マッドネス_主人公の追い込まれ感が薄い【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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クライムサスペンス
クライムサスペンス

(2024年 アメリカ)
殺人容疑をかけられた主人公の逃亡劇に政治イデオロギーを織り込んだ意欲作ながら、どの構成要素も中途半端で盛り上がりに欠けた。加えて全8話構成という多すぎる話数が間延びの元となっており、あんまり面白くなかった。

感想

2024年11月に配信開始されたNetflixのミニシリーズを今さらながら見た。

CNNから番組MCの打診も受けているほどの著名な黒人評論家マンシー・ダニエルズ(コールマン・ドミンゴ)に、白人至上主義運動家殺害容疑がかかるというのが、ざっくりとしたあらすじ。

己の潔白を証明するため、追い込まれた主人公が真犯人探しをするという古典的なスタイルのサスペンスに、現代的なイデオロギー対立を織り込んだのが本作の特色と言える。

このユニークな題材に惹かれて鑑賞したのだが、結果はイマイチだった。

まずこのドラマでは「世論」が描かれていない。

せっかくイデオロギー対立を背景としたのだから、推定有罪から過剰な報復を叫ぶ白人至上主義グループと、「よくやったブラザー!俺たちのヒーローだ!」と勝手に盛り上がる黒人世論が描かれていることを期待したのだが、そんな要素は皆無だった。

主人公が真犯人前提で「支持する/しない」で世論形成されていき、そもそも彼が無罪である可能性を誰も疑わなくなる等の展開があれば面白かったと思うんだけどなぁ。

また中盤以降においてはグローバリストや資本家も絡んだ複雑な構図が浮かび上がり、白人至上主義運動家が実は悪くなかったんじゃないかという捻りも加わる。

そういえば、グローバリストの代表として描かれるジュリア・ジェイン(アリソン・ライト)というおばさん工作員が、元米国務次官ビクトリア・ヌーランドに似てると思ったのは私だけだろうか。

ジュリア・ジェイン(アリソン・ライト)
元米国務次官ビクトリア・ヌーランド

ビクトリア・ヌーランドは元外交官であり、ジョー・バイデン政権下では国務次官を務め、ウクライナ戦争の遠因を作った人物と見る評論家もいる。

彼女の背後にはネオコン勢力がいる。ネオコンを邦訳すると”新保守主義”であり、ブッシュJr.のブレーンとして対テロ戦争に深くかかわったことから、彼らは保守と見做されがちだが、実のところ、アメリカの伝統的な保守派との折り合いは良くないようだ。

アメリカの伝統的な保守とは孤立主義であり、それはドナルド・トランプがやっているような、我が国さえ栄えれば他の国がどうなろうが知ったこっちゃないというものである。

一方ネオコンはアメリカ流民主主義を全世界に広めるという明確なドグマを持っていて、そのためなら武力行使も厭わないという姿勢なので、むしろ民主党との相性が良い。第一次トランプ政権下で下野したヌーランドは、ジョー・バイデン政権下で返り咲いた。

閑話休題

グローバリストという黒幕を加えたことで、「白人も黒人も仲たがいしている場合ではない、アメリカはグローバリストたちによって食い物にされているんだ!」という興味深い構図が浮かび上がってきたんだけど、残念ながらその面白みをドラマに織り込めていない。

このドラマはイデオロギー対立を扱いながらも、それを描くことに対しては妙に及び腰なので何とも煮え切らない。それがドラマの中途半端さにつながっていると思う。

サスペンスとしても盛り上がらない。

著名人に殺人容疑がかけられたとなれば、常に衆人環視下に置かれて身動きが取れなくなるという制約条件を主人公に課すべきだと思うんだけど、マンシーは自由にプラプラ出歩けてしまうので、緊張感というものが皆無となっている。

また早い段階でFBIが協力者に転換するなど、全体的に追い込まれ感が薄い。『逃亡者』(1993年)のように主人公が一人で悪戦苦闘する様を見たかったかな。

加えて展開がゆっくり過ぎて間延びしている。あと2話はカットしてスピード感を持たせるべきだったのではないだろうか。

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