ポーラー 狙われた暗殺者【8点/10点満点中_シブすぎるマッツと派手すぎるアクション】(ネタバレあり感想)

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(2019年 アメリカ、ドイツ)
暗殺組織の経営者・プルートは、定年退職後の年金給付を約束する雇用契約を暗殺者達と結んでいたが、組織の資産価値を高めるために年金支給対象者を殺害することにする。その殺害リストには、ブラックカイザーと呼ばれる凄腕暗殺者・ダンカンも含まれていた。

©Netflix

8点/10点満点中 ひたすらかっこいい

Netflixの2019年一発目の注目作

先日ノミネート作品が発表されたアカデミー賞では『ROMA/ローマ』が作品賞を含む最多ノミネートとますます絶好調のNetflixが放つ2019年一発目の注目作ということで、配信が開始された1月25日に鑑賞しました。

とはいえ、昨年末にNetflixが力を入れて宣伝した『バードボックス』が個人的に微妙で、Netflixオリジナル作品の品質が一定ではないことは相変わらずだし、Rotten Tomatoesでの批評家支持率が12%と批評家受けは最悪。不安要素も多分にあり、期待半分・不安半分という心境での鑑賞だったのですが、幸いなことに本作は良作でした。これに文句を付けた批評家達は、グラフィックノーベル原作の映画に一体何を求めていたんだって感じです。

ユニークだが一部破綻した世界観

舞台は、暗殺業という業界がほぼ確立された世界。
この世界で暗殺はビジネスなので人が殺されても警察は動かないし、暗殺者が仕事について話しても周囲の人たちはドン引きしません。それどころか「貴重な体験をなさってるんですね。子供達の前でも話してもらえませんか」なんて言われるくらいです。

ビジネスとして確立されているだけに労使関係もきっちりとしており、暗殺者には50歳という定年が定められた上で、引退後には退職金も支払われるという設定が置かれています。そんな中で、ダモクレスという暗殺団は組織のM&Aが迫っていることから企業価値を高める必要があり、高額な退職金の支払いが迫っているベテラン暗殺者を若い暗殺者に始末させようとしています。

この世界観や組織の動機には独創性があったものの、同時に、一部の設定は破綻しているように感じました。退職金を負担したくないから先輩を殺せと言ってくる組織の言うことを聞く若い暗殺者達なんて、巡り巡って自分達が年老いた時に同じ扱いを受けるという当然の危惧などを抱かないのかとちょっと不自然に感じました。

主にMTVを手掛ける監督の演出が炸裂

監督のヨナス・アカーランドはデニス・クエイド主演のサスペンスホラー『ホースメン』なども過去に手掛けているものの、本職はMTV監督です。MTV業界ではトップクラスの評価を誇っているようで、ビヨンセ、ポール・マッカートニー、マドンナ、メタリカ、U2などトップアーティストのミュージック・ビデオを数多く手掛けています。

本作においては、”September”をバックに若い暗殺団がジョニー・ノックスビル演じるベテラン暗殺者を襲撃する冒頭から音楽と映像が過剰に主張したMTV風の演出が炸裂します。
若い暗殺団がポップでカラフルな色合いで演出されているのに対して、主人公のベテラン暗殺者・ダンカンは雪景色を背景に黒い衣装のモノトーンという分かりやすい対比のさせ方にも、一目でイメージを伝えねばならないMTV監督らしさが表れていました。

実は、これら主張しすぎな演出に私は最初ちょっと引いてしまいました。若い暗殺団の活動が中心に描かれる前半パートは、作り手が意図したほど楽しくはなっていないような気がしたし。ただしダンカンのモノトーンな世界がメインとなる後半は悶絶級のかっこよさであり、このパートを引き立てたいがために、あえて前半をつまらなくしたのかなと思ったほどです。なのでこれから本作を鑑賞される方は、前半が合わないと感じてもしばらく我慢して見続けてください。

また、前述した一部で破綻した世界観についてもこの過剰な演出のおかげでうまく誤魔化せており、監督としても真面目に演出できない素材であると割り切った上で遊んでいるような印象を受けました。

マッツ・ミケルセンが良すぎる

物凄い色気・物凄い殺気

これまでも脱ぐ役柄の多かったマッツが本作でも脱ぎまくりなのですが、1965年生まれの53歳とは思えないほど体格が良く、かといって「この役のためだけに鍛えてきました」みたいな超期間限定のムキムキボディというわけでもなく(例:『アメリカン・ヒストリーX』のエドワード・ノートン、『スパイダーマン』のトビー・マグワイア)、本当に使っている筋肉に見えているという点が役柄に説得力を与えていました。この辺りは、もともとプロのダンサーをしており、今でもスポーツ全般を嗜むおかげで体の基礎がしっかりとできているマッツならではの強みでしょうか。

また、イケメンというわけではないものの、歳を重ねるほどにどんどん味が出ているマッツの色気がえらいことになっています。男の私でもメロメロでしたよ。加えて、基本的にこの人は黒い服しか似合わないのですが(画像検索してみると、プライベートでも演技でも黒い服ばかりです)、それが本作のダンカン(コードネームはブラック・カイザー)のカラーと一致している点でも優位性が発揮されています。黒服の似合う色気タップリの50代。いろんな意味で危険な香りしかしませんね。

そんなわけで、放つ殺気も凄いことになっています。終盤では、人数で勝るプロの傭兵達がダンカンの姿を見るだけで怯むという場面が二度ほどあるのですが、確かにそれくらいの殺気を放っていました。任侠映画での高倉健レベルですよ。絶対に勝てないと確信させるレベルの殺気。雑貨屋のおばちゃんなんて、よく平気でダンカンに話しかけられるなと思いながら見ましたから。

荒唐無稽なアクションもマッツなら気にならない

セックス中に5名の暗殺者からの襲撃を受けても相手を返り討ちに遭わせる。特に、吹雪で視界も足場も悪い中、全裸で数百メートルの距離をあっという間に移動して相手スナイパーを仕留めるというくだりには、さすがに移動時間早すぎやしないかとか、スナイパーの位置をどうやって突き止めたんだよとか後々考えるといろんな疑問が浮かんだものの、演じるマッツの説得力で鑑賞中には特に気になりませんでした。

また拷問に遭わされた後に僅かな糸口から脱出の機会を得てその場にいた傭兵軍団を返り討ちに遭わせるというくだりについても、3日間も責められて体力の残っていないあの状況ではさすがに立ち回りが派手すぎやしないかと思ったものの、やはり鑑賞中には気にならないのです。

本作におけるマッツの威光には凄まじいものがありました。

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Polar
監督:ヨナス・アカーランド
製作:ロバート・クルツァー、ジェレミー・ボルト、ハートリー・ゴーレンスタイン
製作総指揮:マーティン・モスコウィック
出演:マッツ・ミケルセン、バネッサ・ハジェンズ、キャサリン・ウィニック、マット・ルーカス、リチャード・ドレイファス、ジョニー・ノックスビル
配給:Netflix
公開:2019年1月25日
製作国:アメリカ・ドイツ

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