クライム101_ソウとハルクによる『ヒート』【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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クライムサスペンス
クライムサスペンス

(2026年 アメリカ)
ジェネリック版「ヒート」。職人的な犯罪者が実に丁寧に描かれた作品で、全体のクォリティは決して低くない。ただし丁寧すぎて展開がスローなのと、捻りを加えすぎて説得力のなくなった結末がイマイチだった。

丁寧でちょっと退屈なクライムドラマ

初日のレイトショーで鑑賞。

金曜の仕事終わりに駆け込む映画館には格別なものがありますな。

クリス・ヘムズワース、マーク・ラファロ、ハル・ベリーという、いずれもマーベル映画で活躍してきた面々が生身の人間役で出演したクライム・サスペンスは、素晴らしいスタートを切る。

強盗のクリヘムと、そのターゲットである宝石商の動きが交互に映し出され、その瞬間に向け否応なしに緊張感が高まっていく。

クリヘムの計画は緻密に立てられており、その動きには全くの無駄がない。

が、わずかな狂いから軌道を外れた瞬間に始まる猛烈なカーアクション。

静と動の切り替えが完璧で、サスペンスとアクションがお互いを引き立て合う、理想的なクライムスリラーとして仕上がっている。

またこの序盤を見るだけで、クリヘムが野生的な勘と職人的な技を併せ持つ、優秀な犯罪者であることが理解できる。

その後は淡々としたテンポで主人公たちの人となりが描かれていく。

淡々とし過ぎて何度か寝落ちしかけたが、何とか踏ん張った。

本作はコンディションの良い時に見るべき映画なのかもしれない。

クリヘムは海辺の高級マンションに暮らしている。

その部屋は家具も照明も一目で「金かかってんな」ってことが分かるものばかりなのだが、広々とした室内はそこか空虚で生活感がない。

彼は強盗稼業以外に興味がない、プロの犯罪者なのだ。

そんなクリヘムが、軽い追突事故で偶然出会った女性マヤ(モニカ・バルバロ)と良い関係になり、やがて足を洗った後の生活を考えるようになる。

一方、彼を追うこととなるマーク・ラファロ刑事はモノだらけの家に夫婦二人で生活しており、落ち着けるのはトイレの中だけという世にもあんまりな扱いを受けている。

挙句、奥さんには浮気されるわ、被害者であるはずのラファロがなぜか離婚を突きつけられるわと、何もいいことがない。

また仕事面でも伸び悩んでおり、相棒からも上司からも敬意を受けていない。

しかしラファロは無能というわけではない。

むしろ彼は丁寧な捜査で犯人に迫る優秀な刑事なのだが、検挙数が出世のモノサシになるLA市警においては、そのじっくりスタイルが評価を受けていないだけなのだ。

そんなラファロが、ルート101沿いで起こる強盗事件は同一犯の仕業であることを突き止め、やがてクリヘムに迫っていくというのが、物語の横軸となる。

方や足を洗うこと考える犯罪者、方や私生活の不調を仕事にぶつける刑事。

この図式からは否応なしにマイケル・マン監督の『ヒート』(1995年)を彷彿とさせられるのだが、しかし本作がヒートをパクったというわけではなく、ジャンルの完成形ともいえるヒートに、どうやっても似てしまう運命なのだろうと思う。

では本作が『ヒート』と並ぶ出来かというと、そうでもない。

全盛期のロバート・デ・ニーロ、アル・パチーノとの比較に晒されればソウとハルクすら見劣りするし、男と男のドラマを描かせると、マイケル・マンの右に出る者はいない。

腑に落ちない結末 ※ネタバレあり

というわけで、本作はジェネリック版ヒートともいえる内容で推移するのだが、これではいかんとでも思ったのか、終盤にて思わぬ捻りが加わる。

最後のヤマに挑むクリヘムと、ついにそのしっぽを掴んだラファロ。

強盗現場の高級ホテルにてついに二人はまみえ、お互いに敬意を払い合いつつも、最後は殺し合いが待っているのかと思いきや、ラファロがクリヘムを逃がしてしまうのである。

ちゃんと伏線などは張ってあるので荒唐無稽なオチというわけでもなく、人によっては「そう来たか!」と膝を打つかもしれないが、私は腑に落ちなかった。

正義の人だったラファロが法を無視し、犯罪被害者である富豪に偽証を迫ってまで、犯罪者であるクリヘムを逃がす。またラファロ自身もダイヤモンドを盗んでしまう。

この心境の変化に至る葛藤が、まるで伝わってこないからだ。

そうしてタガの外れたラファロは、クリヘムからの贈り物であるクラシックカーも、有難くいただいてしまう。

これでは賄賂ではないか。

本作の倫理観の線引きには独特なものがあるのだが、私には合わなかった。

ハル・ベリーは良い!

というわけで、良い部分は認めつつも、全体としては微妙な映画なんだが、そんな中でひとり気を吐いていたのがハル・ベリーだ。

彼女は保険会社にて、富裕層相手に高額な保険を販売している。

どこにお宝があるのか、それはどんな警備で守られているのかを知りうる立場なので、クリヘムから情報屋としての勧誘を受ける。

当初は断るハル・ベリーだったが、顧客の金持ちが嫌な野郎だったり、会社は自分をおっぱい要員程度にしか思っていないことにようやく気付いたりで、「こんな仕事やってられるか」とクリヘムに協力することに。

その美貌でかつては契約を決めまくっていたであろうハル・ベリーだが、加齢と共に衰えていく自分の風貌に危機感を覚え、また自分を良いように扱ってきた上司に対する怒りを抱え、やがて犯罪の片棒を担ぐに至る様を、実に説得力のある演技で見せてくれる。

彼女の存在で映画のレベルはワンランク上になったと言える。

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