震える舌_伝説の闘病ホラー【6点/10点満点中】(ネタバレなし・感想・解説)

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得体の知れない脅威
得体の知れない脅威

(1980年 日本)
日本映画史に残るトラウマ作品であり、破傷風患者に扮する子役は一世一代の演技を見せます。おどろおどろしい演出も恐怖感を倍増させるのですが、話らしい話がないことが問題でした。治療の過程を起伏を持って描く内容にすれば見違えるほど面白くなったのではないかと思います。

闘病ホラーという新ジャンル

本作のあらすじは実にシンプルで、泥遊びをしていた子供が破傷風にかかってしまい、両親が看病するという、たったそれだけです。

破傷風とは傷口から破傷風菌が体内に入り込み、菌の出す毒素によって神経系が犯される病気であり、50%という非常に高い致死率となっています。症状としては激しい筋肉の発作があるのですが、意識は鮮明であるため患者は地獄の苦しみを味わうことになります。

こうして書いているだけでも嫌な気分になってくる病気なのですが、本作はこれを子役による迫真の演技とホラー映画まがいの演出で一気に見せてきます。それは闘病ホラーと言ってもいいほどのインパクトでした。

破傷風患者を演じるのは若命真裕子という子役で、本作と『典子は、今』(1981年)くらいでしか名前を見ないので本作出演時は完全に新人だったと思われますが、彼女の迫真の演技は本物にしか見えません。

「ギャー」っと叫んで口を血まみれにしている様は破傷風の恐ろしさを如実に示しており、残酷慣れした私が見ても衝撃的でした。もしもこれを子供が見ればトラウマになると思います。

そして監督は『八つ墓村』(1977年)の野村芳太郎であり、本作を完全にホラーとして撮っています。ファクトよりもインパクト重視の姿勢が揺るぎありません。

実際に苦しむ患者さんもいる病気を見世物みたいに扱っていいのかという気もしますが、そういった倫理的なスレスレ感も込みで、本作には何とも言えない緊張感が漂っています。

医師の描写がかなり酷い

そんなわけで闘病の様子を真面目に描く気はなかったようで、医師の描写はかなり酷いです。

患者の親である渡瀬恒彦と十朱幸代は、異常の兆候を見せ始めた娘をかかりつけの町医者に見せるのですが、医師は風邪か何かだと言って他の可能性を疑いもしません。

やはりおかしいと思った渡瀬恒彦は大病院へ連れていくのですが、そこでも当初は「心因性のものである」「お父さんの厳しい躾けのせいだ」などと言われます。結果から振り返ると誤診だった上に、症状の原因として親の態度を挙げるなど、今の時代なら確実に訴えられるレベルです。

裏を返せば、ここまで明白なミスを犯しても問題にならないほど、昔の医師には社会的信頼があったということなのでしょうか。

で、たまたま大先生に診てもらう機会があって、その大先生が「これは心因性なんかじゃないよ」と指摘してくれたおかげで破傷風であることが発覚。

破傷風患者は光や音などの刺激にも敏感に反応するということで即日入院の上、真っ暗な病室に入れられるのですが、なんとその部屋が小児科の大部屋の隣という笑。

よって激しい物音が病室内にも響き渡り、子供は容赦なく発作を起こします。

その後は他の入院患者達の協力もあって(部屋は換えないのかい)静かな環境となるのですが、それでも繰り返される発作。で、発作の度に渡瀬恒彦は担当医を探して病院内を走り回るのですが、重症患者なのだから医師か看護師が近くにいてやれよと思います。

とにかくこの病院は「言われなきゃやらない」「呼ばれなきゃ行かない」という姿勢が徹底されており、ある時などは渡瀬恒彦が決死の形相でバックヤードにやってくると、医師たちは呑気に将棋をさしていました。遊ぶ時間があるなら重症患者の様子を見てやれよという。

というか、昭和の時代は勤務時間中に将棋をさしても良かったのでしょうか?今の時代では考えられませんね。

まぁとにかく酷い描写が多くて、物語の舞台は病院なのに医療を描く気がないという点には驚きました。

起伏がないので後半飽きる

そんなわけで医療が描かれないので、ストーリーラインは滅茶苦茶に弱いものとなっています。

通常、この手の映画ならばある治療法を試してみて、果たしてそれがうまくいくかという形でストーリーの山場を作るものなのですが、本作の場合はそうした積極的なアプローチがありません。ただ状況を描くだけなので、途中から飽きてきます。

もうちょっと起伏のあるストーリーなら良かったのですが。

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