アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方_超人機メタルダーと同じ哲学【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

スポンサーリンク
スポンサーリンク
実話もの
実話もの

(2024年 アメリカ)
若き日のトランプの成り上がり一代記。大物弁護士に見初められ、その成功方程式を忠実に実践していくことでのし上がっていくトランプの姿は痛快だったし、二人の関係が拗れていく後半もドラマチックだった。トランプ自身は本作を良く思っていないようだが、描写は割とフェアで見やすい。

感想

Netflixにあがっていたのを何気なく見たら面白かった映画。

ちなみにIMDBを見ると、本国アメリカではNetflixに配信を拒否されたらしい。

理由は、ネトフリ加入者にはトランプ支持者が多いので、客を怒らせるようなことはしたくないとのこと。

商売だから仕方ないよね。

下町で家業の不動産業を継いだ若き日のトランプが、腕はメチャクチャいいのだけどその分悪名も高い顧問弁護士ロイ・コーンの影響で、どんどんマッチョ化していくというのが、超ざっくりとしたあらすじ。

「アプレンティス」というタイトルには、見習いや研修生という意味がある。

遠い異国の地の私の目から見たドナルド・トランプという人物は、「よくわからん」の一言だ。

報道を真に受けると、口は悪いし、政策も極端だし、何が良いのかさっぱり伝わってこない。

しかし彼は選挙で二度も選ばれているのだし、イラン侵攻で支持率が下がりに下がった2026年4月末の世論調査でも30%台半ばをキープしている。

アメリカの総人口は3億5000万人なので、その1/3と言えば1億人以上はトランプを支持してるってことになるんだが、報道を真に受けるとそれだけの人数に支持される要素が見当たらない。

トランプのやることのすべてが悪いわけではないし、中には良いこともしているはずなんだが、そうしたことが全然表に出てこないので、ドナルド・トランプという政治家の実像が見えてこないのだ。

トランプもトランプでそうした攻撃を逆手にとって、「マスコミは嘘ばかり書く」「自分は不当な悪評にさらされている」「自分が守ろうとしているものが危機にさらされている(=自分が最後の守護者である)」という構図を作りあげ、支持者との間の関係性を強固にしているのだから、したたかなものである。

とはいえこれだけ世界中から悪口を言われていれば、気持ちが落ち込んだり不安になったりもするだろう。

そんな、常人のメンタルではとても耐えられないような環境下でも、なんだかんだ政治ができているトランプを見ていると、詳細わからんがいろいろ凄いなとも思えてくるのだが、かくも異常な大統領がいかにして生まれたのかを、本作では実に面白く教えてもらえる。

本作の脚本を書いたのはヴァニティ・フェア誌のジャーナリスト ガブリエル・シャーマンで、監督したのはイラン出身のアリ・アッバシ。双方、トランプを良く思ってなさそうな人たちである。

なんだが批判一辺倒でもないのがこの映画の凄いところで、トランプという人物を実に興味深く描いている。

この辺りのニュートラルさは、政治を扱わせると作り手の思想がドバっと出てしまう邦画にも見習ってほしいものである(『新聞記者』とか・・・)。

例えばトランプとロイ・コーンが関係を持つ直接のきっかけとなった司法省絡みの一件。

トランプの会社では、不動産審査書類に「C」という記号を書き入れていた。

これはおそらく”Colored”(有色人種)を示す暗号で、入居審査で人種差別を行っているのではないかとして、トランプは司法省から訴えられたのだ。

ロイ・コーンの辣腕によってトランプは危機を脱したのだが、通常の映画ならば、人種差別をしていたトランプが悪徳弁護士の入れ知恵で勝利したという安直な構図に持ち込むことだろう。

しかし本作では、マンションを一室一室回っての家賃回収にトランプが苦労する様子が挿入される。

不動産業者からすれば家賃の取りっぱぐれは死活問題であり、回収率の低い有色人種を避けたかったという事情は、人種差別とはまた別の次元で存在していたということを明らかにする。

こんなにフェアな伝記映画があるだろうか。

トランプのピンチを、あの手この手で救っていくロイ・コーンの動きは小気味いい。

ロイ・コーンは24歳にして上院議員ジョゼフ・マッカーシーの右腕となり、赤狩りで権力を振るった人物である。アイゼンハウアー大統領の怒りを買ったマッカーシーと共に失脚した後には、弁護士に転身した。

敵には容赦なく、しかし味方と見做した相手には協力を惜しまない姿勢から弁護士として大成功をおさめた。

若き日のトランプからも報酬を受け取らず、しかし手持ちの人脈は惜しみなく提供することで、彼を大物に仕立て上げていった。

クイーンズ(日本で言うところの錦糸町のイメージらしい)の不動産業者で終わるはずだったトランプを、マンハッタンの不動産王にまで押し上げたのは、上流階級に食い込むための作法を教え、また手持ちの人脈を惜しみなく提供したロイ・コーンだったと言える。

そんなロイ・コーンの信条は、「攻撃・攻撃・攻撃」、「否定・否定・否定」、「決して敗北を認めない」。

劇中でこれを聞いた時、私は『超人機メタルダー』のOP「君の青春は輝いているか」の歌詞を思い出した。

おおよそヒーローものらしからぬタイトルからもお察しの通り、特撮ファンの間では説教ソングとして名高い歌である。作詞を手掛けたのは名脚本家として知られたジェームス三木だ。

夢を果たすまで 一歩もしりぞくな

負けたと思うまで 人間は負けない

どうだろう、ほぼロイ・コーンの主張と同じくである。

メタルダーの歌詞を引用してまで何が言いたいかというと、劇中では極端に描かれていたが、ロイ・コーンの主張自体は、割と一般的な成功方程式だということだ。

なおトランプはゴリゴリの右翼であるが、生前のジェームス三木はゴリゴリの左翼であった。

師匠ロイ・コーンより叩き込まれた成功方程式を実践し、トランプはどんどんのし上がっていく。

アトランティックシティでのカジノ投資などうまくいかなかった案件もあるが、失敗を認めず力押しに押すことで、トランプは勝ち星を刻み続けた。

劇中では否定的に描かれていたが、私は経営者かくあるべしという教訓として受け取ったし、トランプが勝ち(実際には負けていることが多々ありつつも)を重ねていく過程を小気味良く感じた。

その過程では、トランプだって不安を感じることもあっただろうが、これが自分自身のモットーではなく、尊敬する師匠から教えてもらった格言だったことも、彼のメンタルの安定につながっていたのではないかと思うのである。

終盤ではトランプとコーンの関係がこじれたかのように描写されているが、それはコーン自身が弱者に転じてしまったことで、かつてトランプに教えた自らの格言にそぐわぬ存在となってしまったことが原因だろう。

wikiの作品記事では”コーンの想像を超える怪物へと変貌を遂げていく姿を描く”などと書かれていたが、私はそう感じなかったかな。

まぁ映画の捉え方は人それぞれなので、wikiの記事通りに感じられた方の感想を否定するわけではない。

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
記事が役立ったらクリック
スポンサーリンク

コメント