リベンジ・リスト_盛り上がらない復讐劇【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2016年 アメリカ)
自動車整備工のスタンリーは目の前で強盗に妻を殺された。数日後に犯人の男は逮捕されたが、すぐに釈放された。怒りに燃えるスタンリーは、家族のために封印してきた殺人スキルを全開にして復讐を開始する。

©GAGA

4点/10点満点中 腕の鈍った監督と主演俳優

スタッフ・キャスト

監督は『ブロブ/宇宙からの不明物体』のチャック・ラッセル

監督のチャック・ラッセルは、90年代にはジム・キャリー主演の『マスク』とアーノルド・シュワルツェネッガー主演の『イレイザー』によってヒットメーカー扱いされることもあった人です。この人の名前を見るのは、2002年にドウェイン・ジョンソンが主演した『スコーピオン・キング』以来ですね。

この人のキャリアの最重要作品は、1988年の『ブロブ/宇宙からの不明物体』です。闇に紛れて人が襲われるモンスターホラーからスタートし、ラストでは軍隊出動→巨大化したモンスター大暴れという見事な盛り上がりを演出してみせました。

この監督の演出には特段のクセがあるわけでもなく、まためちゃくちゃにうまいわけでもないのですが、娯楽作を脚本通りにきっちりと仕上げる職人的なところが売りですね。ただし本作は2002年以来の監督作ということで、全盛期と比較するとすっかり腕前が落ちていましたが。

主演はご存知ジョン・トラボルタ

『パルプ・フィクション』と『フェイス/オフ』という映画好きが大変好む映画2作品に出ているのですが、よくよく考えるとそれ以外にはロクな映画に出ていない元スター。本作で10年ぶりくらいに見たような気がしたのですが、フィルモグラフィを見ると実は近年も主演作は毎年のようにリリースされていたようです。それほど目立った作品がなかったということですね。本作ではカツラにしか見えない整いすぎた生え際で頑張っておられました。

共演は『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』のクリストファー・メローニ

トラボルタ扮するスタンリーの相棒役は、クリストファー・メローニ。この人はアメリカのプライムタイムのドラマの歴代記録を更新中の『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』に1999年から2011年まで主演。2010年には一話当たりのギャラが39万5000ドルで、ドラマ俳優としては第2位の高額ギャラを受け取っていました。

登場人物

  • スタンリー(ジョン・トラボルタ):求職中の自動車整備工。過去に政府の汚れ仕事をしており、世界中で人を殺しまくっていたらしい。
  • ビビアン(レベッカ・デモーネイ):スタンリーの妻。メザーブ州知事より、パイプライン建設予定地の環境調査のために雇われていた。
  • アビー(アマンダ・シュル):スタンリーとビビアンの娘で、幼い息子と若ハゲの旦那がいる。
  • デニス(クリストファー・メローニ):床屋。スタンリーとは殺し屋時代の仕事仲間で、スタンリー以上のスキルとやる気で復讐を強力サポートする。
  • メザーブ州知事(パトリック・セント・エスプリト):オハイオ州知事。州内での犯罪を減少させた実績と、パイプライン建設を柱とした経済政策を売りにしている。
  • ギブソン刑事(サム・トラメル):いったんは逮捕したチャーリーを大した取り調べもせずに釈放した。
  • ウォーカー刑事(アサンテ・ジョーンズ):ギブソン刑事の相棒。
  • レミ・K(ポール・スローン):アルメニア人。街の新興ギャングのボスで、警察にもコネを持っている。復讐を始めたスタンリーを脅威と見做している。
  • チャーリー(ルイス・ダ・シルバ・Jr):レミ・Kの部下で、ヤクの売人。強盗を装ってビビアンを殺した。顔にハエのタトゥを入れている。

舐めてた犯罪被害者の家族が、実は殺人マシーンでした

今回の殺人マシーンはトラボルタ

最近の映画界で流行りの「舐めてた〇〇が実は殺人マシーンでした」に、ついにトラボルタも参戦いたしましたよ。どの機関で何をやっていたのかという点は明確にされないのですが、政府系の機関で海外に出向いての殺し屋稼業をしており、仲間内でも信頼されるほど腕が良かったという設定が置かれています。

めちゃくちゃできる相棒・デニス

基本的にはよくあるアクション映画なのですが、相棒デニスの存在が本作の差別化ポイントとなっています。リベンジものってたいてい主人公一人でやるか、協力者がいても武器とか情報の提供に留まり、実戦の場には出て行かないのが普通ですが、デニスはガンガン出て行きます。

復讐の開始時点からしてノリノリ。普通なら「お前が本気なら手を貸してやるよ」みたいなことを言うべきポジションなのに、デニスったらスタンリーを待っていたような顔をしており、「やろうぜ、やろうぜ」とむしろスタンリーよりもやる気があります。しかも超有能。敵の居場所を探る強力なネットワークと、スタンリーのピンチを確実に救う先頭スキルの高さで、良いところはほとんど彼が持っていきます。

彼の存在により、「舐めてた相手が実は」としては珍しい、バディものとなっています。

全体的にヌルい仕上がり

妻を殺された夫の悲しみを表現できていない

本作の最大の問題点がこれですね。一応、葬式のシーンがあったりで死者を悼むイベントは挿入されているものの、主人公の悲しみが全然観客に伝わってきません。そもそもチャック・ラッセルは感情表現を得意とした監督ではなかったのですが、長期のブランクで余計に下手になっちゃったって感じですかね。

敵を襲い始めた後には完全にバディアクションと化し、相棒と軽口を叩きながら敵を殺して回るという情感ゼロの話になっていきます。このテーマであれば、もっと湿っぽく作る必要があったと思います。

負ける気がしない敵

敵はアルメニア人のギャング・汚職警官・州知事なのですが、まずギャングの組織力が描かれていないので、いかつい親玉と数人の弱そうな部下がいるだけの貧弱な組織に見えてしまっています。その結果、政府の汚れ仕事をやっていたスタンリーとデニスならば余裕で勝てそうな相手に感じられてしまい、戦いに緊張感がありませんでした。

汚職警官と知事については、法や権力を笠に着てどれだけえげつないことをしてくる相手なのかという前振りが必要だったと思うのですが、そうしたうまいフリが効いていないので、こちらも強敵になりえていませんでした。

主人公も隙だらけ

そしてスタンリーも隙だらけで、行動に用心深さや緻密さが感じられないので、殺しのプロとして生きてきた人間らしい凄みに欠けていました。最初の殺しの現場を簡単に撮影されてしまうし、すぐに身バレして拠点の床屋に敵がやってきたり、家族が襲われたりするわけです。彼の設定を考えると、もっとスマートに行動して欲しいところでした。

いろいろと不可解な脚本

  • 冒頭、犯罪の凶悪化を伝えるニュースが出てくるので、治安問題が作品のテーマの一つになるのかと思いきや、治安に係る問題は本編でまったく出てこない。
  • 殺人マシーンのはずなのに、強盗に襲われる場面では素人レベルの負け方をする。
  • アビー宅がギャングに襲撃される場面で、アビー宅に居て運悪く殺されてしまった女性は一体誰だったのか。前後にまったく説明がない上に、彼女の死が以降の展開にまったく影響を与えないので、謎の人物になってしまっている。
  • 知事公邸に武装したボディガードを置きすぎで、もはや麻薬王の邸宅みたいになっている。
  • 主人公に最大のダメージを与えるのが、ギャングでもボディガードでもなく知事というのはいかがなものか。

まとめ

「舐めてた〇〇が実は殺人マシーンでした」系の映画は大好きなのですが、本作は全然ダメでしたね。殺人マシーン側に凄みがないし、復讐を応援したくなるようなドラマもなく、敵も弱そうなので、盛り上がりどころがありませんでした。

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