(2026年 日本)
タレントはるな愛の伝記映画。良くも悪くも重苦しすぎず見やすい作品ではあるのだが、トランスジェンダーの生きづらさを扱う作品としてはツッコミ不足だし、はるな愛の成り上がり物語としては高揚感が足らなかった。要は中途半端。

感想
はるな愛の人間性を反映したかのようにカラっと明るい作風で、深刻になりそうな場面でも重くなりすぎず次の展開に移っていく。
最終的に成功を収めた人物なので、物語は常に前向きで見やすいのだが、そのことがトランスジェンダーの生きづらさというテーマにつながっていかないというもどかしさはある。
個人的にはツッコミ不足であまり面白みを感じなかった。
我々が知っている成功の裏側で抱えていた葛藤や、これまでオープンにしてこなかった裏話などがあれば面白かったのだけれど、そうしたものがほぼ描かれないのだ。
もしかすると、はるな愛を知らない海外の方が見れば面白いのかもしれない。
またはるな愛当人の人柄の良さが影響しているのか、”敵対者”の描写が不足している点も消化不良の原因になっている。
- 「男らしくせぇ」と言ってくる父親
- 「おかま」と言って彼女をいじめる同級生
- 「君にも原因がある」としていじめに対応してくれない教師
- 「あなたには子供を産めない」として別れを迫ってきた彼氏の実家
- 医師法違反で性転換手術を妨害する刑事
- トランスジェンダーをどう扱っていいのか分からなかった世間
人生の様々な局面で彼女を阻む”敵対者”は出現するのだが、なんだかんだ乗り越えていく。それがあまりにもアッサリしすぎているのだ。
いじめは言語道断にせよ、それ以外の人々には彼らなりの理屈がある。
例えば彼氏の実家は、はるな愛という存在を全否定するほどの酷いことを言ってきているのだが、とはいえ彼らは決して悪人ではなく、息子の幸せを願っている中で「あなたは相応しい相手ではない」ということを、慎重に言葉を選びながら伝えてくる。
そこに悪意がないからこそ辛い展開なのだが(思いっきり悪人であってくれた方が、言われる方は気が楽だろう)、でははるな愛が彼らの発言をどう受け止めたという深掘りもないまま、あっさりと彼氏とお別れする道を選択してしまう。
「こちらの理屈」と「あちらの理屈」を戦わせることで主題は深まっていくのだが、本作にはそうした考察がない。
また”陽の部分”、ミュージカル場面も中途半端だ。
あそこは彼女の心象風景を象徴しているのだから、ありえないほど華やかでファンタジックでなければならないだろう。
街中で数十人が歌い踊っているだけでは全然物足りない。
ドラマパートが弱いからこそ、ミュージカル部分には力を入れてほしかったのだが、そのパートも弱いとなれば、「本作の見せ場は一体どこにあったの?」となってしまう。
あとは、はるな愛は初見で女性と見分けがつかないほど容姿には恵まれていたのだが、では容姿に恵まれないトランスジェンダーはどうだったんだという点も気になった。
時代の空気までを描くのに130分では短すぎた。本来はリミテッドシリーズの枠でやるべき内容だったのだろう。

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