(2026年 日本)
面白いことには面白かったけど、展開は遅いし、余計だと思われる要素も多いし、本来はコンパクトにやるべき題材を薄く引き伸ばされた感はある。

感想
Netflixが大宣伝売ってきているこの夏の勝負作
『ガンニバル』の片山慎三が監督し、『地獄が呼んでいる』のヨン・サンホが脚本と来た日には、凄い傑作の予感もした。
たしかに面白いには面白かった。
が、密度にはムラがあって全8話構成を埋めるため無理やり引き延ばされた感があるし、ネタが明かされた時の納得感よりも「え?それおかしくない?」という違和感も結構あった。
生放送中の収録スタジオでモーリー・ロバートソンがガス人間によって爆殺されるというツカミは最高だったのだが、そこから先は何の盛り上がりもないエピソードが数話続く。
ガス人間事件を担当するのは、停職上がりの小栗旬刑事。
被疑者に対する暴行が明るみに出て謹慎処分中だったのだが、ガス人間事件の発生にあたり処分を解かれ、現場復帰を果たす
謹慎期間とは事前に決められているものであって、「小栗が必要だから復帰させました」なんていう現場の裁量は認められていないはずなんだけど・・・
また社会的注目度の高いガス人間事件において、直近で問題を起こした刑事を担当に充てることは意味わからんかった。
担当が小栗と分かった時点でマスコミやSNSからは叩かれまくるんじゃないの?
警視庁、どんだけ人手不足なんだよ
小栗旬が謹慎することになったのは、テレビ局の報道部に勤務する蒼井優の暴露報道によるものだ。
ガス人間騒動にあたり、二人は再びタッグを組むこととなるんだけれど、かつて自分をそんな目に遭わせた蒼井に再接近する小栗の心境が、これまたよくわからない。
ドラマの後半部分で、蒼井が小栗の被疑者暴行を世に出した理由が明かされるのだけれど、それが伏せられた時点ではどちらの心境にも納得感が薄く、ドラマに気持ちが入っていかなかった。
本作は、現在のガス人間騒動と並行して、過去の経緯が少しずつ描かれるという構成となっているのだが、こうした形式をとってしまうと、どうしても登場人物たちへの感情移入が難しくなってしまう。
何も知らない主人公が視点人物となり、彼/彼女を中心に謎を解明していくストーリーにした方が、視聴者との一体感を図れただろう。
そういった意味では、バズり狙いで事件に関与する動画配信者・広瀬すずを主人公にすべきだったんだろうけど、彼女のエピソードも面白くないんだよなぁ。
彼女がメインの数話は、拷問のように長く感じた。
また、途中からガス人間そのものが割とどうでもよくなっていくという構成上の問題もある。
ネタを明かしてしまうと、かつて愛する者をメチャクチャにされた蒼井優による復讐譚であり、ガス人間は意のままに操られるランプの魔人みたいなものだったんだけど、序盤にてあれほどの存在感を見せたガス人間には己の意思がなかったという点が、なんともカックンだった。
加えて、ラスボスが都知事というのも拍子抜けだったし、目先の都知事選に勝利するためガス人間を悪用するという終盤の展開もスケールが小さすぎる。
そこは総理大臣クラスであるべきなんだろうけど、なぜ都知事という設定にされたんだろう。
Amazonが制作した『仮面ライダーBLACK SUN』が叩かれまくったので、政治への風刺を控えることにしたんだろうか?
だったら現実の政治家を想起させない完全フィクションに振り切ればいいものを、小池百合子を思わせるキャラが登場したりと、現実とフィクションの間を中途半端に行き来しているのが気持ち悪い。
その一方で、ガス人間を演じたUTAは素晴らしかった。
本業はモデルで演技経験はないという。
序盤の無機質なしゃべりを見ると、演技ができないからこそ採用された『ターミネーター』のシュワルツェネッガーパターンかと思いきや、回想場面では快活な若者役を違和感なく演じており、演技の幅は驚くほど広い。
デビュー作でこれほどの存在感を見せたUTAは、今後も目立った存在になるのではないだろうか。

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