トレイン・ミッション_犯人の行動が出鱈目【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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陰謀
陰謀

(2018年 アメリカ)
序盤の引きこそ素晴らしいのですが、そもそもなぜこんな面倒くさい上に確実性の低い犯罪計画を実行に移しているんだろうかという犯人側の動機に納得感が薄い上に、最後の最後の大アクションで今までのサスペンスが完全に台無しになっており、ダメなサスペンスアクションの典型のような仕上がりとなっています。

©GAGA

あらすじ

元警官のマイケル・マコーリー(リーアム・ニーソン)は保険のセールスマンとして働いているが、ある日上司から解雇を宣告される。失意の中でマコーリーが帰宅の電車に乗ると、ジョアンナと名乗る謎の女性(ヴェラ・ファーミガ)から「この電車が終着駅に着くまでにある人物を探し出すことができれば10万ドルを渡す」との話を持ち掛けられた。最初は半信半疑だったマコーリーだが、実際に前金の2万5千ドルを発見したことや、殺すと予告された乗客が実際に殺されたことから、逃れられない状況へと追い込まれていく。

作品概要

リーアム・ニーソン主演×ジャウム・コレット=セラ監督

リーアム・ニーソンと言えばコンスタントにB級アクションに出演しつつ、その合間でスコセッシやコーエン兄弟の映画に出演するという特異なタイプの俳優となっていますが、『96時間』にリーアム・ニーソンを主演させてセガール扱いをしたリュック・ベッソンがアクション俳優ニーソンの生みの親だとすると、ジャウム・コレット=セラこそがその定着に一役買った育ての親だと言えます。

2011年の『アンノウン』を皮切りに『フライト・ゲーム』『ラン・オールナイト』と来て、よほど気が合うのか本作がコンビ4作目となります。

なお、ジャウム・コレット=セラ監督の映画は導入部が非常に素晴らしいものの、広げた大風呂敷を畳めずにアクションで有耶無耶にして終わるという特徴があります。

感想

序盤の引きの強さ

ジャウム・コレット=セラ監督作品の例に漏れず、序盤は素晴らしい出来。

リーアム・ニーソン扮する主人公マコーリーが日々出勤する様が映し出され、こうして家族の日常を支えてきた善良な男であるということが示されるのですが、国籍を問わず多くの人々に思い当たるような場面の切り取り方が実に良く、このイントロを見るだけで泣ける人もいるんじゃないのってほどの完成度なのです。

また、いつも通りに出勤して真面目に仕事をしていると「お前は給料に見合った仕事をしていない」として年下の上司からクビを言い渡され、古くからの友人に「家族にどう説明すればいいんだ」と相談する辺りのリアリティも素晴らしく、ニーソンとセラは非常に良い仕事をしています。

その後、ヴェラ・ファーミガ扮する謎の女から「人探しをしてくれたら10万ドルあげます」と実に怪しい話を持ち掛けられ、前金の2万5千ドルを隠してあるという車両内のトイレに行くと本当に大金を発見。

これから息子の学費がかかるというタイミングでリストラされた身にはオアシスのような金なので多少魔が差す瞬間がありつつも、積極的には話には乗れないという中で徐々に引き返せない状況へと追い込まれていきます。

まずは見知らぬ女に持ちかけられた話を疑い、本当に金があったという事実に驚き、いかにも怪しい金を受け取るかどうか迷うというプロセスをちゃんと入れているので、主人公の心の揺れに不自然な部分がないし、こんなことを依頼してくる女の目的とは一体何なんだという関心も惹きつけられました。

犯人の要求が無理筋すぎる

ただし、肝心の本編は序盤の期待値を維持できていませんでした。

顔と名前どころか性別も年代も分からない、バッグを持っているということと終着駅で降りるということの二つの情報しかない乗客を、降車駅に到着するまでに探し出せという犯人グループの要求がそもそも無理筋すぎます。「元警官だから人探しは得意でしょ」って、無理だってば。

また、いくら金で釣ったり家族をネタに脅したりしても、最終的に思い通りに動いてくれる保証のない部外者のマコーリーを使うという計画自体の不確実性も何とかならなかったんですかね。降車駅にスナイパーを配置するか爆弾を仕掛けるかして、ターゲットが電車を降りた瞬間に殺すという方法の方が確実だと思います。

犯人がなぜこんなにクソめんどくさい方法を選択したのかという点にまったく説得力がなく、頭に浮かんでくるのは疑問符ばかりなので映画に集中できませんでした。序盤の前振りが良くて期待値を上げられた分、あまりに考えの足らない本編にガッカリ感が増すのでした。

※ここからネタバレします

そもそも論を無視した後半の大スペクタクル

さらに、汚職絡みの殺人事件を揉み消すというそもそもの目的がありながら、証人の暗殺に失敗しそうだと見るや、列車を脱線させて乗客を皆殺しにしようとするという殺人事件の比ではない大犯罪を起こす犯人グループ。

目的に対して手段があまりにも整合しておらず、最後に一発大きなイベントが欲しかったという製作側の意図しか透けて見えないガッカリな見せ場に手に汗握ることはありませんでした。

また、この見せ場ではリーアム・ニーソンのスーパーマンぶりも悪い方向で作用しています。

暴走中の列車から乗客が乗っている最後尾車両のみを切り離すという無茶苦茶なアクションを披露するのですが、暴走側の車両で一生懸命連結を外す作業をしていたニーソンが、列車が脱線した瞬間に「とぉー!」と飛んで最後尾車両にビタンと張り付いて危機一髪助かったぜ!という、人間技を大きく逸脱したパフォーマンスはやりすぎでした。

さっきまでは犯人からの脅しにビクビクする地に足の着いた人物像だったのに、ここに来て何でもありのスーパーマンに変身しちゃうのかいと。

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