機動戦士ガンダム THE ORIGIN(OVA)【8点/10点満点中_出来が良くて面白い】(ネタバレあり感想)

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8点/10点満点中

ガンダムは昔から好きで、アニメシリーズの新作が出ればとりあえず視聴はするしガンプラも作るのですが、何度も何度も繰り返し見るほど思い入れがあるわけではないという程度のファンです。また、ファーストはギクシャクする絵が見ていてしんどいので、大好きなのは作画のクォリティが向上し、複雑な物語に見応えがあった『Ζ』だったりもします。

■困難な企画を見事やりきった良作

『機動戦士ガンダム』を名乗りながらもガンダムは出てこない、それどころかⅠ~Ⅲの年代にはモビルスーツ全般が研究開発段階でMS戦すら描けないという致命的なハンデを持ったシリーズながら、ファーストの人気キャラ達を深掘りすることでちゃんとガンダムになっていたという点はさすがでした。

またファーストほどの神格化された作品の場合、ファンの頭の中にはそれぞれのキャラクターのあるべき像みたいなものが存在しているので意外な過去を描きすぎると反発を受ける、しかし過去作品と同じ過ぎても作る意味がないと叩かれるという難易度の企画にあって、ファンを裏切らない範囲内でキャラクターを遊ばせていた点も見事でした。

■各話レビュー

Ⅰ.青い瞳のキャスバル(7点/10点満点中)

ジオン・ズム・ダイクン暗殺から、その遺児であるキャスバルとアルテイシアがサイド3を脱出するまでが描かれます。

キャスバルが少年期より常人離れしていたこと、ザビ家とラル家の権力闘争、ザビ家内部でもそれぞれの思惑が違うことなど、重厚な大河ドラマとして作られていた点は好印象でした。
ザビ家が4兄弟だったという驚きの新設定も単なるサプライズに留まらずきちんとドラマに活かせていたし、後に神格化されて国名にまでされたジオン・ズム・ダイクンが演説前にド緊張する人間的な人物であったという意外性も良い方向で作用しており、ファンが見たいと思っていた全日譚はまさにこれという仕上がりとなっていました。

ただし、真面目にやると深刻になりすぎる内容であるためか、コミカルな描写が多く入れられていたことは作品の風格をやや落としているように感じました。
アニメや漫画でよくあるベタ中のベタのようなギャグばかりであり(猫を捕まえようとして引っ掻き傷だらけになるなど)、とても笑えるような代物ではなかったので、見ていてちょっとしんどかったです。

Ⅱ.哀しみのアルテイシア(6点/10点満点中)

養子としてマス家に匿われたキャスバルとアルテイシアの成長と、母の死によりキャスバルがザビ家打倒に向けた行動を開始するまでが描かれます。

見せ場らしい見せ場がなく、また二人のドラマにフォーカスした内容で政治劇でもなかったために、シリーズ中もっとも厳しい立ち位置にある作品だったと言えます。
そのタイトルの割にアルテイシアを主人公に据えた話でもなかったし、マス家のテキサスコロニーでのお隣さんだったアズナブル家に知人でも見分けがつかないほどキャスバルに似た同年齢の子・シャアがいたという設定にもかなり無理がありました。

ただし、本作が厳しいということは作り手側も認識していたようで、小ネタの挿入によって何とかしのいでいます。
ファンサービスを絶やさないこのシリーズの基本姿勢には相変わらず感心させられました。

  • ドズル発案の下、ミノフスキー博士が技術責任者、ランバ・ラルが現場責任者、黒い三連星がテストパイロットというモビルワーカー開発チームの陣容
  • 後にホワイトベースの仲間となるアルテイシアとミライ・ヤシマが実はマス家ですれ違っていた
  • アルテイシア・キャスバルとアムロは同じ空港に居た

Ⅲ.暁の蜂起(8点/10点満点中)

キャスバルがシャア・アズナブルと入れ替わって士官学校に入学してから、1年戦争開戦の原因のひとつとなった暁の蜂起を実行するまでが描かれます。

シャアとガルマの関係性の描き方がなかなか秀逸で楽しめました。
ガルマはドズル校長の実弟という立場をフル活用して学園内で幅を利かせていたり、取り巻き連中を常に従えていたりと表面的にはいけ好かない態度をとってはいるものの、それらは彼にとっては幼少期より当たり前のことでしかなく、そういったインチキを意識してやっているわけでもないという一種の天真爛漫さも同時に描けていました。
一人の時間では必死に勉強しているし、体力面でもシャアと張り合おうとする気骨を見せており、素の彼は善良で真面目な人間なのです。
また、シャアからの苦言を聞き入れる度量も持っており、これによってガルマの素直さや、シャアとの相性の良さが表現できています。

恐らくはシャアもガルマとの相性を感じていたはずであり、訓練中の事故に見せかけて殺すチャンスがあったにも関わらずそうしなかったのは、シャアの側にも情が芽生えていたからではないかと思います。
ガルマがザビ家の人間でなければ良い親友になれたのかもしれません。
こうした微妙な関係性を描けたことで、ガルマを謀殺する後のシャアの非情さがより引き立つ形となっており、よく計算されたドラマだと思いました。

Ⅳ.運命の前夜(6点/10点満点中)

シャアとララァの出会いと、最終段階に来たジオンのMS開発計画が描かれます。

誰もが知るキャラクターの知られざるドラマに比重が置かれていたⅢまでからは一転し、本作は一年戦争に向けて必要な駒を並べていくような内容となっており、ドラマ面では後退したという印象でした。
暁の蜂起の責任をとらされて軍を除隊となったシャアはモビルワーカーの操縦を覚えるために地球で土木作業員となっており、そこで賭博のイカサマ師の手伝いをさせられていたララァと出会います。
これはシリーズ全体を通してもかなり重要な出会いだったはずなのですが、そこにドラマ性は皆無であり、「そろそろララァを出しとかなきゃ」みたいな作り手側の消極的な意思しか感じられなかった点は残念でした。
また、冒頭にて除隊処分となったシャアが軍籍復帰してランバ・ラル率いるMS部隊に入れた経緯も不明であり(ガルマを通じてドズルと交渉したのだとは思いますが)、ドラマがうまく繋がっていませんでした。

その他、カイ・シデンをアムロのクラスメイトにしたことには、ファースト本編での両者の関係を考えると違和感しかなく(クラスメイトらしい振る舞いは一切なかったでしょ)、余計な設定の追加だったと思います。
加えてカイを札付きの不良にしたことも、たまに芯を食ったことを言う皮肉屋であるという従来の人物像からかけ離れているように感じました。

この通りドラマ面は残念だったのですが、クライマックスでのMS戦は素晴らしすぎました。
シャア、ランバ・ラル、黒い三連星という夢の顔合わせに加え、ジオンのMS開発計画を知っても「MSなんてコケ脅しだろ」「うちのガンキャノンの火力には劣るだろ」と言って悠長に構えていた連邦軍上層部の鼻を明かすという展開にも高揚感がありました。
さらに、宇宙戦での速い動きとは違い、MSが重機の延長にあるかのような鈍重な動きをすることも個人的には好みであり、全シリーズを通しても屈指の名戦闘シーンだったと思います。

Ⅴ.激突 ルウム会戦(8点/10点満点中)

このエピソードよりルウム編に突入し、一年戦争の開戦からブリティッシュ作戦が描かれます。

ファーストOPの磯野波平によるナレーション「この一ヶ月あまりの戦いでジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。人々はみずからの行為に恐怖した。」という、その行為がついに描かれるのですが、ブリティッシュ作戦そのものの詳細な描写のみならず、これに巻き込まれた小市民のエピソードによってジオンがいかに残虐な行為をしたのかが分かるという情緒的な演出は本当にうまいなと感心させられました。

戦争が精神面でも人を蝕んでいく様の描写も衝撃的でした。
それまでのエピソードでは筋を通す武人として描かれてきたドズルがブリティッシュ作戦での殺戮行為に精神的に耐えられなくなるものの、「大事な家族を守るためには何だってせねばならないのだ!守る力を持たなかった犠牲者達が悪いのだ!」と自己肯定する様には戦争で残虐行為に走る人類全般の真理が込められていたし、戦いを好まなかったセイラもまた、襲い掛かってくる暴徒から善良な隣人達を守るために銃を手にするしかない状況へと追い込まれていきます。
善良な人たちも善良なままではいられなくなるという点にこそ、戦争という異常事態の怖さがあるのです。

「通常の3倍」というシャア専用ザクと、これを操ったシャアがいかにとんでもない存在だったかを観客にも理解させる一連の描写も素晴らしかったです。
目いっぱいブーストさせた瞬間に警報が鳴るほどの重力がシャアの身にかかっているという描写や、人間技を超越したスピードを示す主観ショットは非常に効果的でした。

Ⅵ.誕生 赤い彗星(9点/10点満点中)

ルウム戦役から南極条約締結までという1年戦争初期の山場が描かれます。

指揮官の戦略ではなくパイロット個人の資質により勝敗が決することの多いガンダムシリーズとしては珍しく、ドズルの采配によってジオンが戦力面での劣勢を克服するという内容となっており、一種の史劇として作られていた点が新鮮でした。
抜群のタイミングでMS隊が合流してくるという運の強さも含めて、ドズルは勝ち軍の大将らしい風格を示していました。
また、もしもティアンム艦隊に進軍されていればジオンはがら空き状態となった首都を落とされるところだったが、レビル艦隊の惨敗によって戦意喪失したティアンムが引いてくれたおかげで大勝利が確定したという、歴史にありがちな運命のいたずらも描けており、架空の物語ながら実に奥行のある内容となっていました。
あと、黒い三連星はやっぱりかっこいいですね。あれだけスタイリッシュなカラーリングの機体なのに乗ってるのは下品なおっさん達というギャップも含めて、黒い三連星はすべてが良すぎました。

前半のルウム戦役で目を楽しませた後には静かなる謀略劇へとシフトするのですが、ジオンと連邦の双方に主戦派と和平派がおり、意見の異なる味方を出し抜くため、部分的に利害の一致する敵と手を組むこともあるという捻じれた構図には直接的な戦闘とは異なるスリルがありました。
加えて、脱走中のレビルを発見した瞬間に、その裏側にある政治力学を見抜いて高みの見物を決め込んだシャアの優れた洞察力も彼の魅力に貢献しており、このエピソードはすべてが完璧に近い仕上がりだったと言えます。

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