(1995年 フランス)
俳優マチュー・カソビッツの監督作にして、若干28歳にしてカンヌ映画祭監督賞を受賞したという話題性たっぷりの映画だが、個人的にはイマイチだった。「バンリュー」(貧しい公営住宅地帯)にスポットを当てた点で文化的・歴史的な意義もあるのだろうけど、日本人目線ではまとまりのない映画でしかなかった。

感想
フランス映画の名作ランキングでは必ずと言っていいほどその名をあげられる、90年代フランスを代表する映画。
マチュー・カソビッツ監督は、若干28歳にしてカンヌ映画祭監督賞を受賞し、その評価がきっかけとなってハリウッドからお呼びがかかり、ハル・ベリー主演のサスペンスホラー『ゴシカ』(2003年)や、ヴィン・ディーゼル主演のSFアクション『バビロンA.D.』(2009年)を監督するに至った。
また日本国内においてはBlu-rayの供給期間が非常に短かったことから、ディスクにかなりのプレ値が付いていることでも目立った存在となっている(2026.8.14にAmazonを閲覧したところ、定価2,500円のディスクが39,980円にまで跳ね上がっていた)。
というわけで、映画好きなら「見なきゃ!」と思わせる要素の多い作品ではあるが、個人的にはあまり食指が向かず、今の今まで見てこなかった。
何かの抱き合わせで買った本作のレーザーディスクは手元にあるんだけど、一回も再生していないし。
なんだが、Amazonプライムで見放題配信されているのを発見したので、とりあえず見てみることにした。
非行青年3人組の24時間のドラマが本作の骨子であり、主人公3人がいろんなところにフラッと足を運んでは、あーだこーだとくっちゃべったり、軽くトラブルに巻き込まれたりする様が描かれる。
ただし本作の特異な点は、3人全員が移民の出身であること(ユダヤ系・中東系・アフリカ系)、彼らの根城は「バンリュー」(貧しい公営住宅地帯)であること、貧困層による大規模なデモ翌日の物語であること、そしてデモ鎮圧時に警察官が紛失したというピストルが3人の手元にあるということだ。
物語の序盤で登場したピストルは、きっとクライマックスで撃たれることとなる。
問題は、撃つのは誰で、撃たれるのは誰なのかということだ。
そうした観客の先読みを利用し、終始、物語に不穏な空気を漂わせた構成はよく出来ている。
ピストルを持っているのが3人組の中でももっとも血の気が多く、かつ行動も読めないヴィンス(ヴァンサン・カッセル)であるということも、サスペンスを高めている。
またドキュメンタリー風に雑然と撮影しているように見えて、実は様々な構図がバチっと決まっているという美的センスもあり、芸術的な評価が高いことにも頷ける。
加えて、おしゃれで洗練された街というイメージのパリにおいて、あまり扱われてこなかったバンリューを舞台にしたことも、当時としては画期的だった。
その後、バンリューはフランス映画界における定番の舞台となり、その中からカンヌ映画祭でパルムドールを受賞した『ディーパンの闘い』(2015年)、審査員賞を受賞した『レ・ミゼラブル』(2019年)といった秀作も生まれている。
そうしたバンリュー映画の嚆矢となったという点で、本作は文化・歴史的に重要な作品だと言えよう。
ただし問題なのは、「非行青年3人組の24時間のドラマ」という骨子の部分が面白くないということだ。
移民特有の訛りだとか、独特な言い回しだとか、ネイティブになら伝わる何かがあるのかもしれないが、少なくとも日本人にはちぃとも伝わってこない。
複数人が早口で喋りまくる場面も多い本作の情報量を、字幕では全くカバーできていなかったし。
おそらく会話劇としての面白さもあったであろう作品において、字幕の情報量と表現力がまったく追いついていないのだから、もうどうしようもない。
結果、非行青年たちの一日をただ見せられているだけなので、面白く感じるはずがない。
願わくば、吹き替え版を作ってくれれば。
移民の訛りや言い回しといった部分の再現は難しくとも、情報量の不足だけは完全に補えるはずなんだが。


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