ジョン・ウィック_後半に向けてつまらなくなっていく【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2014年 アメリカ)
キレッキレのアクションは素晴らしいのですが、ちょいちょい間抜けな展開があって、後半に向かうほど「ジョンって頭が悪いのかな」と首をひねりたくなる展開が目立つようになります。

©Twentieth Century Fox

あらすじ

元凄腕の殺し屋ジョンは愛する妻ヘレンとの出会いで平穏は生活を送っていたが、ヘレンは病で亡くなる。その後はヘレンから贈られた一匹の子犬を大事に育てていたが、ある時、ジョンの愛車がロシアン・マフィアの息子に目を付けられたことから家を襲撃され、子犬も殺される。怒りに燃えるジョンは再び銃を手に取り、復讐を実行する。

感想

的確かつ簡潔な導入部が素晴らしい

現在のアクション映画界を席巻している「舐めてた相手が実は殺人マシーンでした(©ギンティ小林)」映画では、主人公がストレスを受ける序盤でどれだけ観客をイラつかせて「あんな野郎やっちまえ」と思わせるかが重要。この点で、本作は満点でした。

  1. 主人公の穏やかな日常
  2. 日常を破壊するダニどもの登場
  3. 殺人マシーンに戻る決意をする主人公
  4. ヤバイ奴を怒らせたことに気付くダニども
  5. 一面血の海

これが一般的なテンプレートなのですが、特に導入部ではこの流れが忠実に守られており、主人公・ジョンと観客の感情的なシンクロ率がかなり高くなっています。

加えて、この導入部がめちゃくちゃコンパクトにまとめられていたことも好印象でした。1.なんてものの数分で片付けてしまうのですが、ボッチ感溢れるキアヌ・リーブスと子犬のツーショットを見せられるだけで、万人は「彼らに悪いことが起こりませんように」と願ってしまうわけです。このあたりは配役の妙であり、他の俳優ではここまでスムーズにはいかなかったと思います。

さらに、3.4.は「お前はババヤガ(ブギーマン)を怒らせてしまったんだぞ!」と馬鹿息子を叱り付ける組長と、仇をぶっ殺すことに決めて床をぶち破って地下に封印していた武器を掘り出すジョンのクロスカットによって同時に処理しており、情報整理が実にうまくいった映画だという印象を持ちました。

キレッキレの「ガンフー」

本作のアクションは「ガンフー」と言うらしいですね。ガン+カンフー。「ガン=カタのパクリだろ」とも思ったのですが、2002年の『リベリオン』はもろに『マトリックス』の亜流作品だったわけで、結局キアヌ・リーブスがハリウッドにおけるこのジャンルのパイオニアという点は変わらないようです。すごいぞ、キアヌ。

ちなみに『マトリックス』がワイヤーアクションを多用したのに対して、低予算の『リベリオン』ではコストのかかるワイヤーアクションはほとんど使用されておらず、その結果、ガン=カタはマトリックスに似ているようで似ていない独特のスタイルとなったのですが、『ジョン・ウィック』はワイヤーアクションを用いないことでガン=カタに近いスタイルとなっています。その他、本作のアクションの特徴は以下のとおり。

  • ありがちな二丁拳銃ではなく銃は両手でしっかりと構え、加えて脇を締めてちゃんと狙う。
  • 異常に高い命中率。放つ銃弾はほぼ当たっている。
  • 一人の敵に対して放つ銃弾は二発。一発目は狙いやすいボディに確実に当て、敵の動きを止めたところで二発目のヘッドショットで確実に絶命させる。
  • 格闘に入っても最後の〆は打撃ではなく銃弾であり、ここでも確実に殺すことが重視されている。
  • めちゃくちゃに素早いマガジンチェンジ
  • マガジンチェンジが間に合わない時には武器を持ち替える

ものすごい勢いでヘッドショットを決めていくことの爽快感と、仕留め損ねた敵に背後を突かれることがないよう確実に絶命させるという合理性が、とりわけ印象に残りました。荒唐無稽なアクションでありながら、そこに一片の説得力が感じられるのです。

なお、英語版のwikiを見るとガンフー”Gun Fu”という言葉は一般名詞として登録されており、1986年の『男たちの挽歌』がその始祖であるとのことでした。すごいぞ、ジョン・ウー。

ユニークな世界観の構築

本作の舞台となるのは、殺し屋業がある程度の社会的地位を占めた世界。

殺し屋専用のホテルや清掃業者がおり、その業界でしか通用しない通貨も存在しています。また、カタギに迷惑をかけない限りは警察も殺し屋に干渉しません。現実社会に似ているようで似ていない世界ですが、これがなかなかスタイリッシュで魅力的でした。

この世界観は、最近Netflixで公開された『ポーラー 狙われた暗殺者』に似ているような気がしました。その原作となったグラフィックノーベル”Polar”の発表が2012年だったのに対して、本作の制作は2013年頃だったので、もしも両作間で影響があるとすると、”Polar”→『ジョン・ウィック』→『ポーラー 狙われた暗殺者』という順番かなと思います。

ジョン・ウィックが取っ捕まる中盤以降の展開がイマイチ

以上、導入部やアクションは素晴らしかったのですが、中盤以降には首を捻らざるをえない展開が多かったことが気になりました。

無謀な襲撃をかけて捕まるジョン・ウィック

ロシアンマフィアの地下金庫を襲って彼らの資産を灰にした上に、大勢の子分を引き連れて現場にやってきた組長を襲うジョン。闇に紛れて活動するイメージの強い殺し屋が白昼堂々と姿を現したこと、また大勢の敵をたった一人で相手をしたことなど、ここでのジョンの行動は観客にとっても組長にとってもサプライズだったと共に、マシンガンを乱射するキアヌは悶絶級のかっこよさでした。

しかし、結局多勢に無勢で敵に捕まっちゃうんですよね。戦力差を計算せず力任せに突っ込んで行ったんかいと、ここで冷めてしまいました。プロであるからには、十分な勝算をもって臨んでほしいものです。

強敵・ジョン・ウィックの死をちゃんと確認しない組長

捕まえたジョンの処刑を指示すると、その死を見届けず、2名の部下だけを残してその場を立ち去る組長。処刑を命じられた部下は部下で、脳天に一発ズドンと銃弾を撃ち込めばいいところを、ビニール袋を被せて窒息させるというクソめんどくさい方法をとります。

はい、昔の007でよくあった、そして『オースティン・パワーズ』でもネタにされた、アホ丸出しの敵組織の行動ですね。ハードルを下げたので、どうぞ反撃してくださいと言わんばかりの。
こういうアホな行動にはガッカリです。

馬鹿正直な組長

窮地を脱したジョンは再度、組長を追い込んで怨敵である息子の隠れ家を聞き出すのですが、相手は百戦錬磨の組長だけに大勢の部下が待ち構えるウソの場所を教えるのかと思いきや、本当の隠れ家を教えるんですね。もうバカかと。

馬鹿正直なジョン

そしてジョンはジョンで、隠れ家を聞くと素直に退散し、その後の脅威となることが明確な組長を無傷で帰らせます。で、結局その後の展開で親分を殺しに行くことになるのだから、なぜここで殺しとかなかったんだと、その不合理な行動にイライラさせられました。

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