シェルター_ステイサム版ジェイソン・ボーン【8点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2026年 イギリス・アメリカ)
引退した元殺人マシーンというステイサムの設定はいつも通りだが、ここでのステイサムは無敵ではない。舞台が全編イギリスとなったことで作品全体が湿っぽい空気感を纏い、そして子役との化学反応も起こっているので、意外や意外、実に味わい深い良作となっている。

感想

日曜のお昼にTOHOシネマズ日本橋で鑑賞した。

シネコンでは一番小さいスクリーンを割り当てられていたこともあり、場内はほぼ満席。

先日見た『ラスト・サバイバー』(2026年)のガラガラ加減とは対照的な熱気が気持ちよかった。

スコットランドの絶海の孤島で苦虫を嚙みつぶしたような顔をしているジェイソン・ステイサム。

相棒は犬一匹で、そこにはセリフもない。

一見すると灯台守だが、灯台はすでに破損しており、そこに明かりが灯ることはない。

島には船で定期的に物資が送り届けられる。

玄関先にまで物資を持ってくる少女は子供なりのプレゼントで彼の気を引こうとするが、一方ステイサムはそんなものには目も暮れない。

冒頭数分ですでに充満するハードボイルド感。この時点でハートを鷲掴みにされてしまった。

作品の概要はなんのこっちゃない、いつものステイサム映画である。

引退していた元殺人マシーンが、そうせざるを得ない状況に巻き込まれたことで闘争本能に再点火させ、「能ある鷹は爪を隠すが、一度出した爪はなかなか引っ込めない」方式の大暴れを繰り広げる。

だがしかし、舞台がアメリカからイギリスに移ったことで、ここまで変わるかというほど雰囲気が変わっている。

とにかくクールで湿っぽく抒情的。

舞台は絶海の孤島→農場→大都市ロンドンと推移していき、英国らしさを存分に味わわせる。舞台選び、見せ方のセンスも素晴らしい。

リック・ローマン・ウォー監督はスタントマン出身で、ジェラルド・バトラーと組むことが多いので、一般的にはB級映画の監督と見做されている。

だが、ただガタイがいいだけのトラック運転手ドウェイン・ジョンソンがガチのヤクザと対峙して右往左往する『オーバドライヴ』(2013年)、運悪く収監されたエリートサラリーマンが獄中で犯罪王にのしあがる『ブラッド・スローン』(2017年)、間もなく世界が滅びますと予告された地獄で家族が離れ離れになってしまう『グリーンランド-地球最後の2日間』(2020年)などなど一筋縄には括れない作品ばかりで、この監督には注目してきた。

そんな中での本作である。

ある嵐の日に物資の輸送船は沈没し、ステイサムは負傷した少女を匿わざるを得なくなる。

人との接触を完全に断つことで自身と社会の安全を保ってきたステイサムに、ここで綻びができてしまう。

数か月後、家の食料は底を尽き、また少女は治療薬を必要としている。

万全の注意を払って買い物に出かけるステイサムだが、巨大な敵にその生存を突き止められてしまう。

その敵とはステイサムの古巣MI6であり、聴聞会でも問題視された監視システムを用いてステイサムを発見。

ステイサムは暗殺任務を放棄して雲隠れした過去を持つようだ。

・・・というストーリーは、はっきり言ってしまうとジェイソン・ボーンシリーズ、特に『ボーン・アルティメイタム』(2007年)の焼き直しである。

MI6で現場の指揮を執っているのが女性であり、かつその現場監督は事の真相を知らないまま主人公を追いかけているという設定も含め、まんま『ボーン・アルティメイタム』。

そしてジェイソン・ボーンシリーズに倣い、主人公と同じ訓練プログラムで育成された別の殺人マシーンが二人を追ってくる。

その殺人マシーンは”ワークマン”と呼ばれており、直近のステイサム主演作『ワーキングマン』(2025年)とかぶってちょいとややこしいのだが、こいつがステイサムと同等の戦闘スキルを持っているものだから、敵としてもまぁ厄介。

何度もまみえる二人だが、激闘の末にステイサムが勝利するなんていう毎度の展開は迎えない。

それどころか、少女を庇いながら戦わざるを得ないステイサムの方が常に分が悪く、ステイサムが命からがら逃げ出すほどの状況なのだから、どれほどの脅威かお分かりになるであろう。

こいつは『ボーン・アルティメイタム』でいうところのエドガー・ラミレスの立ち位置かな。

めちゃくちゃに強いステイサムですら裸足で逃げ出すほどの強敵をクリエイトできているって、実はすごいことだと思う。

凄いと言えば少女の描写もだ。

全体から見るとステイサムの足を引っ張る存在なのだが、不思議と彼女を邪魔に感じない。

例えば前半での島の襲撃場面。

戦士の勘で迫りくる強襲部隊の気配をいち早く感じ取るステイサムと、その時点ではなんのこっちゃ分かっていない少女の反応が対比される。

通常の映画ならば、ここで「どうしたの?」「怖いんだけど」「一緒にいたい・離れたくない」などというしち面倒くさいやり取りが描かれるであろうところ、ステイサムの反応を通して少女も空気を読む。

ステイサムから「バスルームに隠れてじっとしていろ」と言われれば、手元にあったナイフだけを素早く掴み、四の五の言わずバスルームへと直行する。

「今は緊急事態の真っただ中である」ということを素早く認識してからのきびきびとした動きが気持ちいい。

そして、こうした「分かってる反応」を繰り返した後だからこそ、ワークマンとの決着を前に少女を脱出させようとするステイサムと、「あなたと一緒じゃないとダメなの」と初めてワガママを言う少女のやり取りにはぐっとくるものがあった。

500人もの子役をオーディションした末に『ハムネット』(2025年)のボディ・レイ・ブレスナックが選ばれたそうだが、子供らしい一面と、子供を超越した一面を併せ持つブレスナックの演技にも舌を巻いた。

とにかく本作はB級アクションの枠に収まらない良作なので、偏見なく多くの人に見てもらいたいものである。

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コメント

  1. Yujin 23 Duo より:

    格闘シーンもどことなくボーンシリーズを意識したような作りでしたね。
    カット割りが少なく、割と見やすいジェイソン・ボーンみたいでした。