レプタイル-蜥蜴-_テンプレ通りのクライムサスペンス【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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クライムサスペンス
クライムサスペンス

(2023年 アメリカ)
ある殺人事件を捜査していると思いもよらぬ事実が浮かび上がってくるという、クライムサスペンスとしてはド定番のお話。主演のベニチオ・デル・トロは激シブだし、テンプレ通りの脚本なのでつまらなくはないけど、テンプレ通りゆえに驚きも少ない。

感想

ベニチオ・デル・トロのセルフプロデュース映画

ネトフリで配信されていたのを予備知識なく鑑賞。

アメリカの地方都市で不動産業を営むウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)の恋人であり、彼のビジネス上のパートナーでもあるサマーが何者かに殺され、地元の刑事トム(ベニチオ・デル・トロ)が捜査に乗り出すというのが、ざっくりとしたあらすじ。

サマーの元旦那(ブロンドの髪をコレクションすることが趣味というド変態)や、ウィルに家を奪われたと逆恨みする地元民など、怪しげな容疑者が何人も捜査線上にあがってくるが、いかにもすぎて、逆にこいつらはダミーであることが見え見えとなっている。

この辺りの観客の誘導は、あまりうまくいっていない様子。

トム刑事は捜査中にウィルを逆恨みする地元民を意図せず射殺してしまう。

容疑者を背後から撃ってしまうなど、通常なら根掘り葉掘り事情を問われるところだが、トムの上司たちは「でかしたぞ!トム」「勲章(しかも最高レベルの)に推薦しておくぞ!」と、こぞってトムに飴を与えたがる。

死人に口なし、死亡した容疑者にすべてをおっかぶせて事件を闇に葬りたいのだろう。トムはこの事件に対して薄々感じてきた違和感を決定的なものにする。

トム刑事はかつて警察内部の汚職事件に立ち会ったが、長いものに巻かれるでも、毅然として告発者側に立つでもなく、親類の伝手を頼ってこの地に逃げてきたという過去を持つ。

正義という軸を心の中に持ってはいるのだが、その行使を躊躇する臆病な男役に、寡黙なベニチオ・デル・トロがハマっている。辛気臭い顔をさせれば、デル・トロの右に出る者はいない。

デル・トロの本作への入れ込みようは相当なもので、主演のみならず製作・共同脚本までを担当している。自分自身に似合った役柄を自ら徹底追及したのだろうが、デル・トロのセルフプロデュースは驚くほどうまくいってくる。

デル・トロを見る映画と考えれば、本作はほぼ完ぺきだと言える。

オチはテンプレ通り ※ネタバレあり

ただし根本にある謎解きがどうにも面白くない。

ネタを明かすと、異常殺人でも怨恨でもなく、地域ぐるみの根深い不正にウィルはどっぷりと浸かっており、その暴露に走ろうとした恋人を殺害したのだ。

地域の因習が絡んだ殺人事件と言えば『L.A.コンフィデンシャル』や『TRUE DETECTIVE』などクライム・サスペンスの王道で、見ている側としてはまったく驚きがなかった。

また先述した作品たちは、地域性というものが事件に色濃く影響を及ぼすことで独特の味わいを見せるのだが、本作の場合は「地域」というもう一人の主人公が全然表に出てこないので、味気なく感じられた。

ちなみにタイトルの「レプタイル」とは爬虫類を意味し、トカゲの尻尾切りでこの殺人事件を喩えたのだろう。

ただしトカゲの尻尾切りで愛する恋人を殺さざるを得なくなったウィルの葛藤は全然足りていなかったが。

良い歳をしてウィルは母親の意に沿った行動をしており、内心では恋人を殺したくなかったのに、母親に命じられて渋々殺害を実行したという背景が透けて見えてくる。

身も心も母親に乗っ取られたマザコン殺人鬼と言われて真っ先に思い浮かぶのは『サイコ』(1960年)のノーマン・ベイツで、イケメン俳優を起用するというキャスティングも似通っている。

ただし本作のウィルはノーマン・ベイツほどの味のある殺人者となっていない。そのことがまた、本作の味気なさを際立たせている。

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