【凡作】レディホーク_鈍重なアクションとダサイ音楽が難(ネタバレあり・感想・解説)

SF・ファンタジー
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©Twentieth Century Fox

歴史ものとして作られたファンタジー

権力者からの逆恨みにより呪いをかけられて引き裂かれたカップルという伝承や童話でありがちなファンタジー設定をとりながらも、外観上はあくまで歴史ものの体裁を取り続けているという1982年の『コナン・ザ・グレート』みたいな映画なのですが、1978年の『スーパーマン』とは打って変わってVFXを多用しないというリチャード・ドナーの方針や、イタリア(設定はフランスであるものの撮影地はイタリア)の自然や田園風景を捉えたヴィットリオ・ストラーロの美しい撮影によって、きちんと歴史映画に見えているという点はさすがでした。

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美しさの絶頂にあった主要キャスト3人

見た者全員を魅了する絶世の美女・イザボー役には撮影当時25歳のミシェル・ファイファー。誰の目にも美人に映らないと作品を崩壊させるという重要な役どころにあって、ファイファーは見事にその役割をこなしています。また、相手役のルトガー・ハウアーもファイファーと吊り合うほどの美貌と色気を放っており、かつ、この二人にはこの世のものとは思えない神秘性も宿っていました。

旅の同伴者であるフィリップは超常的な雰囲気を漂わせる二人と観客を繋ぎ合わせる役柄であり、こちらには適度な俗っぽさと多くの観客から親しみを持って受け入れられる愛嬌が必要だったのですが、当時青春映画のスターだったマシュー・ブロデリックが見事にその役割を果たしています。彼の親しみやすい美しさと器用な演技によって、観客は感情移入の依り代を得ているのです。本作の配役は完璧だったと思うし、多様な個性を持つ俳優を組み合わせることに長けたリチャード・ドナーの手腕も絶好調でした。

なお、ナバール役には当初カート・ラッセルが起用されており、ルトガー・ハウアーにオファーされていたのは敵方の隊長役だったのですが、完成した作品を見るとカート・ラッセルにならなくて本当に良かったと思います。

長すぎる上映時間と盛り上がらないアクション

物語は、旅の末に憎き権力者が支配する街に戻り復讐を果たすというアドベンチャーとして王道のものであり、観客の想定を超えたサブプロット等は派生しないのですが、そんな分かり切った話を描くのに121分という上映時間は長すぎました。フィリップがナバールとイザボーの秘密に気付くまでの過程がめんどくさすぎるし、旅の過程では捜索隊に追い付かれてチャンバラという展開を何度か繰り返すだけなので飽きました。

また、肝心のアクションは鈍重でかっこよさやスリルが伴っていません。クライマックスとなる討ち入りでもミサという大舞台を設定しながらナバールと戦っているのは数人の近衛兵だけで、大勢いるオーディエンスはいきなり始まった果し合いに怯えて逃げ回るわけでも、乱入者ナバールを排除しようとするわけでも、逆に目の上のたんこぶだった大司教を排除しに現れたナバールの姿に歓喜するわけでもなく、ただ突っ立っているだけなのでとても不自然な存在に見えました。さらに、戦っているのは基本的にナバールだけで、イザボー・フィリップとの役割分担がほぼ皆無だったという点も面白くありませんでした。特にフィリップは突破不可能な城塞都市への潜入スキルを見込まれてナバールに引き入れられたというそもそもの経緯があるのに、クライマックスでほぼ役に立っていないというのはどうしたことかという感じでした。

ポップな音楽がダサい

あと厳しかったのは80年代の緩いポップス風の音楽が死ぬほどダサかったということで、作り手達もこの点は狙って崩しているということは分かるものの、その演出意図を理解してもなお、この音楽は厳しかったです。ここぞという場面で音楽が流れ出す度に「あ~あ」という残念な気持ちになりました。

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