ブッシュ【7点/10点満点中_ブッシュ個人のドラマとしても政治劇としても面白い快作】

スポンサーリンク
スポンサーリンク

[2008年アメリカ]

7点/10点満点中

■愛に溢れたブッシュ批判

オリバー・ストーンは、政治的にはブッシュを毛嫌いする一方で、その履歴には共通点が多く(同い年で、出身大学も同じ。強い父親の支配に苦しんだ経験も共通している)、ブッシュに対して同情的な視点で本作が作られている点は興味深かったです。『ニクソン』もそうでしたが、ストーンは嫌いなタイプの政治家を題材としながらも、その人となりをリサーチするうちに憐れみの感情を持つようです。

■偉大すぎる父親は重荷でしかなかった

父親の敷いたレールに乗っているうちは何もかもがうまくいかず、ブッシュの人生が好転したのは父の影響下から離れて自力で道を切り拓くようになって以降でした。実業家としての成功も自力であれば、政治家転身の際にも父親からの支援は受けられず(優秀な弟のジェブが優先された)、その人柄の良さと目的達成意欲の強さでコツコツと地盤を作って合衆国のトップにまで登りつめた苦労人であり、偉大すぎる父親を持ったことは彼にとって重荷でしかありませんでした。

一方で内情を知らない第三者からは「親の七光り」だの「苦労知らずのボンボン」だのと言われ、そこを徹底的に攻撃されるという点が印象的でした。政治や外交について定見らしきものはなく、彼の政治活動は父親から認められようとする行為の延長だったようです。そこに、911が起こります。

■開戦の意思決定もブッシュ個人の物語に過ぎなかった

戦争に係る意思決定は象徴的で、従軍経験のある父ブッシュは、湾岸戦争で米兵の犠牲が最小限で済んだことを幸いとし、イラク軍からの激しい抵抗が予想されるバグダッド侵攻を見送って早々に撤退する決定をしましたが、一方ベトナム戦争時代に兵役逃れをした子ブッシュは、どれほどの犠牲が出るのかも考えずに開戦の決定をします。

父ブッシュとの繋がりが深いコリン・パウエルからは「911の弔い合戦なのに、なぜビン・ラディンではなくフセインと戦うのか」「フセイン政権を倒せばイラク国民に対する責任が生じるが、それを背負っていく覚悟はあるのか」と問われるが、それに対してブッシュは明確に答えられません。イラク戦争で犠牲になった米兵やイラク人には気の毒ですが、ブッシュ個人の物語として見れば、イラク戦争も父親を越えようとするイベントのひとつだったのです。

■向かない男が大統領になってしまったという悲喜劇

ブッシュ本人は悪人ではない、むしろ近くにいれば友人になりたくなるような人物ではあるが、あの激動の時期の大統領としては最悪の人物だった。人生で常に望まれない場所に居る人物の悲喜劇として、本作は非常に見ごたえがありました。

W.
監督:オリバー・ストーン
脚本:スタンリー・ワイザー
製作:ビル・ブロック,エリック・コペロフ,ポール・ハンソン,モリッツ・ボーマン,スタンリー・ワイザー
製作総指揮:アルバート・ヤン,トーマス・スターチ,エリオット・ファーワーダ,ジョニー・ホン,テレサ・チャン,トム・オルテンバーグ,クリストファー・マップ,デイヴィッド・ウィーリー,マシュー・ストリート,ピーター・グレイヴス
出演者:ジョシュ・ブローリン,エリザベス・バンクス
音楽:ポール・カンテロン
撮影:フェドン・パパマイケル
編集:ジョー・ハッシング,ジュリー・モンロー
配給:ライオンズゲート(アメリカ),角川映画(日本)
公開:2008年10月17日(アメリカ)2009年5月16日(日本)
上映時間:129分
製作国:アメリカ合衆国

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
記事が役立ったらクリック
ドラマ・コメディ
スポンサーリンク
言わんドラゴをフォローする
公認会計士の理屈っぽい映画レビュー

コメント