(2018年 イギリス)
平凡な市民が思いがけず重大犯罪の当事者になってしまい、完璧に行ったはずの隠蔽工作がどこかでバレるんじゃないかというサスペンスに、どうやらこの地域には独特な風土や人間関係があり、ここに立ち入ってしまった都会人を異物として排除しようとする村人達の脅威にも晒されるという『シンプル・プラン』×『脱出』のような作品なのですが、これが最近見たサスペンス映画の中では断トツの出来でした。
観客にも選択を迫ってくる迫真のドラマ
趣味の狩猟を楽しんでいたら、その場に居合わせた子供に弾が当たって死なせてしまった。邦題の通り主人公は出頭するか・隠蔽するかという大きな選択を迫られるのですが、それは観客に対しても「あなたならどうしますか?」と考えさせる内容となっています。
序盤にて主人公が幸せな家庭を持っていることや、旅先で若い女性からワンナイトラブを誘われても家庭への忠誠心を貫くような良い奴であることを簡潔に描けていることが効いてくるのですが、まったく悪意のない不慮の事故だったし、しかもここは人里離れた山奥なので隠すことも容易である。起こってしまったことへの道義的責任と家族の生活を守るという家庭人としての責任を両天秤にかけ、家庭を守るためには隠蔽するしかないとした主人公の判断には、私も同意できました。
一筋縄ではいかない偽装工作
その後は偽装工作に移るのですが、子供を死なせてしまった後に心穏やかでいられるはずもなく、主人公の挙動が明らかにおかしいために村人から不信な目を向けられたり、行方不明者が出たと騒ぎが大きくなってきたところで村を離れようとしたものの、その最悪のタイミングで村人から絡まれて逃げるに逃げられなくなったりと、とにかく嫌な汗をかかされ続けます。
極めつけは山の捜索であり、そうは言ってもここはだだっ広い森だし、死体は埋めたし、夜で視界が悪いし、どうせ見つかりゃしないよと高を括っていたら、まさかの捜索犬投入という絶体絶命のピンチ。この通り、全編に張り詰めた緊張感には物凄いものがありました。
とにかく危機また危機の映画なのですが、これを受けた主人公の反応や対応策にある程度の合理性があるために、余計なことを考えず主題に集中して見ることができました。この手の映画においては主人公が一つや二つバカなことを仕出かすことが多いのですが、本作にはそれがなく、非常によく作りこまれているのです。
Netflixオリジナル作品としては最上級の仕上がり
監督と脚本を担当したマット・パーマーにとっては本作が長編デビュー作だったのですが、彼は驚異的な手腕を披露しています。Netflixの映画にはハズレが多く、それは映画会社が手放した企画を拾うことが多いためだろうと推測しているのですが、本作のように興行にかけるほどの派手さはないが堅実に作られた良作というセグメントでは、質の高いものが含まれているように思います。
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