モースト・デンジャラス・ゲーム_面白いのは序盤だけ【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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クライムアクション
クライムアクション

(2020年 アメリカ)
マンハントものを現代風にアレンジし、都市部にて白昼堂々と殺人ゲームが行われるのが本作の新機軸だが、それが面白さにつながっているわけでもないのがツライ映画だった。見ていられないほどつまらなくはないが、夢中になるほど面白いわけでもない、そんな映画。

作品解説

アメリカで人気のマンハントもの

私のような中年になると、このタイトルを聞いて連想するのはモスト・デンジャラス・コンビであるが、当然のことながらブロッケンJr.とリキシマンは関係していない。

“The Most Dangerous Game”(邦題『最も危険なゲーム』)とは1924年に出版されたリチャード・コネル著の短編小説であり、1933年にRKOが『猟奇島』として映画化。『キングコング』(1933年)のセットや出演者を流用した映画だったが、マンハントものの源流となった。

狩猟民族にとって人間狩りには大いに感じるものでもあったのか、その後マンハントものはアクション映画で人気のジャンルとなり、シュワルツェネッガーの『バトルランナー』(1987年)、同じくシュワの『プレデター』(1987年)、メル・ギブソン監督の『アポカリプト』(2007年)などが製作された。

また追う者と追われる者という構図がまんま社会階級の隠喩として捉えられることから、社会派メッセージと結び付けられることも多く、その筋ではマイケル・ベイ製作の『パージ』シリーズ(2013年~)や、ブラムハウス製作の『ザ・ハント』(2020年)などがある。

そしてアクションと社会派という二大潮流の折衷となったのが、ジャン=クロード・ヴァン・ダム主演の『ハード・ターゲット』(1993年)だったりするのだから、混沌としたジャンルとも言える。

そんなマンハントものの一本が本作なのであるが、原作の『最も危険なゲーム』が2020年にパブリックドメイン入りしたことから、元祖と同じタイトルを名乗ることができるようになったようだ。

ソーのリアル弟主演

主演はソーのリアル弟ことリアム・ヘムズワースで、製作総指揮も兼任する力の入れようである。リアヘムは『ハンガー・ゲーム』シリーズにも出ており、このジャンルに思い入れでもあるのだろうか。

監督は、『スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム』での復活で人気再燃のドラマ版『デアデビル』『オザークへようこそ』など多くのテレビドラマを手掛けるフィル・エイブラハム。

なお本作は日本だと2時間の映画フォーマットにまとめられているが、元は7~8分×16話の連続ドラマだったらしい。

感想

市街地が舞台という斬新さ

Amazonプライムで見つけて鑑賞。見放題ながら4Kだったので、何か得した気分になった。ぶっちゃけフルHDと4Kの画質差は個人的にはそこまで感じないので、本当に気持ちの問題だけだが。

不動産投資業を営むダッジ(リアム・ヘムズワース)は脳に巨大な腫瘍が発見され、余命いくばくもないことが分かる。現在の事業は絶不調でまったく金がない上に、妻は第一子を妊娠中。生まれてくる子供に借金だけ残して死ぬわけにもいかず、高額報酬目当てでマンハントに参加するというのがざっくりとしたあらすじ。

ゲームに参加するかどうかでダッジは悩むのだが、この導入部の出来が良い。

主催者(クリストフ・ヴァルツ)を胡散臭いなと疑ってみたり、ミスれば殺されるというのはやっぱ怖いしなぁと怯んだりで、そのリアクションに不自然さがない。

対する主催者は実に言葉巧みに乗せようとしてくる。大金を持って帰れば家族を楽させてあげられるとか、元陸上選手の君なら勝機はあるよとか言って誘因を与えてくるし、決して強引に引き込もうとはせず、君の決断を待つという態度でいる。

強制するよりもこういう態度をとる方が、結果的には決断を促しやすくなるのだ。演じるクリストフ・ヴァルツの個性ともよく整合しており、口のうまいセールスマンみたいな感じもしてくるのが面白かった。

そんなこんなでダッジはマンハントへの参加を決意するのであるが、ユニークなのが舞台設定である。

通常、マンハントものは孤島や荒野を舞台にする。当然のことながら殺人は犯罪で、当事者間での合意の有無は関係なく重い罰が待っているので、公安に感知されない場所でやる必要があるためだ。

もしくは国家が殺人を許容するSF設定が置かれているか。

しかし本作の場合はSFでもパラレルワールドでもなく現実の都市を舞台に、白昼堂々とマンハントが繰り広げられる。これが作品の最大の特徴ではなかろうか。

この大胆な筋書きに現実味を持たせるため、ゲームのルールには工夫がなされている。

警察に通報することも、何か別の罪を犯して逮捕されることも禁止。ゲームについて誰かに話してもいけない。

何より舞台がデトロイトというのが良いよね。『ロボコップ』(1987年)や『ドント・ブリーズ』(2016年)の地であり、何となく公安が機能していない街というイメージがあって、白昼堂々とマンハントが行われていても不思議ではない。そんな街である。

緊張感はなかった

なのであるが、いざゲームが始まるとやっぱり無理を感じた。

世間に気付かれないよう殺し合いをするというのはさすがに難しく、追跡者側がかなり抑えて戦っている感がある。裏を返せばダッジ側に圧倒的な分があるということであり、これでは緊張感など醸成されない。

そのうえ、5人の追跡者があまり強そうではない。社会に溶け込めるよう普通の風貌の人間なのであるが、対するのが身長190cmで筋肉隆々のリアム・ヘムズワースなので、相対的に追跡者側が弱そうに見えてしまっている。

しかも彼らは組織だって動いていない。それどころか「仕留めるのは俺だ!」みたいな感じでけん制し合っているので、ほぼほぼリアムの勝ちが見えているのである。

追う者と追われる者の戦力バランスには、もっと気を使ってほしかったね。

また元が7~8分のドラマであり、各話に見せ場が来るような構成になっていたためか、つなげて2時間にすると一定のタイミングで山場がくるため、「そろそろ何か起こるな」「もうすぐダッジが反撃だな」というのが読めてきてしまう。

これも面白くなかった。

やはり本作はオリジナルフォーマットで見るべきだったのだろう。日本でその鑑賞手段はなさそうではあるが。

意外な展開を入れすぎで冷める ※ネタバレあり

終盤に向かうにつれて物語には意外なひねりが加わってくる。

実はダッジは末期がんではなく、彼に目を付けていた主催者がダッジを陥れたとか、親身にしてくれていたダッジの友人があちら側の奴じゃないかという疑惑が浮上したりとか。

ただしマンハントものに捻りなんてものは不要で、話から勢いを削ぐ効果しかなかった。

マンハントものは追いこまれた弱者が強者に牙を剥くというシンプルな筋書きで良かったのに、どうしてここまで練りこんじゃったんだろうというのが率直な感想である。

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