(2026年 アメリカ)
アイデアやヴィジュアルは良い、そこそこの俳優も揃えている。しかし脚本や演出の詰めが甘く、予告から抱いた期待はほぼ裏切られるという、いつものネトフリクォリティ映画だった。まぁまぁ金がかかっていそうな映画でこのクォリティを連打するのは、さすがにヤバイんじゃないの?

感想
本作のオリジナル脚本を書いたのは『ウソから始まる恋と仕事の成功術』(2009年)のマシュー・ロビンソン。
他に『モンスタートラック』(2016年)や『ラブ&モンスターズ』(2020年)を手掛けている人物で、まだまだ著名とは言えないが、トム・クルーズからは『オール・ユー・ニード・イズ・キル』続編の、ディズニーからは『スター・ウォーズ/ローグ・スコードロン』の脚本の発注を受けた実績があり、業界内での評価は高いようだ(どちらの企画も実現には至らなかったが・・・)。
監督を務めたのは『トランスポーター』シリーズや『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』(2023年)のルイ・レテリエ。
アクション畑の監督のようではあるが、MCU第2弾『インクレディブル・ハルク』(2009年)を手掛けた実績もあり、大規模なVFXを使うことには慣れた監督だ。
主演は韓国系俳優のグレタ・リー(『トロン:アレス』)と、ブラジル人俳優ヴァグネル・モウラ(『ナルコス』)で、多様性配慮もバッチリ。
広末涼子と木村多江を足して10で割ったようなグレタ・リーが、最近なぜ押されているのかはよく分からないが(少なくとも同じアジア人から見て魅力的ではない)、兎にも角にもアジア系×ラテン系のカップルは新鮮ではあった。
ある雨の日を境に、人々が屋内に閉じ込められて出られなくなるというのが、作品の概要。
水がバリアのような役割を果たし、窓もドアも破れなくなってしまったのだ。
ある日突然、平凡な一家が超常現象に見舞われるという骨子はM・ナイト・シャマランの映画のようだし、何が起きているのかの確認もできないまま建物から出られなくなった人々のドラマはフランク・ダラボン監督の『ミスト』(2007年)のようだった。
ただし発想力ではシャマランに及んでいないし、ドラマ構築力ではフランク・ダラボンに及んでいない。
過去作品を真似たうえで、より下手に再構成したような映画なので、シャマラン監督の諸作品や『ミスト』をご覧になっていない方には、まずそちらをご覧になっていただきたい。
主人公は、失業中のエンジニア ジェイソン(ヴァグネル・モウラ)と、その妻アン(グレタ・リー)。そして二人にはグレアムとルースという二人の子供がいる。
上述の通り家に閉じ込められた家族は、4人だけでのサバイバルを強いられる。
家には当面しのげそうな食料もあるし、ご近所さんもみんな同じ様子なので、切実感も薄い。
「じきどうにかなるだろう」という謎の安心感から、最初の数日は家族団らんを楽しむ余裕も見せる。
この辺りはコロナ禍のステイホームのようだった。製作時期的に、コロナ禍から着想を得た脚本なのかもしれない。
しかし、どうにかして外に出た知らない人が、謎の怪物に襲われる様子を窓越しに目撃した辺りから、どうやら自分たちはとんでもない脅威に直面しているという認識を持つに至る。
どこか牧歌的だったドラマは、この夜の出来事を境に緊迫感を増していくのだが、その表現方法として家族内での諍いを用いたことから、登場人物たちへの共感の度合いはぐっと下がった。
特にイライラさせられるのが子供たちの態度で、親への反発や命令不服従が目立つのだが、今が緊急事態の真っただ中であるという認識が著しく欠けた愚か者にしか見えなかった。
また妻アンもたまに理性的ではなくなったりする。
まぁこの状況でストレスを感じてるのは仕方ないとしても、やはり「緊急事態に揉めてる場合か」が先に来てしまうので、一気にそのキャラを嫌いになってしまう。
この辺りは、人間の機微を描くことを得意としてこなかったルイ・レテリエ監督の限界だったのかもしれない。
父ジェイソンは家の外にいる野生動物を捕獲するための罠を作ることで、母アンはリビングの床をぶち抜き、家の下にある土を使った家庭菜園を作ることで、長期的な食料供給体制を整える。
この辺りのサバイバル術は、見て「ほ~」っと唸らなければならなかったのだろうけど、どうにも見せ方がうまくなくて、「そんなにうまくいくわけないだろ」という穿った目が先に来てしまった。
だいたい、あんな狭い家庭菜園で、一家四人が365日食べられるほどの野菜を生み出し続けられるわけがない。
良くも悪くも大味な演出が売りだったルイ・レテリエ監督に扱いきれる題材ではなかったのだろう。
それまで「1日後」「2日後」「1週間後」と刻んできたストーリーは、一気に「5年後」へと飛んでいく。この大胆な端折り方は好き。
5年後、子供たちはちゃんと大きくなっているが、相変わらず生産活動は親任せで、文句を言う以外に能がない辺りは幼少期から変わっていない。
教育がなければ人間は育たないんですよという、高度な文明考でもあったのだろうか?
子供二人に奥さんも含めた3人は、うまくいかなければ父に当たり散らすのだが、この絶望的な状況下では父にだって自分が持っている以上の情報や知見がないことは明らかなのに、彼らは一体何を期待してるんだか。
兎にも角にもしんどさの増したドラマは、前半以上に見てらんなかった。
ロクに家事も手伝わず、相変わらず絵ばっかり描いている娘ルース。
5年間も絵ばっかり描いてたら白い紙もなくなるだろうに、その紙は一体どこから湧いて出てきてるんだというツッコミはしちゃいけないらしい。
ある日、父の罠にかかったイタチがあまりに可愛かったものだから逃がしてあげようとしたところ、噛まれて細菌に感染してしまう。
家の中という変化のない環境にずっと居たためか、この家族の免疫力は極端に弱っているらしい。こんな些細なことでも死ぬんじゃないかってダメージを受けるルース。相変わらず足を引っ張ることしかやらない。
私は、バカなキャラクターがバカなことをしでかすことで進んでいく話というものが苦手なんだが、本作はまさにそのパターンなので見ていて本当にしんどかった。
ご近所の歯科医師の家にはきっと抗生剤があるはずなので、それを取りに行こうということになる一家。
ここから外のモンスターに見つかってしまい、家の中での大乱闘というクライマックスへとつながっていく。
これまで借りてきた猫状態だったルイ・レテリエ監督の本領発揮かと思いきや、一家がどういう戦略でモンスターから逃れようとしているのかという情報が未整理な上に、空間演出がへたくそで一家の位置関係もよく分からず、何が起こってるのかさっぱり理解できなかった。
『ザ・デプス』(1989年)や『リバイアサン』(1989年)並みの下手さ加減と言えば、日曜洋画劇場世代にはお分かりいただけるだろうか?
とにかく肝心の見せ場もダメで、全然良いとこなしの映画だった。
慈悲と融和の姿勢を見せることで一家に生き延びる道が与えられるという結末も、作り手側が意図したほど感動的にはなっていない。
なんかハッピーエンドっぽく終わってたけど、陸地がほぼ失われ、他にどれだけ人類が生き残っているかも定かではない地球で、今後何十年も生きなきゃいけないって、まぁまぁ地獄だと思うよ。


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