(2018年 アメリカ)
そもそも面白かったシーズン1に輪をかけて面白くなっていました。何がいいかって、ウェンディ、ダーリーン、ヘレン、ルースら強力な女性キャラが織りなすパワーゲームが強烈なんですよ。圧倒されました。
ダーリーン・スネルがナバロ・カルテルのNo.2 デル・リオを殺してしまったという、前シーズンラストの壮絶なクリフハンガーの続き。
一応、デルの失踪を匂わせる偽装工作はしたが、組織から送り込まれたのが異常に頭のキレる弁護士ヘレン・ピアスなので、早晩、嘘はバレてしまう。
またFBI捜査官ロイ・ペティの執拗な捜査も続いており、「ブルーキャット」オーナーとしてマーティとの関わり合いが深いレイチェルも抱き込まれてしまい、こちらももうすぐ王手。
さらにはルースの父ケイド・ラングモアが仮釈放で娑婆に出てきて、マーティが管理する金が狙われる。
こうした全包囲下でのマーティの戦いは緊張感MAXで、第1話から第10話まで緊張の糸が途切れることはありませんでした。
そもそも面白かった前シーズンよりも、さらに面白くなっています。
そんな中でも最大の課題は新規カジノ建設なのですが、そこで辣腕を振るうのが妻ウェンディ。前シーズンでは夫マーティンに振り回されていた彼女が、ここで覚醒します。
カジノ建設のためには法案を通さねばならないということで、マーティとウェンディはミズーリ州議会に顔が利くチャールズ・ウィルクスに接触。
バラク・オバマの選挙スタッフを務めた経験も持つウェンディのスキルは、ミズーリのような田舎では突出したものとなり、ウィルクスからの信頼を得て彼女は関係各方面へのアプローチを開始します。
ここでウェンディはやりがいを見出すわけです。
加えて、犯罪行為への抵抗感も少なくなっていきます。
その大きな分水嶺となったのが、メイソン牧師に誘拐された第7話。
奥さんを殺されるわ、赤ん坊は行政に取られるわで怒り心頭のメイソンが、その元凶であるウェンディを拉致。これを受けたマーティは事態打破に向けて動くものの、結局はメイソンを射殺せざるを得なくなります。
これまでもいろんな死はあったものの、この夫婦が直接手を下した殺人は初めてのことで、マーティは激しく動揺。
そのショックはかなり根深いもので、時期を同じくして起こった長女シャーロットの独立問題でも「こんな家庭では嫌になるのも仕方ない」と同情的な立場を取り、最終的にはこの汚れ仕事からは逃げるしかないという判断に至ります。
それとは対照的だったのがウェンディで、自分自身でも意外なほど目の前の殺人に対する抵抗感がなく、アッサリと感情を処理できてしまいます。
そんなものだからシャーロットの独立問題でも「娘は何でこの程度のことでギャーギャー言ってんだか」という態度となり、今の仕事はこのまま続けたいという判断に至ります。
そして殺人への心理的ハードルが低くなったためか、カルテルという後ろ盾を使うことにも躊躇をしなくなります。
邪魔者だったケイド・ラングモアの排除を組織に要請し、無事殺しが完了したという報告も、特に取り乱すことなく受け取ります。
ここで彼女のメンタルが完全に犯罪組織寄りとなったというわけです。
ウェンディが仕上がっていく様にはゾクゾクとさせられましたね。
そんなウェンディと並んで注目なのが、ダーリーン・スネル。
オザークのヘロイン製造者ジェイコブ・スネルの妻で、前シーズンより感情的で狂暴な面を覗かせていたのですが、いよいよ当シーズンより本領を発揮し始めます。
感情的、無礼、無駄にプライドが高い、状況を考えずに暴走と、負の感情の塊のような人物であり、何かにつけて嫌味や文句を言わなきゃ気が済まない初老。
頑固だがまだ話の分かる夫ジェイコブが何とか押さえ込んできたものの、ジェイコブが一時的にFBIに拘束された辺りから、暴走が止まらなくなってきます。
このままジェイコブが起訴されれば全員巻き添えというわけで、マーティ、ウェンディ、ヘレン、ダーリーンが集まって作戦を話し合うのですが、ダーリーンは賢い人達の言ってることが全然理解できません。
で、分からない中で他の人からあれこれ聞かれるものだから、自分が責められたと思ってキレて出ていくダーリーン。
あなたの夫を救い出すための話し合いなのに、それすら自分自身の快・不快で判断して出ていくんだと、その馬鹿さ加減には呆気にとられました。
その後も、ナバロ・カルテルに卸しているヘロインに混ぜ物をして死人を出し、当局に捕まるリスクを高める、カジノ建設に当たってスネル家が折れるしかない部分で頑固を発揮するなど、恐らくはダーリーン自身も何をしたいのか、どこが落としどころなのかも考えないまま、ただただ場を引っ掻き回す選択ばかりをし続けます。
その根底にあるのは自意識の高さであり、力で勝るナバロ・カルテル、頭脳で勝るマーティやウェンディからの指図を受けたくないというひねくれた根性なのだろうと思うのですが、我が身を滅ぼすかもしれない問題でもごねる辺りが、この人の真骨頂。
馬鹿である上に、狂っているのです。
こういう狂っているキャラクターがいると、ドラマは本当に盛り上がりますね。見ている間はムカついて仕方なかったのですが、全部見終わると「ダーリーンのおかげで面白かったなぁ」と満足できました。
クライマックスは恒例のクリフハンガーで、シーズン3をすぐにでも見たくなります。
オザークへようこそ シリーズ
オザークへようこそ(シーズン1)_知的で面白い【7点/10点満点中】
オザークへようこそ(シーズン2)_女たちが熱い【8点/10点満点中】
オザークへようこそ(シーズン3)_夫婦の不信感【8点/10点満点中】
オザークへようこそ(シーズン4 パート1)_面白さパワーアップ【8点/10点満点中】
オザークへようこそ(シーズン4 パート2)_ルースが阿呆すぎる【6点/10点満点中】