オーガズム瞑想:ワンテイスト社の実態_うらやまけしからん不祥事【6点/10点満点中】(ネタバレなし・感想・解説)

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実話もの
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(2022年 アメリカ)
ヘタなエロ映画のようなタイトルだけど、内容は現実に起こった企業不祥事を取材したドキュメンタリー。事件の異様さから内容への興味は持続する反面、元関係者の証言をまとめただけの構成に物足りなさを覚えた。

感想

ワンテイスト社という変な会社

寝る前にちょっとだけ時間があって、その合間に見られる短めの作品がないかなと思ってNetflixを探していたところ、本作に遭遇。

まず凄いのがタイトルとサムネで、どう見てもエロ映画。このインパクトで私の目に止まり、上映時間も90分未満と短めだったのでこれは丁度良いということで鑑賞を開始したのだが、まったくもってエロ映画ではなかった。

サンフランシスコに実在するワンテイスト社というウェルネス企業が起こした不祥事を追ったドキュメンタリーであり、元関係者たちのインタビューで構成されている。

ワンテイスト社の企業理念をざっくりいうと、性的な満足感を得ることで心身ともに健康になろうというものであり、会員達に女性器の愛撫の方法などを教えていた。加藤鷹がやってることとあんまり変わらないんだけど、彼らは演出方法がうまかった。

秘め事、卑猥なものとして捉えられる性行為をメソッド化してヨガや瞑想と同列のものとして再定義し、習い事感覚でセミナーに参加できるような雰囲気作りに成功。

また女性の権利向上という社会的な気風にもうまく乗っかり、これまでは男性だけのものだった性的快楽を女性がおおぴらに求めたっていいでしょという形で共感を獲得していった。

そして何よりの強みはニコール・デドンという創業者の存在である。

本記事のサムネ画像にも彼女を選んだが、若い頃のメリル・ストリープのような美しさや聡明さを感じさせる人物で、女性がこうありたいと思えるスタイルを彼女自身が具体化していた。

元関係者たちによると人心掌握術にも長けていたらしく、直接話せた者達は彼女の熱狂的な信者になり、どんどんワンテイスト社にのめりこんでいったらしい。

彼女が広告塔になったことで性を扱ったこの会社からは怪しさがなくなり、そのカリスマ性でグウィネス・パルトローらセレブからの支持も得られたことで、企業はより発展していく。

一時期は全米でもトップクラスの有望なスタートアップ企業として経済紙にも取り上げられていたほどだった。

ただし本質は高額会費を払った会員に愛撫の仕方を教えるような変な会社なので、成長とともにおかしなことになっていくのだが。

無理のある成長で会員が犠牲に

社内は小規模なカルト宗教のような雰囲気だった。

実演と称して会員女性(時にはニコール自身)が演台で下半身を露出し、アメリカ版加藤鷹が愛撫をする。それを真剣なまなざしで見守る会員達。AVではよくあるシチュエーションだが、まさかリアルでやってる奴らがいたとは。異常である。

グウィネス・パルトローもよくこんな団体を支持できたものだ。

コアな会員達はサンフランシスコの倉庫を改造した会社施設で共同生活し、やりたい時にやる。この組織において性行為は良いことなので、気が向けばどんどんやりましょうという状態だった。

そこに集まるのは男女ともにコミュニケーション能力に問題を抱えた人たちなんだけど、キモオタみたいなおっさんでも若い子と乱交ができるというパラダイスが一時的に実現。しかも人生を豊かにするための前向きな活動という大義名分も得られるので、風俗通いのような後ろめたさもない。

映画では元会員だというスキンヘッドやひげのおっさんたちがインタビューに答えるんだけど、男目にも気持ち悪いと感じるこんなおっさんたちでも乱交できたというのだから、まったくもってうらやまけしからん。

これに人々が群がり組織は巨大な収益を上げ始めた。私だって、もしもアクセス可能な場所にこんな企業があれば関心を持っただろう。

かくしてニコールは組織のフランチャイズ化を画策するんだけど、問題は、集まってくるのが男ばかりだということだ。悲しいかな、性に対して関心があるのは圧倒的に男なのである。

ここに創業当初のビジョンとのズレが生じたわけで、まともな経営者ならば「我々の主要顧客は女性だよね」ということで戦略の立て直しを図るところなんだけど、ニコールはこの波に乗っかることにする。

その結果、数少ない女性会員達に新規の男性会員の相手をしろと命令するようになり、株式会社が運営する売春宿のような状態になってしまう。レイプも受け入れろとかめちゃくちゃ言い出すニコール。

この頃のニコールは想定を超えた成功で有頂天になっており、自分は会員を自由に操れると思っていたようだ。

ただし彼女は元旦那からも詐欺師だと言われるような人物であり、言うことがコロコロ変わることにさすがの会員達も気づき始める。

こうして彼らのビジネスモデルは崩壊するんだけど、会員達は洗脳状態にあったので会社やニコールの罪を客観的に立証することが難しく、社名を変えて今でも組織は存在しているようだ。

コアメンバーたちが孤島で共同生活しており、いよいよ本格的なカルト宗教らしくなってきた。

ドキュメンタリーとしては平凡

ただしドキュメンタリー作品としては平凡。

最後にテロップも出るんだけど、本作の製作にあたりワンテイスト社が取材に応じてくれなかった。

そのために顔出ししてくれる元会員のインタビューを羅列する内容にとどまっており、多面的な分析ができていない。

ワンテイスト社の全貌が見えてこないのである。

また視聴者が一番気になるのは、ニコール・デドンってどんな人間なのってことなんだけど、それも元関係者たちのコメントを通して間接的に語られるのみで、彼女の人となりを客観的に分析しようとはしていない。

作り手側が積極的なリサーチをしていないし、結論も出せていない。ただのインタビュー集になっているので、作品としての完成度は低いと言える。

ただ題材が面白すぎるのでなんだかんだで最後までは見れてしまうのだが。

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