アリータ: バトル・エンジェル【7点/10点満点中_後半の爆発力が凄い】(ネタバレあり感想)

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(2019年 アメリカ)
サイバネ医師のイドはクズ鉄の山から少女サイボーグの頭部を発見し、ボディを取り付けてアリータと名付けられた。アリータは過去の記憶を失っていたが、賞金稼ぎに立ち向かった際に、格闘術と兵士としての記憶があることに気付く。

7点/10点満点中 構成要素が多すぎて前半はつまらない


C)2018 Twentieth Century Fox
Film Corporatio

要注意物件の多いキャメロンプロデュース作品

本作のプロモーションでは「ジェームズ・キャメロン製作」を強く押し出されていますが、世界興収1位、2位を独占している監督業はともかく、プロデューサー業でのキャメロンの勝率はさほど高くありません。

  • ハートブルー
  • ストレンジ・デイズ/1999年12月31日
  • ソラリス(ジョージ・クルーニーのやつ)
  • サンクタム

『ハートブルー』なんて『ホット・ファズ-俺たちスーパーポリスメン!-』で大フィーチャーされたことがきっかけで、一周回って良い映画だったんじゃないかみたいな扱いになってきていますけど、典型的な詰めの甘い90年代アクション映画だったし、『ソラリス』『サンクタム』なんて見ていられないほどの駄作でしたよね。
そんな中で、本作は一体どうなんだろうかと、期待半分・不安半分で見て参りましたよ。

見応えのある3D映画

製作のジェームズ・キャメロンは『アバター』で3D映画のブームをもたらした張本人だし、監督のロバート・ロドリゲスはその『アバター』が大ヒットする以前から、キャメロンからの技術提供を受けつつ3Dの導入を積極的に行っており(2003年の『スパイ・キッズ3-D:ゲーム・オーバー』、2005年の『シャークボーイ&マグマガール 3-D』)、3D映画の先頭を走ってきた二人でした。

そんな二人が手掛けただけに、本作の3D技術は大きな見どころとなっています。私はIMAX 3Dで鑑賞したのですが、奥行きの表現により広大な世界観を構築したり、高さの表現により手に汗握る見せ場を作ったりと、3D技術はこう使うべきという理想的な映画となっていました。2D映像を変換しただけのお手軽3Dの多い昨今に、ここまで気合の入った3D映像にはとても嬉しくなりました。

詰め込み過ぎの脚本

アリータが自身のルーツを辿る物語、賞金稼ぎになる物語、モーターボール選手になる物語と、作品には3本の軸があり、さらにはヒューゴとのロマンス、イド夫婦の過去に係る物語、ノヴァの陰謀など、構成要素はすし詰め状態。なので前半は異常に駆け足で、深い感慨もなしにどんどん話が進んでいくので、せっかく作り込まれた世界観やキャラクターを味わう暇がなくて勿体ないと感じました。

賞金稼ぎの話とモーターボールの話がうまく馴染んでおらず、どちらかだけにしてしまった方が話の通りはよかったように思います。

強敵不在で緊張感に欠ける

ノヴァ/ベクターからの指令を受けて動く賞金稼ぎ達がアリータの直接的な敵となるのですが、街で一番の賞金稼ぎと言われるザパン、ベクターから惜しみなく強化パーツを提供されるグリュシカともに、アリータが前半で圧倒しており、てっきり彼らは雑魚なのかなと思って見ていました。しかし、最後まで敵はザパンとグリュシカのみなんですよね。

しかも、前半におけるアリータのボディはイドが娘のために作っていた少女向けのボディであり、そんな状態のアリータにすら、ザパンとグリュシカは勝てなかったわけです。後半にて本格的な戦闘仕様のボディを身に着けたアリータに彼らが勝てるはずがないことは明白であり、戦いは終始緊張感を欠いていました。

『北斗の拳』の序盤、シンが本格的に姿を現す前でどこへ行っても圧勝状態だったケンシロウを見ているような感じと言えば分かりやすいでしょうか。より分かりづらくなりましたか。

後半での畳みかけは素晴らしい

そんな感じで前半は良くなかったのですが、アリータが受けるローラーボールのトライアウト(=試験興行)に殺し屋が送り込まれたものの、衆人環視の中でアリータが殺し屋達を次々と返り討ちにあわせる本作最大の見せ場にはえらく興奮させられました。

卑怯な殺し屋達を素晴らしい身のこなしで捌くアリータと、これが公開処刑であることを知らずアリータのパフォーマンスに熱狂する観客達という構図には興奮させられたし、スピード感があるものの見辛くなる一歩手前で踏みとどまった素晴らしいアクション演出にも唸らされました。

その後も、試合場を飛び出して縦横無尽に繰り広げられるチェイスや、しつこい敵との決着と、数珠繋ぎにされた見せ場の物量と勢いには圧倒されました。さらに、アリータとヒューゴの関係を見て改心するチレンなど、ハイテンションなアクションの中にもちゃんとドラマを織り込んでいる辺りが、さすがキャメロンですね。

続編への期待を掻き立てられるラスト

結局のところ本作では何も解決せず、これが壮大な物語の幕開けに過ぎなかったことが判明します。真の敵はこのアイアンシティではなくザレムに居るのだが、現時点ではそのザレムの様子すら分かっていませんからね。

ザレムへの志半ばで命を失ったヒューゴの思いを背負って強く成長したアリータと、ついに素顔を晒したノヴァという対比からは今後の戦いへの期待を否応なしに掻き立てられたし、ノヴァがエドワード・ノートンだったというサプライズも効果的でした。脳みそだけになったチレンも今後絡んできそうだし、素晴らしい締めだったと思います。

製作の紆余曲折

1997年に『タイタニック』を大成功させた後、ジェームズ・キャメロンは3つの企画を抱えていました。『猿の惑星』『アバター』『バトル・エンジェル(本作の元となった企画)』です。

うち『猿の惑星』はもともとキャメロン自身の企画ではなく、主演予定だったアーノルド・シュワルツェネッガーから企画の相談を受けている内にプロダクションの中心人物になっていったという経緯があったことから、キャメロンは自分で監督する意思はありませんでした。そこでキャメロンが監督候補者として希望していたのがマイケル・ベイとロバート・ロドリゲスであり、ロドリゲスとの関係はその時期にまで遡れます。結局シュワルツェネッガー版『猿の惑星』は頓挫し、代わりにマーク・ウォルバーグ主演×ティム・バートン監督の『PLANET OF THE APES/猿の惑星』が製作されたのでした。

他方『アバター』と『バトル・エンジェル』は自分で撮るつもりであり、当初は『バトル・エンジェル』の方を優先していたのですが、完璧主義のキャメロンが自己のビジョンを100%実現できる映像技術の開発に時間をかけているうちに月日が流れ、『アバター』が先に製作されることとなりました。その『アバター』が史上最大のヒットとなったことからキャメロンはその続編にも関わらねばならなくなり、いよいよ『バトル・エンジェル』の目途は立たなくなったのでした。

そんな中、公式なコラボは一度もないものの人的な関係性は築いていたロドリゲスから「『バトル・エンジェル』はいつやるの?」と聞かれ、あまりに長大になり過ぎた脚本に困っていることを伝えると器用なロドリゲスがこれを2時間で収まるボリュームに詰めてみせたことから、この企画を嫁に出す決意をしたのでした。

こうしてここ20年の流れを並べてみると、頑固な完璧主義者のイメージのあるキャメロンって、意外と柔軟な人なのかなという気がします。友人の相談に乗っているうちに『猿の惑星』を任されるようになったり、「アバターの続編を作って欲しい」というフォックスの依頼を優先して本命の『バトル・エンジェル』を棚上げしたり、そんな大事な企画を友人に譲ったり。

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