狩りの時間_法のない世界ほど恐ろしい【5点/10点満点中】(ネタバレなし・感想・解説)

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クライムアクション
クライムアクション

(2020年 韓国)
世界観の構築やアクションのクォリティは素晴らしく、特にカジノ襲撃場面ではドキドキさせられました。ただし殺人鬼との追いかけっこが始まると追う側・追われる側の双方に不自然な隙ができており、ここで緊張が途切れました。雰囲気は好きだけど、出来は良くないので決して高くは評価できない映画。

©Netflix

あらすじ

未来の韓国。国家は財政破綻寸前であり、通貨危機で国民財産は紙切れとなっていた。出所したての窃盗犯ジュンソクは、国を脱出して台湾でやり直すための資金を求めており、仲間達と街の闇カジノへと強盗に入る。強盗は成功したが、殺人鬼が彼らを追ってくる。

登場人物

  • ジュンソク:3年の服役後に出所したリーダー格。刑務所で知り合った人物から台湾の南の島での事業に誘われており、その原資を獲得するために闇カジノ襲撃を企てる。
  • ギフン:ジュンソクの友人の一人。茶髪で首筋にタトゥーがある。仲間内で唯一、両親が居る。
  • チャンホ:ジュンソクの友人の一人。短髪ピアスという風貌。ギフンと同居している。狸寝入りをするクセがある。
  • サンス:ジュンソクの友人だが、服役前のジュンソクから金を奪った。闇カジノの従業員として働いていることから、襲撃計画に半ば無理矢理参加させられた。
  • ハン:闇カジノを襲撃した4人を追いかける殺人マシーン。殺人を楽しんでおり、獲物に逃げる余裕を与えることもある。

感想

よくできた世界観

舞台は現代ではなく未来。銃が普通に存在し、街中で銃撃戦を繰り広げてもそれほど大事にはならないという舞台を設定するためには、SFである必要があったものと思われます。

ただしこれが完全な絵空事ではなく、ウォンの暴落で国民の財産が紙切れになったとか、IMF(国際通貨基金)からの借入を返済できなくなって政府は破産状態など、現実と地続きの世界として捉えられるような絶妙な設定となっています。

この通貨危機は数年で一気に来たようであり、刑務所を出所したジュンソクが「えらく街が変わったなぁ」とか言いながら仲間達から社会情勢についての説明を受けることで、観客に対してもスムーズに世界観の説明がなされるといううまい構成となっています。

スリル満点の闇カジノ襲撃場面

ジュンソクは刑務所仲間から台湾南部の島で事業を譲ってやるとの誘いを受けており、隠しておいた資金をそれに充てようと考えていたのですが、通貨危機でウォンは紙切れ状態。文無しでした。

ジュンソクだけではなく街中が貧乏で、盗みに入る店すらない状態。たっぷりの金を持っているのは闇カジノだけでした。

偶然にも、貸しのある友人サンスがカジノで働いているということもあって、サンスを含むジュンソク達4人はカジノ強盗を計画します。

闇カジノはヤクザのシマであり、警戒は厳重。しかもヤクザの金に手を出すので、身元を特定できる痕跡を残せばとことん追われることとなります。

そんなプレッシャーの中での襲撃場面は緊張感がフルスロットル。見ている間中ドキドキさせられました。銃を突き付けているので反撃こそしてこないものの、店のヤクザが落ち着き払った顔で「お前ら、誰の金に手を出してるのか分かってるんだろうな」と凄んでくるあたりもとっても怖かったですね。

すぐに高飛びしないのかい

ちょっと危ない場面がありつつも強盗は成功。

危険な金に手を出したのだからジュンソク達4人はすぐに高跳びするのかと思いきや、サンスは「このタイミングでカジノから姿を消すと俺が犯人だとバレる」という理由でいったん日常生活へと戻っていき、残る3名も唯一家族のいるギフンの実家でのんびり過ごします。

って、早く逃げろやとイライラさせられました。

その頃、カジノを襲われたヤクザは殺人鬼ハンを使って犯人探しを開始します。奪われた金額は組織にとって端金でそれほど重要ではなかったのですが、問題は防犯カメラ映像を隠滅するために4人が奪っていったハードディスクでした。そこにはマネーロンダリングなどの記録がすべて入っており、組織は強盗犯を血眼になって探し始めます。

ハンは殺した相手から削いだ耳を自宅にコレクションするという異常者であり、射撃の名手。ちょっと『ノーカントリー』(2009年)のアントン・シガーを思い出させるキャラクターであり、シガー同様に圧倒的な強さを誇っています。

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で、ハンはすぐに4人が武器を入手したビリヤード屋を突き止めます。ビリヤード屋の親父はジュンソクに意味深な電話をかけてきて最後の警告をしてくれたのに、この電話を受けてもなお「ヤバイからすぐに逃げよう」とはならないジュンソクの勘の悪さにも困ってしまいました。

ここでの4人の勘の悪さのために、せっかくの緊張感が途切れましたね。

隙だらけの殺人鬼ハン

隙の多さでは対するハンも負けてはいません。ホテルのバーでほぼほぼ殺せる距離でジュンソクと出会っても何もせず、車で逃げるジュンソク達を一旦は追い込んだものの、5分時間をやると言って遊ばせます。

遊ばせた以上、次の瞬間にはすぐに捕まえに行けるだけの余裕があるのかと思いきや、結局まかれてしまう体たらく。物語の構成上、今ジュンソク達に死なれては困るからという理由でハンが手抜きをして戦っているようにしか見えず、興ざめでした。

その後も油断だらけのジュンソク達と追い込みきれないハンという構図が続き、サスペンスが締まりませんでした。銃撃戦の出来は良いのに、その前段にあるドラマがこれでは盛り上がりません。

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