(2024年 ポーランド)
容赦のないゴア描写や、東欧特有の寒々とした空気など、猟奇サスペンスとしては高いクォリティの作品となっている。そして何よりマフィアの親分のヤバさ加減が怖いったらありゃしなかった。
感想
ポーランド発の猟奇サスペンス映画。
ポーランドは大きなマーケットを抱えているわけでもないのに、優秀な映画人を多く排出しているよくわからん国で、古くはアンジェイ・ワイダやロマン・ポランスキー、最近だと『イーダ』(2013年)でアカデミー外国語映画賞を受賞したパヴェウ・パヴリコフスキ、またスピルバーグの懐刀である撮影監督ヤヌス・カミンスキー、リドリー・スコットとよく組むダリウス・ウォルスキーなどがいる。
本作もまた、そんな先人たちの功績に恥じぬ素晴らしい出来となっている。
冒頭、クラブを訪れた若くて活発な女の子が、次のショットでは死体として湖畔に打ち上げられている。
顔を見ると唇が切り取られており、事故死でないことは一目瞭然。
過去に同様の手口で恋人を殺害して逮捕された男が数年前に出所済とのことで、そいつの家へ事情聴取に行くと、被害者の血痕が付いた衣服を発見。
完璧にこいつですなとなるのだが、容疑者は「またかよ、俺は何もしてないのに・・・」とひとしきりボヤいた後に、警察署の窓から飛び降り自殺をする。
警察としては「容疑者死亡で捜査終了」としたいところなのだが、担当検事のレオポルドは「あいつは本当にやってなさそうだったけど」「決定的証拠を家に持ち帰るバカなんていないし、真犯人にハメられたんじゃないか」と気になり始める。
上司からは「調べたら降格させるぞ」と牽制されつつも、被害者の母親にして判事のヘレナと組んでの捜索活動を開始するというのが、映画の導入部。
現在の捜査と並行して、事件に至るまでの被害者のドラマが描かれていき、やがて二つのドラマは事の真相によって結び付けられる。
まずこの構成がよく出来ており、最後まで集中力が途切れることなく見ることができた。
基本的に、物語は淡々と進んでいくのだが、要所要所で炸裂するゴア描写や暴力描写にはパンチが効いており、クライムサスペンスとしては良いバランス感覚となっている。
そして何より、捜査線上に浮かびあがってくるカザールというマフィアのヤバさ加減よ。
表向きはクラブ経営者で裏社会とは無縁の人物。
身長は低め、中年体形で物腰も柔らかいので、後に被害者となるモニカはうっかり話しかけてしまうのだけれど、じつはこいつがマジモンの極道すら震え上がるレベルの暴力性を持つ男だった。
しかもド変態。
はからずもカザールのお気に入りとなってしまったモニカは地獄へと突き落される。
このパートは本当に見ていられない程辛かったんだけど、こうした不快感もまた、クライムサスペンスとしてはよくできている証。
そして小さいマフィア=ヤバイ奴という、『グッドフェローズ』のジョー・ペシ以来の伝統を守ったカザールの人物造形のすばらしさね。
こいつが少しでも考えを変えるだけで人が殺されたりするわけで、画面に出ている間中、イヤ~な汗をかかされた。本当に怖かった。
その後に事件の真相が明かされる過程もスムースで、やはりこの映画はよく出来ている。
ただひとつ欠点は、人間関係が分かりづらいこと。
分かりづらいというか、「実はこの人とこの人にはこんな繋がりがありました」という相関図がありえないくらい密着しており、理解が難しかったと言うべきか。

娘が勤務するクラブがたまたまマフィアに経営されていて、そのマフィアはたまたま父親のクライアントでしたとか、友人関係にある子どもたちの親同士が不倫関係にあって、しかも亡くなった子供の検視を担当とか、さすがに世界が狭すぎる。
ワルシャワには30人くらいしか人が住んでないくらいの密度である。
何か聞き間違えた?とか、同一人物の話かこれ?とか、情報の整理にちょいと手間取った。


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