21ブリッジ_面白いけどいろいろ足りない【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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クライムアクション
クライムアクション

(2019年 アメリカ)
マンハッタン封鎖という舞台設定が生かされていなかったり、冒頭で「正義とは」というテーマを打ち出しながら議論が深まらなかったりと、いろいろと不足した映画でした。面白いのは面白いんですけどね。

感想

タイトなクライムアクション

今の時代には珍しい90分程度でサクっと終わるクライムアクションで、中弛みなしで一気に見られる作品となっています。誰が見てもそれなりの満足感は得られるのではないでしょうか。

以下、いろいろと文句を書いていきますが、基本的には面白い映画だと思ってください。

『ニューヨーク1997』的な設定が生かされていない

表面上はワインバーと見せかけた麻薬拠点が二人組の強盗に襲われ、現場に駆け付けた警察官が7人も殺されたことからニューヨーク市警が激昂し、何としてでも犯人を逮捕しようとすることがざっくりとしたあらすじ。

ネタを明かすとこのワインバーは裏金作りのために警察官達が運営していたもので、市警としてはその秘密を暴かれたくないという事情もあって、犯人の口封じに躍起になっています。

そこに「大金を得た犯人はすぐに高飛びするだろう」という状況判断から広域捜査の必要性ありとしてFBIが介入しようとするのですが、ワインバーの事を知られたくない市警は「うちで解決する!」と主張し、犯人を管轄外に出さないようマンハッタン島を封鎖するという奇策を立案。

21ブリッジというタイトルはこれに由来するのですが、さすがに犯人が捕まるまでいつまでも封鎖というわけにもいかないので、市当局より朝5時までという期限を与えられます。

マンハッタン島から出られないという舞台設定、朝までに問題を解決しなければならないというタイムリミット設定からは、そこはかとなく『ニューヨーク1997』(1981年)的な香りがしてきました。スネークは偉大なのです。

では、このユニークな設定が活劇に生かされているかというと、全然そうはなっていないのが作品のマイナス要素。

犯人も警察も下町をうろうろしているだけなのでマンハッタン島という舞台がまったく主張してこないし、犯人側の「一刻も早く島から出たいのに出られない」という逼迫感も伝わってきません。

同様にタイムリミットも有効活用されておらず、期限が迫る中での警察側のじりじりとした焦りというものが伝わってきませんでした。

これだとマンハッタン島封鎖という特殊状況を置かなくても同じような話ができたと思います。

正義と正義のぶつかり合いになっていない

で、犯人を追うのは殺人課の刑事アンドレ(チャドウィック・ボーズマン)と麻薬取締班のフランキー(シエナ・ミラー)。二人には面識がないのですが、現在動かせる中でのベストということで急ごしらえのコンビを組まされました。

うちアンドレは犯人を殺しまくることが問題視されている暴力刑事なので、彼を選任したえらいさん達からすれば、アンドレに任せておけば今回も犯人を射殺して口封じをしてくれる上に、「以前からアンドレはそういう奴だった」で事後の調査も回避できるという目論見があったものと考えられます。

なのですが、実のところアンドレは無闇に暴力を行使しているというわけでもなく、その軸には正義の執行という信念があって、こいつは殺すべきかどうかというジャッジ・ドレッドみたいなことをしていたわけです。

警察官が処刑人みたいに振る舞うのは一体どうなのかという疑問はさておき、今回のアンドレは「何かおかしい」と思い始めたことから、むしろ犯人を保護して事情を確認せねばならないという方向に振れていき、そのことが組織との軋轢に繋がっていきます。

最終的にアンドレは陰謀の正体にまでたどり着くのですが、ここで分かったのが黒幕には黒幕なりの正義があったということです。

彼らは決して「へへへ、良い儲け話だぜ」という感じではなく、給与が余りに少なくてマンハッタンを守っている警察官達が地元に暮らせなくて、往復4時間かけて通勤しているという実態がある。

ここまで扱いが酷いと人員の維持も難しくなるので、彼らの待遇を補完するため仕方なくやっていたというわけです。

真実を暴くということは一つの正義ではあるが、より大きな枠組みを守るための必要悪を見逃すという正義もあるのではないか。

そうした議論がなされればこの展開も生きたと思うのですが、アンドレは「ならぬものはならぬのです!」と言わんばかりに何の躊躇もなく暴露という道を選択するので、こちらも味気なく感じました。

チャドウィック・ボーズマンが暴力刑事に見えない

もう一つ残念だったのが、アンドレを演じるチャドウィック・ボーズマンにハードボイルド要素が不足していたことです。

犯罪者を容赦なく射殺する暴力刑事というのは、教科書的な正義から一段下の正義を掲げており、その隙間を暴力や威嚇で埋めています。

ハリー・キャラハンやジミー・ドイル、マーティン・リッグスらはそうした個性を持っており、本作のアンドレも恐らくその系譜に連なる性質を持っているはずなのですが、 実直さとか知性を感じさせるチャドウィック・ボーズマンの個性によって善良な熱血漢にしか見えないわけです。

それはそれで一般的なヒーロー像に近いので大衆受けはするのかもしれませんが、アクション映画好きからすると、街のゴミ掃除を買って出る暴力刑事像から離れたことは至極残念でした。

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