パニッシャー(シーズン1)_コミックを越えたバイオレンスヒーロー【8点/10点満点中】

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マーベルコミック
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(2017年 アメリカ)
パニッシャーが初登場した『デアデビル シーズン2』からの急激な方向転換で当初は戸惑うし、13話を使って一つの物語を扱っているため見せ場の数も多くはなく、中盤ではやきもきさせられたのですが、見せ場を小出しにしてこなかった分ラスト4話の爆発力は凄まじく、全体の構成はよく計算されています。私は、Marvel×Netflixでは上位クラスの作品であると感じました

家族の弔い合戦は5分で終了

『デアデビル シーズン2』の終盤、引き留めるカレン・ペイジを振り切って修羅の道へと突き進む覚悟を決め、スクーノヴァ大佐が隠し持っていた大量の銃火器と手製のドクロ衣装を身に着けたフランク・キャッスルの姿には熱いものを感じましたが、肝心の弔い合戦は本作の冒頭5分で終了し、ドクロ衣装もさっさと処分されてしまいます。当初から予定されていた変更なのか、それとも制作方針に変更があったのかは分かりませんが、ともかく本作の急な方向転換には驚かされました。

バイオレンス路線の極北

Marvel×Netflixの作品群は「現実世界でもこのようなことが起こっているのかもしれない」というリアル路線が売りとなっていますが、本作はその路線をさらに強め、もはやヒーローものとは言い難いほどの内容となっています。

まずパニッシャーは超人ではなく、ヒーロー特権もなし。NY市警とデアデビルを相手に大立ち回りを演じたフランクの姿はそこにはなく、複数の敵に取り囲まれれば逃げることを余儀なくされ、銃弾の嵐の中で被弾し、殴られれば血を流し、骨や歯を折られながら戦い続けるという何とも悲壮な戦士となっています。

また、ヒーローものに不可欠な爽快感もなし。パニッシャーって日本で言うところの『必殺!』みたいなもので、正当な手段では対抗できない悪に毒を以て毒を制す的な発想で痛烈な一打を与える瞬間の爽快感こそが作品の醍醐味だと思うのですが、本作には視聴者の溜飲を下げさせるような展開はほぼなく、ずっと暗いです。勝ったところで何かが良くなるわけでもなく、世の悪いことの一つが片付いた程度でしかないという、なんともやるせない気持ちにさせられるのです。

クレア・テンプルが出ない

クレア・テンプルはMarvel×Netflixの全作品に登場し、ヒーロー本人達以上にヒーロー事情に詳しいお母さん的な立場を果してきましたが、本作は初めてクレアが登場しないシリーズとなりました。ネタを明かせばロザリオ・ドーソンのスケジュールが合わなかったためで、製作者達が意図したものではないのですが、結果的に清涼剤的なクレアの不在が作品全体のどんよりとした空気をより強める効果を発揮しており、従来のMarvel×Netflixからは断絶した作風の作品であるという印象を視聴者に与えるに至っています。彼女の不在は吉と出ています。

21世紀版ランボー

社会から置き去りを食らった元兵士達の怨念に満ちた物語は21世紀版『ランボー』とも言えるものであり、「病んだアメリカ(©水野晴郎)」の荒んだ空気が全編を席巻しています。妻子を失ったフランクと、父親を亡くしたリーバーマン一家の交流などほのぼの展開がなくもないのですが、良い空気が流れ始めるとすぐに悪いことが起こるという徹底ぶりであり、本作は視聴者とフランクに対してまったく容赦がありません。

暴力描写は凄惨を極め、成人指定を食らった『パニッシャー:ウォーゾーン』に匹敵するレベルとなっています。テレビドラマである本作は映画版以上にキャラ描写が詳細であることから、視聴者が愛着を感じていた人物が凄まじい暴力に晒されるという展開の衝撃度は大きく、こちらでも視聴者は痛めつけられます。

≪マーベル×Netflix≫
デアデビル(シーズン1)_素晴らしいキャラ達いっぱい【7点/10点満点中 】
デアデビル(シーズン2)_有耶無耶に終わる正義論【6点/10点満点】
デアデビル(シーズン3)_壮絶なドラマと鬱展開…つまり最高のデアデビル【9点/10点満点中】
パニッシャー(シーズン1)_コミックを越えたバイオレンスヒーロー【8点/10点満点中】
パニッシャー(シーズン2)_すべてが失敗しており全く面白くない【4点/10点満点中】

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