(2021年 アメリカ)
すごく金がかかっていてビジュアル的には見どころが多いのですが、肝心のお話が全然進んでいかないので退屈させられました。かと思えば最終話で突然話が進むし。また、感情移入可能な人物が少なかったことも、作品の魅力のなさにつながっています。
本作はジョーダン・ロバーツ著の長編ファンタジー小説シリーズ『時の車輪』を原作としています。
ロバーツは1948年サウス・カロライナ州出身で、1968-1970年までベトナム戦争に従軍した後に海軍の核兵器技術者となり、1980年代より作家業を開始したという変わった人物。
4年がかりの執筆作業を経て1990年に出版した『時の車輪』の第一部がベストセラーとなり、第11部までを執筆。
次の第12部で終了する予定だったのですが、2007年9月にロバーツが逝去したことから、ファンタジー小説家ブランドン・サンダースに引き継がれました。
最終章は3巻に分割され、2013年1月発行の『A Memory of Loght』で完結。
2017年4月にソニー・ピクチャーズ・テレビジョンが映像化を発表し、『エージェント・オブ・シールド』レイフ・ジャドキンスがショウランナー(ドラマ制作を統括する責任者)として雇われました。
2018年10月にアマゾン・スタジオも製作に参加することが発表され、2021年11月よりシーズン1がAmazonプライムにて配信開始。
なお、シーズン2の撮影は2021年7月からすでに開始されています。
アマゾンスタジオ史上最大レベルで製作された作品だけあって、ビジュアルは圧巻でした。
スロベニアロケを敢行した大自然の撮影は美しく、オープンセットの完成度も破格のレベル。そこに中世の寒村が広がっているような感覚を抱かされます。
また第2話で登場する廃墟シャダー・ロゴスや、後半の舞台となる都市タール・ヴァロンなどの巨大建造物のデザインやVFXも素晴らしく、実に見ごたえがありました。
さらに、主人公一行に襲い掛かってくる獣人トロロークの造形や特殊メイクのレベルは群を抜いており、個人的には『ロード・オブ・ザ・リング』のオークやウルク・ハイをも上回っていたと思います。
一方、お話の方はイマイチでした。
竜王という将棋の名人のような存在を探しているモイレイン(ロザムンド・パイク)が、誕生日や地域から竜王の可能性のある若者4人を連れ帰り、闇との戦いに備えるというのが本作のストーリー。
基本的には移動だけだし、パーティーはいったんばらけて、またくっついて、そしてまた旅に出るだけ。
中盤にて白い塔に到着したことから、そこでいったん旅は終わり、政治劇や戦争に向けた流れが始まるかなと思いきや、またすぐに旅に出発してしまうし。
そんな感じで第7話までは話が全然進んでいかないのですが、かと思えば最終第8話で唐突に闇王との対決が始まるわ、戦争が始まるわで、いきなりの進展があるので、これはこれで急すぎ。
もうちょっとバランス良くやれなかったんでしょうか。
また感情移入可能なキャラクターが少なかったこともマイナスだったのですが、特に酷かったのはナイニーブですね。
彼女は田舎街の若い賢者であり、当初は竜王候補ではなかったのですが、途中でアジャ達も驚くほどの潜在能力を発揮して、以降は大注目の人物となります。
千年に一人クラスのすごい能力だの、この世界のトップであるシウアンを越えているかもしれないだのと持ち上げられるうちに調子に乗ってきたのか、誰に何を言われようが喧嘩腰でぶつかっていく嫌な奴になったので、見ていてすごく不快でした。
特にモイレインに対しては常に食って掛かっていくのですが、彼女が本当に正しいかどうかはともかく、私利私欲で動いているのではなく、世界を憂いて行動を起こしている人物であることは明らかなのに、そんなモイレインにいちいち喧嘩腰というのは良くありませんね。
シーズン終盤ではロマンスのおかげでちょっとは丸くなりましたが、依然として嫌な性格であることには変わりありません。
本作製作陣には、彼女の性格改造を急いでほしいところです。