ザ・ランナー_1時間走っても疲れないワンダーウーマン【3点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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陰謀
陰謀

(2026年 イギリス)
息子を人質に取られた主人公が、時間内にある地点を目指すというシンプルなワンシチュエーションスリラーだが、どうすればこんなに面白くなくできるのかというほど面白くなかった。犯人の定めるルールが曖昧だし、主人公の疲労も描かれないのでランナーという素材が全然生きていない。

感想

『ワンダーウーマン』のガル・ガドット主演、『ラストキング・オブ・スコットランド』のケヴィン・マクドナルド監督の新作がいきなり配信スルーだったので、劇場公開しようとしたができない事情でもあったのだろうと思っていたら、シンプルにひどすぎる出来だった。

弁護士の主人公が息子を人質に取られ、当日の裁判の証人を殺せと迫られる。

『ニック・オブ・タイム』や『24シーズン1』など、主人公が何かをしろと脅迫されるプロットはスリラーの王道であり、そこに新奇性はない。

だとすると「使い古された素材をどう味付けするか」がキモの企画だったわけだが、本作においては「主人公が現場までひたすら疾走する」という捻りが加えられている。これがタイトルの由来。

朝、子供を学校に送り出した主人公マイア(ガル・ガドット)は、日課のランニングに出かける。

重要な裁判を控えた当日にのびのびとランニングに出かけるもんかねと思うが、とりあえずそういうことだ。

ランニングの最中に「番号不明」の着信があり、声の主いわく、息子を預かっているとのこと。

彼女の周囲の状況を素早く言い当てるので、これはイタズラではなくガチのやつだ。

息子を救いたければ、今日の裁判で証言予定の証人を殺せ。

ただし証人が匿われているホテルへは交通機関を使わず、現在地から走って迎えと言われる。

ここから主人公の疾走が始まるのだが、「交通機関を使うな」という指示の意図がよく分からないので、映画は初っ端から躓く。

犯人はスマホで主人公を追跡しており、電波が途切れる手段を取ってほしくなかったのかもしれないが、だったら地上での移動手段に限るというルールでもよかったんじゃないのか。

この辺りの「犯人からの縛り」「ゲームのルール」が曖昧なので、主人公がそれをどう欺き、逃れ、反撃するのかという知的ゲームがまったく盛り上がらない。

道中、主人公はスマホを盗まれるトラブルに見舞われる。

連絡が途絶えたことをルール違反と捉えた犯人が人質を殺すかもしれない切実なシチュエーションなのだが、本作の犯人は怒りもしなければ、ペナルティを加えたりもしない。

またルールを破って地下鉄に乗っても、それがバレるかどうかのサスペンスが盛り上がらないし、バレたところでペナルティは与えられない。

一事が万事、こんな調子なのだ。

犯人はプロの掃除人であり、主人公に対しては特に何の感情も抱いていないらしい。

なので「頑張れ頑張れ」と励ます場面まであって、あるいは犯人と被害者の奇妙な連帯、捻じれた共犯関係が脚本上では意図されていたのかもしれないが、完成した作品を見る限りは、そのあたりのケミストリーも発生していない。

そして犯人いわく、証人は悪党なので、殺すことが社会のためにもなるだろう。

「息子を守るためなら他人を犠牲にしてもいいのか」という正義にまつわる問いかけも、本作のテーマの一つだったのかもしれない。

主人公の実母が実父を殺して服役していたという、メインプロットとはおおよそ無関係な設定が置かれていることからも、そうしたモラルを問う意図はあったと思うのだが、では主人公が良心の呵責に苛まれるのかというと、そんなことは全然ない。

子を思う母が無我夢中でロンドンを疾走するだけのドラマに終始しているのだ。

それはそれでいいと思うのだが、だったら余計なサブプロットは省けよと。

何か意味があるのかなと思って見ちゃうじゃない。

あとアクション映画的に言えば、走っている主人公をただただ映し出しているだけで、画の変化がないことも辛かった。

近年の『ミッション:インポッシブル』シリーズでは、トム・クルーズの疾走が見せ場の一つとなっている。

それに着想を受けた企画だったのかもしれないし、確かにガル・ガドットの走るフォームは美しいのだけれど、それだけで映画を一本成り立たせるのは無茶だったかな。

加えて、長距離を走る中で主人公が疲労し足が重くなる、息が上がるといった変化も表現されていないので、展開にメリハリがない。

一応、主人公には元アスリートという設定が置かれている。

だが平坦な公園ではなく障害物も多い街中を1時間近くも走っていれば、さすがに疲労はするだろう。

シンプルな素材だからこそ、そうした細かい描写を落としてはいけなかったと思う。

残り時間がデカデカと表示される割に、制限時間に間に合わないかもしれないというタイムリミットサスペンスとしての盛り上がりにも欠けているし。

あと、主人公がその日たまたま校門まで子供を見送らなかったおかげで誘拐が成立したという偶然性に頼りきった犯人側の計画もどうかと思った。

親子二人がたまたま寝落ちしていた、たまたま誰とも会話していなかった、たまたま誰よりも早く座席に座っていて他の客に見られていなかったという、偶然性に頼り切った犯罪計画がカックンだった『フライト・プラン』(2006年)並みのルーズさである。

主人公が知らない番号からの着信には出ないタイプだったらどうするつもりだったんだろう。

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