オザークへようこそ(シーズン3)_夫婦の不信感【8点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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クライムサスペンス
クライムサスペンス

(2020年 アメリカ)
相変わらず面白いクライムドラマ。物語のスケールはどんどん大きくなっているものの、核にあるのはホームドラマというバランス感覚は維持されており、新キャラ達も個性豊かで、今回も十分に楽しませていただきました。

登場人物

バード家

  • マーティ・バード:ナバロ・カルテルの資金洗浄を行っている会計士。その目的達成のためにミズーリ・ベル・カジノをオープンさせたが、ビジネスの拡張を目指す妻ウェンディの方針には反対しており、彼女が進める競合カジノ買収の妨害工作を行う。
  • ウェンディ・バード:マーティの妻。ミズーリ・ベル・カジノオープンに続き、赤字経営の競合カジノ買収を計画。こちらは完全な合法ビジネスにするつもりであり、ボスであるオマール・ナバロからの信任も得て、買収に着手する。
  • シャーロット・バード:マーティとウェンディの娘で、ジョナの姉。家族に逆らった前シーズンからは一転、両親のビジネスの手伝いをしている。
  • ジョナ・バード:マーティとウェンディの息子で、シャーロットの弟。ドローン操縦にハマっており、転がり込んできた叔父のベンと仲良くなる。オザークにやってきたヘレン・ピアスの娘エリンが気になる様子。
  • ベン・デイヴィス:ウェンディの弟で、双極性障害を患っている、高校で数学の臨時教員をしていたが、学生たちのネットいじめに過激な方法で対処した結果、無職になってバード家を頼ってきた。ルースに夢中になる。

ラングモア家

  • ルース・ラングモア:マーティが開業したミズーリ・ベル・カジノの管理を任されているが、コネ採用のフランク・コズグローブ・ジュニアの振る舞いに悩まされている。
  • ワイアット・ラングモア:ルースのいとこで、スリーの兄。父ラスの死にルースが関わっていたことを知って彼女からの支援を拒み、住居侵入罪を犯して逮捕された。保安官事務所で収監中のところに偶然居合わせたダーリーン・スネルに保釈金を支払ってもらい、以降はダーリーンの農場で住み込みの手伝いをしている。
  • スリー・ラングモア:ワイアットの弟。兄とは違って父の死の真相は知らない。

オザーク周辺の人々

  • ダーリーン・スネル:前シーズンで念願の養子ジークを迎え入れて子育てをしているが、ママ・サークルでは異常に浮いている。ジークやワイアットを迎え入れたことからスネル家の”家業”に再度注力することにし、ケシの栽培を再開する。
  • フランク・コズグローブ:カンザスシティ・マフィアのボス。前シーズンではマーティに裏切られた形になったが、多額の金と引き換えに手打ちにした様子。マーティとの関係は持ち直し、彼からの汚れ仕事の依頼を引き受けている。
  • フランク・コズグローブ・ジュニア:コズグローブのバカ息子で、ミズーリ・ベル・カジノにコネ採用されている。マーティが口出しできないことに付け込み、いらん仕事ばかりしている。
  • トニー:コズグローブ・ジュニア配下のチンピラ。コズグローブが請け負ったベル・カジノへの配送業務で、トラック運転手を務めている。エリン・ピアスに接近する。
  • サム・ダーモディ:シーズン1でウェンディが勤めていた不動産屋のオーナーだったが、母の死をきっかけに不動産業は畳んでいる。多額の遺産を持っているところをマーティに目を付けられ、マヤ・ミラー捜査官の目を誤魔化すためにベル・カジノで大負けするよう依頼される。
  • スー・シェルビー:バード夫妻のセラピストだが、マーティから賄賂を受け取り、夫婦の意見が合わない問題では彼に有利なカウンセリングをしている。
  • ジョン・ニックス:オザークの保安官。地元の名士となったバード家のスピード違反などは見逃すようになっている。

ナバロ・カルテル関係者

  • オマール・ナバロ:ナバロ・カルテルのボス。競合カルテルとの抗争では劣勢だが、そんな時に受けたウェンディからの合法ビジネスの提案には乗り気であり、彼女に指示して競合カジノ買収を進めさせる。
  • ホルヘ・メンドーサ:ナバロの刺客。一見すると坊主頭の小男に過ぎないが、かなり凶暴。
  • ヘレン・ピアス:ナバロ・カルテルの弁護士で、二児の母。一時的にオザークに住居を構えて、ウェンディの競合カジノ買収の手伝いをする。
  • エリン・ピアス:ヘレンの10代の娘で、ヘレンに連れられてオザークにやってきた。母のビジネスは知らない。シャーロットと親しくなる。

捜査関係者

  • マヤ・ミラー:ベル・カジノの監査にやってきたFBI捜査官。妊娠中で金魚を連れている変わった人物だが、捜査官としてはキレ者という『ファーゴ』のマージ捜査官からの影響が物凄いキャラクター。マーティの手口に感心して、彼にFBIの仕事をオファーする。
  • トレバー・エヴァンス:FBI捜査官。前シーズンで殺されたペティ捜査官の恋人であり、その復讐のためマーティ逮捕に執念を燃やしている。

感想

夫婦の不信感がテーマ

クライムサスペンスを基調としつつも、核にあるのはホームドラマということで異彩を放つ本シリーズですが、シーズン3では夫婦の不信感がテーマとなります。

シーズン2後半より、ビジネスに悲観的となって出口戦略を探り始めた夫マーティと、政界でのネゴシエーションに手ごたえを感じて、どんどん積極的になるウェンディの温度差が表れ始めたのですが、本シーズンにてそれが大問題となります。

ウェンディは競合カジノが赤字であることに目を付けて、資金洗浄目的のベル・カジノとは別の完全合法ビジネスを営もうと画策。そのプロジェクトをナバロ・カルテルのボス オマール・ナバロに提案します。

一方マーティは、カルテルと関わっている限りロクなことはないと思っているので、そんな余計なことはされたくない。

この夫婦間の方向性の違いを巡るやりとりが本シーズンの見所となっているのですが、気の良さそうな初老のカウンセラー スー・シェルビーを間に挟んでのバトルが、徹頭徹尾シリアスなこのシリーズでは珍しくコミカルに描かれています。

マーティはスーに賄賂を渡して自分の味方に付くように誘導するのだが、スーはスーで「あなた達夫婦を見ていること自体が面白くなってきた」と言って、次第に余計なことも言い始める。

ここでスーが認識しているのは些細で一般的な夫婦間の諍いなのだが、マーティとウェンディが揉めてているのは巨大麻薬組織が絡み、失敗すれば人が死ぬこともある問題へのアプローチ方法であり、その落差がなかなかコミカルなのです。

また、マーティとウェンディの諍いは、当初はビジネスの方向性の違いだったはずが、そのうち夫婦間での意地の張り合い、マウントの取り合いに発展していくという辺りも、さもありなん。

ノリに乗っているウェンディに対して、マーティは姑息な工作を仕掛けて破談させようとする。

夫婦のイヤ~なものを見ちゃった気がしましたね。

ちゃんと薬を飲め!ベン

そんなバード家のホームドラマに新しく参加するのが、ウェンディの弟のベン。

思い起こせばシーズン1、動物の死体を解体するなど異常行動を連発していた息子ジョナにドン引きしたウェンディが、「彼もベンみたいにならなきゃいいけど」と言っていましたが、そのベンが満を持して登場いたしましたよ。

ただし、シーズン前半では滅茶苦茶いい人。

冗談が分かるし、何かあれば迅速に動くし、勘も良い。ジョナの良き話し相手となり、ルースとは相思相愛となります。

ただし彼は双極性障害を薬の服用で押さえ込んでおり、ルースと良い感じになった時に薬の副作用で勃たなかったものだから、その服用をやめてしまいます。

それからどんどんおかしくなっていってビジネスを危険にさらし、最終的には制御不能になって、マーティとウェンディは彼を始末せざるを得なくなるのですが、見ている間中私が思ったのは、「早く薬を飲め!」ということでした。

クスリさえ飲めば前半の気の良いあんちゃんに戻れるのに、なぜそうしなかったんでしょうね。

そこの違和感があったので、ドラマチックなはずの最終2話にも、あまりのめり込めませんでした。

ストレス源の人々

で、主人公に対して妨害や嫌がらせをしてくる敵の存在は、この手のドラマのお決まりですが、本シーズンでもそうした嫌な奴らが出てきますよ。

まずはフランク・コズグローブ・ジュニア。

前シーズンでバディが間を取り持ってくれたカンザスシティ・マフィアのドンであるフランク・コズグローブの息子で、いろいろあってマーティが経営するベル・カジノで引き取られています。

こいつが馬鹿で横柄で姑息。まぁ要らんことばかりしてくるので、イライラが止まりません。

新設カジノの箔付けのためにマーティがポーカー大会を開催すると、他のプレーヤーに絡んだり脅したりして、変な空気にしてしまいます。

カジノを管理するルースにも容赦なく絡んでいくのですが、反撃を喰らうとお父ちゃんに泣きついていくという小物ぶりも披露。

かと思えば、一人でいるルースをボコボコに殴って病院送りにするという、男として最低な実力行使にも打って出ます。

とにかく酷い!品性下劣!なのですが、最終話で相応の報いを受けることになるので胸のつかえはとれましたが。

次はFBI捜査官トレヴァー・エバンス。

前シーズンにて、ほぼ自業自得で殺されたロイ・ペティ捜査官の元恋人で、その復讐のためにオザークへ戻って来たのですが、大した根拠もないのにマーティに圧力をかけようとして失敗。

するとペティ仕込みの「一般人の弱みに付け込み、自分のスパイとして動かす」という悪質な手法に打って出て、こちらもいろいろと場を搔き乱してくれます。

対照的なのがもう一人のFBI捜査官マヤ・ミラー。

彼女もストレスフルではあるのですが、エバンスと違うのが滅茶苦茶に優秀で、正攻法でマーティを追い込んでいくということ。

何でもお見通しの彼女が、いつ証拠を掴むのかというサスペンスも、マーティ目線の本作ではストレスになっています。

老婆女子ダーリーン

一方、シーズン2で悪鬼の如く暴れまわったダーリーン・スネルは、本シーズンでは落ち着いてきます。

きっかけは念願の養子ジークを迎えられたこと。マーティ&ウェンディが手を回してほぼ不正とも言える形で手に入れた赤ちゃんではあるのですが、ダーリーンはジークを溺愛。

傍からはどう見ても孫なので、そういうことにしておけば世間体も良くなるだろうとは思うのですが、一本気なダーリーンはあくまで息子という体裁を貫き、ママ・サークルにも参加します。

その愛し方が本当に正しいのかどうかの疑問はあるものの、ともかく守るべきものを持ったことでダーリーンの行動にもかなり抑制が効くようになっており、シーズン1~2にかけてのような無謀な騒ぎは起こさなくなっています。

さらに、ワイアット・ラングモアとの恋愛でダーリーンは乙女に変わります。

10代の青年と老婆の恋愛という海外ドラマ史上でも類を見ない光景が繰り広げられるですが、二人は至って真剣。

で、ダーリーンは夫ジェイコブを亡くした喪失感を、ワイアットはラングモア家への不信感を、この恋愛で埋めていき、まぁそれなりの平穏が訪れるのだから、恋とは魔法なのです。

こうして落ち着いたダーリーンに、従来からあるタフな交渉力が加わるので、本シーズンで彼女は頼れるゴッド姉ちゃんに。その安定感は異常でしたね。良いキャラクターになりました。

オマール・ナバロが意外とちゃんとした人

で、当シーズンでいよいよ登場するのがナバロ・カルテルのボス オマール・ナバロ。

シーズン1第1話よりマーティがビビりまくってきた相手であり、彼の指揮でデルやヘレンといったツワモノ達も動いており、まさに恐怖の総本山と言える存在が、ついに表舞台に現れたわけです。

理不尽な殺人を繰り返して来たカルテルのボスなので、それはそれはとんでもない男かと思いきや、意外とマトモだったのでやや拍子抜けもしましたが。

カジノ買収を提案するウェンディは「プレゼンをミスったら殺される」くらいの覚悟をしてナバロの前に出ていくのですが、当人はまともに話を聞いてくれるし、無駄に脅しをかけたりもしてこない。

そのうちウェンディとナバロは頻繁に連絡を取り合う仲になって、ウェンディはナバロ相手に駆け引きも始めるのですが、やはりナバロはキレない。

そして、夫婦関係のもつれからウェンディの通話を盗聴していたマーティはナバロの逆鱗に触れて拉致されるのですが、こちらも殺されるわけでもない。

逆ギレしたマーティが死ぬ気でいろいろ喚くと、「いいねぇ、お前」と言って帰されるわけですから、随分と気の長い親分だなと思います。

これはこれで面白いキャラだとは思うのですが、彼が出てきたことでカルテルへの絶対的な恐怖心は薄れましたね。シーズン1のデルの方が強敵に感じられたし。

『ナルコス』のパブロ・エスコバルみたいな、圧倒的な策士である上に、精神状態もヤバくていつ人を殺すかもわからない狂人の方が良かったんですが。

怒涛過ぎる最終話 ※ネタバレあり

毎度毎度このシリーズのシーズン最終話には怒涛の展開を迎えるのですが、本シーズンは従来に輪をかけて怒涛でしたね。呆気にとられました。

決裂したヘレンは、マーティ&ウェンディをナバロに処刑させようと罠を張るが、そんな魂胆などナバロにはお見通しで、逆に処刑される。

ルースへの暴行の事実を知ったダーリーンはコズグローブ・ジュニアの元へ押しかけ、それまで誰も手を出せなかったジュニアのジュニアをショットガンで吹っ飛ばします。

いや~、どちらもスカッとしましたね。

ただし、これだけの血が流れた後には一体何が起こるんだろうという今後の展開への不安も高まるのですが。

相変わらず素晴らしいシーズンの幕引きで、最終となるシーズン4への期待も俄然高まるのでした。

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