土と血_仕事道具を武器にする映画は面白い【7点/10点満点中】(ネタバレなし・感想・解説)

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(2020年 フランス)
娘を守りたい一心の製材所経営者vs弟を殺されて怒り狂うギャングのボスという燃えるカードに、仕事道具を武器に反撃するという見せ場の作り方。派手さこそないものの、その殺伐とした雰囲気や見せ場の緊張感には素晴らしいものがあり、バイオレンス映画としては上出来の部類に入ります。

©Netflix

あらすじ

末期がんで余命僅かであることを宣告されたサイード(サミ・ブアジラ)は、経営する製材所を売却し、得られた資金で娘サラを美術学校に進学させることにする。製材所の買い手が見つかり、従業員の雇用も継続するという約束も取り付けた矢先、従業員の一人ヤニスが見慣れない車を製材所内に持ち込んでいたことが発覚する。

車内には大量のコカインが隠されており、ヤニスを問い詰めると、それはヤニスの兄が警察の証拠保管庫から強奪したものだと言う。サイードは急いで従業員達を帰宅させ、警察にも通報したが、警察の到着前にコカインの本来の持ち主であるギャングがやって来る。

スタッフ・キャスト

監督は『ザ・バウンサー』のジュリアン・ルクレルク

1979年フランス出身。2004年より映画界でのキャリアをスタートさせ、1994年に発生したハイジャック事件の映画化『フランス特殊部隊 GIGN~エールフランス8969便ハイジャック事件~』(2010年)が代表作。他にジャン=クロード・ヴァン・ダム主演のクライムアクション『ザ・バウンサー』(2019年)を監督しています。

たいていの作品が90分程度で終わるという簡潔な語り口の監督であり、本作に至っては80分。しかし軽い作風というわけではなく、ずっしりとした見応えがあります。

主演はセザール賞受賞のサミ・ブアジラ

1966年グルノーブル出身のチュニジア系フランス人。1990年代より映画出演を開始し、『デイズ・オブ・グローリー』(2006年)でカンヌ映画祭最優秀男優賞受賞(主演5人全員が受賞し、そのうちの一人として)。”Les Temoins”(2007年)でセザール賞助演男優賞受賞。またエドワード・ズウィック監督の『マーシャル・ロー』(1998年)のテロリスト役でハリウッド進出も果たしています。

ジュリアン・ルクレルク監督作品の常連で、本作の他に『ザ・クルー』(2015年)、『ザ・バウンサー』(2018年)にも出演しています。

登場人物

  • サイード(サミ・ブアジラ):森で製材所を経営する初老男性。末期がんに蝕まれており余命いくばくもないことから、製材所を売却して一人娘サラの進学資金にしようとしている。
  • サラ:サイードの娘で、父の製材所で働いている。聾唖で補聴器を付けており、手話で会話する。
  • ヤニス:仮釈放中の若者で、サイードの製材所で働いている。腹違いの兄からコカインを人里離れた職場に隠すよう依頼され、断れずに引き受けたことから今回の騒動の発端となる。そんなトラブルを起こしつつも依然としてサイードからの信頼関係はあり、ギャング襲撃後にはサラの身を任される。
  • アダマ:ギャングのボス。製材所にドラッグを回収に来たところ、サイードに弟を撃ち殺されて復讐モードに入る。特技は相手の首の骨をへし折ること。

感想

仕事道具で戦う映画は面白い

『土と血』…4文字全部がタ行で発音しづらいというツッコミはさておき、原題も”La terre et le sang”なので、その忠実な日本語訳だと言えます。そして、土とは労働者を、血とは犯罪者を指しているものと思われます。

このタイトルが示す通り、本作は犯罪者と対決することとなった労働者の話なのですが、仕事道具を武器にする映画は、たいてい素晴らしいものです。ホームセンター勤務の元CIAデンゼル・ワシントンが工具で敵を血祭りにあげる『イコライザー』(2014年)も良かったし、日本には『必殺!仕事人』なんてものもあります。

そして、例に漏れず本作も素敵な見せ場を提供してくれます。

電ノコでギャングの手を切断したり、大型重機でカーチェイスを繰り広げたり、斧を背中にぶっ刺したりと、製材所で働く主人公が仕事道具でギャングに反撃する様は最高すぎました。労働者舐めんなよというね。

爆発をバックにした画はバイオレンスの基本!
©Netflix

私怨vs私怨の死闘

ギャングの頭領アダマは常に殺気立っており、人を殺すことに一切の躊躇がありません。まさに狂犬。このアダマには弟がいて、こいつは兄とは対照的に気の良い性格であり、ギャング内では兄の暴走を止める役割を果たしていたものと推測されます。

サイード(サミ・ブアジラ)の製材所に彼らギャングがやってきた時、「兄貴が行くとトラブルの元だから、俺が行ってくるわ」って感じでこの弟が製材所内に入ってくるのですが、娘サラが襲われていると勘違いしたサイードがこの弟を撃ち殺してしまいます。

アダマというヤバイ奴の肉親を殺してしまった上に、殺した弟はそのブレーキ役だったような存在。アダマは怒り狂った上に、その行動を制御する者もいなくなったことから、「絶対ぶっ殺してやる!」といきり立ちます。

対するサイードも黙ってはいません。経営者にとって職場は神聖な場所であり、そこを血とドラッグで汚すとは何事かと。しかも売却を控えた製材所を傷物にされちゃ困るという事情もあるし、何より目に入れても痛くないほど可愛がっている娘に危険が迫っているとなれば、引くわけにはいかない。

ここに私怨vs私怨の構図が置かれ、そもそもバイオレンスに長けたアダマと、地の利のあるサイードは一進一退の死闘を繰り広げます。激熱でしたね。

見るからにヤバそうなアダマ
©Netflix

音の演出の素晴らしさ

娘サラが聾唖という設定からも、音が作品の重要な構成要素であることが分かります。

実際、足音や息遣いなどで前半のステルス戦が効果的に演出されていてハラハラさせられるし、いざという時の銃声もなかなかシャープで聞かせます。

その他、森の環境音や川のせせらぎ、パチパチと燃える炎の音など、何気ない場面でも音が非常に立っており、見せる以上に聞かせる映画だったと言えます。

サイードとアダマが写っていない場面が退屈

そんな感じで基本的には満足のいくバイオレンスだったのですが、主人公であるサイードとアダマがあまりに立ちすぎていて、二人が写っていない場面が猛烈に退屈するという問題が発生しています。

具体的には、サラとヤニスがギャングの一人に追われる場面なのですが、そもそも情感が不足している上に、決め手もなくダラダラと続くので、全然面白くありませんでした。挙句、サイードが合流した途端にアッサリと決着がついてしまうので、なくてもいいパートだったような気がします。

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