聲の形_動機がいろいろと説明不足【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2016年 日本)
原作未読。Netflixで鑑賞しましたが、過去にイジメた女の子への接触を図る主人公の心理状況が不可解だったので、ドラマに入り込めませんでした。また偶然性に頼った展開も散見されて、余計な疑問で集中力が途切れる映画でした。

真に迫ったいじめ描写

序盤のいじめの描写は見ているのが辛くなるほど真に迫った内容でした。

最初は転校生を歓迎するムードがあったが、慣れてくるとコミュニケーションを取りづらいことのめんどくささの方が勝るようになり、陰口や嫌がらせが常態化するようになる。

いじめの先導者がいて、先頭には立たないがその脇で加担する者がいて、冷静に状況を眺める能力はあってアリバイ作り的に一応注意はするが、真剣には止めに入らない者がいる。

このいじめの構図が何ともリアルであり、誰もが心当たりのある描写を突き付けてくるのです。

いじめに関わっているのは子供だけではない

そして、子供の世界にフォーカスしているようでいて、その背景として大人の世界もきちんと描いているという視野の広さも素晴らしいと感じました。

本読みの発音をクラス全体が笑いものにした時に、担任は確かに教室内の空気の異変を察知したが、特に注意したりもせずにやり過ごした。そして、それまでは奥ゆかしくやってきた子供たちは、これをゴーサインと読んでいじめを本格化させた。

いじめにおいて大きな分岐点になったこの一瞬の空気感を見事に切り取っているのです。この演出の凄さには恐れ入りました。

高校生パートは疑問符の連続

ただし、本作における本筋ともいえる高校生パートに入るとリアリティは一気に減退します。

いじめをしたガキ大将が落ちぶれたままスクールカーストの最下位にいたり、かつていじめた相手に会いに行こうとしたりと、ちょっと考えづらいことが多く起こってしまうのです。

いじめの記憶なんて誰にとっても不快なものなのに、なぜ彼らはかつていじめた子の周りに集まろうとするのか。その動機をまったく描けていないのです。

唯一リアリティを感じたのは、小学生時代には毎日行動を共にするほどの仲だったが、いじめの記憶がしこりとなって主人公とは二度と交わらなくなった親友2人のみでした。もし私が彼らの立場だったら、きっとそうすると思います。

また、死を考えるほど悩んでいるという前振りもなしに硝子が突然自殺を図った展開の突飛さや、彼女が飛び降りようとした現場に偶然将也が居合わせたというご都合主義など、話を前に進めたいが余り、なぜその人物はその行動をとったのか、なぜそこに居たのかというドラマの詰めが甘くなっている点も気になりました。

原作ではそのあたりはきちんと説明されているようなのですが、映画版では完全に不明な部分が出来てしまっており、これは映画化にあたっての大きな手落ちだったと言えます。

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