(2014年 アメリカ)
一応はミステリーの建付けにはなっているのですが、先が気になるような流れができておらず、何を感じ取ればいいのか分からないままダラダラとドラマが進行していくような映画でした。社会的な切り口を匂わせつつも、結局ありがちな結末に行きついてしまうというガッカリ感もあって、総じて見所の少ない作品に感じられました。
11歳のロニー・フラーとアリス・マニングは乳児誘拐殺人事件の犯人として逮捕され、少年院に収監された。7年後に彼女達は釈放されたが、その数週間後に幼児失踪事件が起こり、疑惑の目が二人に向けられ始める。
1957年シカゴ出身。コーエン兄弟の兄ジョエルの奥さんで、インディーズ映画に多数出演。『ファーゴ』(1996年)と『スリー・ビルボード』(2017年)でアカデミー主演女優賞を受賞した大女優であり、彼女が原作小説の映画化権を取得したことから、本作の製作は始まりました。
1970年LA出身。ローマカトリック教会での性的虐待事件についてのドキュメンタリー『フロム・イーブル ~バチカンを震撼させた悪魔の神父~』(2006)でアカデミー賞ドキュメンタリー長編賞にノミネート。
1993年にヘビメタファンの少年達が杜撰な捜査の末に逮捕された事件を取材した『ウエスト・オブ・メンフィス 自由への闘い』(2012年)や、1970年に27歳で急逝した女性歌手ジャニス・ジョプリンの生涯に迫った『ジャニス:リトル・ガール・ブルー』(2015年)など、ドキュメンタリー映画で高評価を獲得しています。
本作の主人公アリス(ダニエル・マクドナルド)は少年院を出所したばかりの18歳の少女で、太った見た目に、諦めきったファッションが特徴です。
彼女は常に愚痴っています。太った人間の言うことは聞いてもらえない、こんな見た目じゃ雇ってももらえない。かつ、親の愛までが実の娘の自分ではなく、美少女ロニー(ダコタ・ファニング)に注がれていたという不満を持っています。そう言ってアリスは努力を放棄している部分もあるのですが、ある一面では彼女の主張は当たっています。
この世知辛い世の中、見た目の格差が生きやすさ・生き辛さに繋がるということは確かにあります。同じく出所したロニーがすぐにバイト先を見つけられたのに対して、アリスにはいつまで経っても行く先がないのは、見た目も影響しているはずです。
加えて、本作は元服役囚の社会復帰問題も提示します。直近で幼児失踪事件が発生した際には、何の証拠もないのにアリスとロニーが疑われ始めました。
同様の事件での前科があるのだから仕方のない部分もあるとは言え、彼女らはいつまで十字架を背負い続けるのかという問題はあります。何かある度に犯罪への関与を疑われ、そのことが社会復帰を阻害する要因になるのであれば気の毒とも言えます。
本作の前半部分では、見た目と前科に対する社会からの偏見というものが描かれています。これはなかなか興味深い切り口でした。
※注意!ここからネタバレします。
しかし後半部分で明らかになるのは、アリスは見た目通りに性根までが腐っているし、美少女ロニーの方は無実だったし、大方の予想通り直近の失踪事件にもアリスが関わっていたしという、前半の問題提起を根底からひっくり返す結論でした。
サプライズと言えばサプライズなのですが、見た目の悪い方がやっぱり犯人でしたというオチは前半の社会的な問いかけを否定しているようで、何だか座りの悪いものに感じられました。
加えて、アリスの母ヘレン(ダイアン・レイン)が豹変しすぎ。前半部分ではたった一人で育児を頑張り、コンプレックスを抱えた難しい性格の娘を楽にしてあげようとする良いお母さんという佇まいだったのに、ネタバラシ後にはほぼ別人格になってしまうのだから、こちらも急すぎて付いて行けませんでした。
娘を思う気持ちが外に対する攻撃性に転化する瞬間を描けていれば良かったのですが、それがないために物語に断絶が生じています。