れるものの、二度とも打本の自白や密告により潰れることとなります。忠誠心のない身内とは敵以上に厄介なのです。

次に問題なのが広能。シリーズの主人公である広能は一貫して極道の鑑のような存在だったのですが、ゲームチェンジの起こった本作においては、昔ながらのヤクザである広能も足を引っ張る側に回ります。

サシで勝負をつけること、子分の仇を取ることに執着し、全体戦略を蔑ろにしてしまうのです。結局、広能は主人公であるにも関わらず物語中盤で警察にしょっ引かれ、表舞台から姿を消します。

モラルの規範的存在だった広能を過去の遺物扱いすることで、時代の変化を表現した本作の構成には舌を巻きました。

小林旭がひたすらかっこいい

そんな感じで菅原文太が途中退場させられる本作において、実質的な主人公の座にいるのは小林旭扮する武田です。

武田は非常に頭が良いのですが、かといって権謀術数に明け暮れて人を騙したり利用したりするタイプでもなく、極道としての筋を通しながら先を見据えた作戦を立てていきます。

常に冷静沈着で周囲を説き伏せるような話し方を基本としつつも、ヤクザらしい恫喝が必要と判断した場面では声を荒らげるという自己演出も心得ており、何から何までかっこよすぎです。特に明石会との席で啖呵を切る場面は素晴らしかったですね。

広島極道は芋かもしれんが旅の風下に立ったことは一遍もないんで!

またトム・クルーズとかジョン・トラボルタみたいな高めの声もよかったですね。周囲がドスの効いた低音ボイスばかりの中で、彼の声は「毛色の違う知性派ヤクザ」という印象をより強めていました。

そして小林旭は180cmの長身で、どの場面でも「あ、旭がいる」とすぐに目に付くほどの存在感を放っており、そのことが武田という存在の大きさにも繋がっています。

ヤクザの時代の終焉

ヤクザ達がしのぎを削った第二次広島抗争ですが、その幕引きをしたのは広島県警でした。

それまでヤクザは組の下っ端を警察に差し出し、これを受け取った警察は捜査せずとも仕事をしたことになるという悪しき関係を結んでいたのですが、上述の通り市民やマスコミが猛りまくっていることから、いよいよ誤魔化しが利かなくなってきました。

そのため広島県警は「頂上作戦」と銘打ってヤクザの幹部クラスを狙い撃ちにし、山守組、広能組、打本組の幹部は軒並みしょっ引かれます。

ラスト、裁判所の廊下ですれ違った広能と武田が、真冬の寒さの中で雪駄履きで震えながら会話をする場面で、かつて権勢を誇った彼らの時代が終わったことが表現されます。

壮大なシリーズのクライマックスとして素晴らしいラストでした。

シリーズはあともう一本作られるのですが、あれは番外編という位置づけで理解しています。

≪仁義なき戦いシリーズ≫
仁義なき戦い_内容は一般的な組織論【7点/10点満点中】
仁義なき戦い 広島死闘篇_まさかのラブストーリー【8点/10点満点中】
仁義なき戦い 代理戦争_人を喰わにゃあ、おのれが喰われるんで【8点/10点満点中】
仁義なき戦い 頂上作戦_小林旭がかっこいい【7点/10点満点中】
仁義なき戦い 完結篇_蛇足だけどそこそこ面白い【6点/10点満点中】

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