(2026年 スペイン)
よくあるネトフリ製サスペンス映画だが、これがなかなか面白かった。意表を突く展開に、見ていられる人間ドラマ。話が分かりづらいのが玉に瑕だが、巻き戻しながら見れば何とかなる。

感想
Netflixで配信されていたのを何気なく鑑賞したら面白かった。
ただし鑑賞後に調べてみると世界的には不評な映画のようなのは意外だった。
港のコンテナで、身元不明女性が発見される。激しい拷問のショックで記憶を失った女性の捜査は、やがて人身売買組織の摘発へとつながっていくというのが、ざっくりとしたあらすじ。
不評の理由は、その分かりづらさにあるようだ。
そう言われると、語り口はスムーズではなかったかな。
冒頭、金髪の女性が警察の内部調査らしきヒアリングを受けている。
売春婦らしきその女性は警察の情報屋をしており、担当刑事の不正に加担させられたとの証言をしている。
視聴者の大半は、この女性こそが「謎の女」なのだろうと思うところだが、彼女はこの冒頭にしか出てこない。
「謎の女」とは彼女の妹クララのこと。
姉はこの証言後に行方不明になったらしく、失踪した姉を追っているうちクララは拷問に遭って記憶を失ってしまったんだけど、人物相関図は直観的に分かりづらかった。
そしてクララの保護と、彼女が受けた暴行事件の捜査にあたるのは、バルセロナ警察のアナ・リポルと、アルヘシラス警察のキケ・サラテ。
アナ刑事は精神疾患でしばらく休職をしており、復帰最初の仕事がこの案件なんだけど、では何があって精神疾患になったのかという説明は、クライマックスまでひっぱられ続けられる。
ただしその内容を知ったところで、本筋に関係もなければ、観客に対して隠しておく必要のあるものでもなく、なぜこの程度の情報を最後までとっておいたのだろうかと不思議に思うほどだった。
この通り、本作は情報の整理があまりうまくいっていない。
主人公が記憶喪失の上に、その背後には込み入った陰謀があったのだから、情報量は通常のサスペンス映画よりも多い。情報の交通整理はしっかりしてほしかったかな
またスペイン系の登場人物たちの名前を覚えづらく、日本人からすると男女の区別もできないという点も、地味に鑑賞の妨げになっている。
と、ここまで文句ばかり書いてしまったが、冒頭でも述べた通り、私はこの映画をかなり楽しめた。
それは登場人物が魅力的だったからだ。
例えばサラテ刑事。
冒頭でクララの姉から不正の指南役として名指しされていた人物なんだけど、実は訳あっての偽証であり、当人はいい奴。
彼は己の潔白を晴らすためクララの件に関わることとなる。
最初の印象が悪かった分、彼がクララのために全力を尽くす様子には熱いものがあった。
またアナ刑事にしても、平凡な見た目のキレモノという『ファーゴ』(1996年)のフランシス・マクドーマンドのような役柄を見事ものにしており、クララを含めた主人公3人のドラマには見ごたえがあった(だからこそ、アナ刑事の背景は早めにオープンにしてほしかったが・・・)
加えて、組織がクララを拷問こそしたけど殺さなかった理由などが論理的に整理されていたし(暗号通貨のパスワードを書き換えた彼女を殺すことができなかったのだ)、陰謀の正体を知ったところでガッカリさせられなかったことも満足度につながっている。
サスペンスとしては良作と言えるのではないだろうか。
分かりづらい部分は、巻き戻しながら見ればなんとかなる。
これが配信作品の良いところだ。


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