AKA_ゴリマッチョのスケバン刑事【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2023年 フランス)
殺人マシーンが子供との関係性で変わっていくというありがちな暴力映画だが、主人公のキャラ造形が良いので他作品との差別化はできている。この主人公の立ち回りもバイオレントで最高なんだけど、話を作りこみすぎで盛り上がっていかないことが難点だった。

感想

殺人マシーンが輝いている映画

殺人マシーンが犯罪組織への潜入捜査に従事するんだけど、人間的にいろいろと揺さぶられて、やがて組織目標を逸脱し始めるという、アクション映画としてはありがちと言えばありがちな映画。

ザ・ボディガード(2017年)_殺し屋はゴリゴリのヤク中【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)
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題材はありがちである以上、殺人マシーンの人物造形がカギと言えるが、本作の主人公アダム・フランコ(アルバン・ルノワール)はなかなか容赦がない。

冒頭、ジャーナリストを装ってリビアのテロ組織に潜入するアダム。

目的である女性ジャーナリストを発見するや、早速テロリスト達との戦闘を開始。たった一人でテロ組織を壊滅させるという『コマンドー』(1985年)もかくやという活躍を見せるが、そこにバカっぽさがないのが何気に凄い。

監督はカメラマン出身で、アルバン・ルノワールとは『ロストブレット』シリーズでも組んだモーガン・S・ダリベール。アクション演出では並々ならぬセンスを披露している。

豪快に敵を蹴散らしたアダムだが、なんと彼は残った女性ジャーナリストをも射殺する。救出ではなく口封じのために、はるばるリビアくんだりまでやってきたのだ。この冷酷非情ぶりに度肝を抜かれた。つかみは上々である。

続いての国内カットでは、冒頭では髭面でよく分からなかったアダムの顔が映し出されるのだが、これが街で出くわすと確実に目をそらすタイプの強面な見てくれで殺人マシーンとしての説得力十分。

また体格もごついのだが、これがブラピやトム・クルーズのような見せるための筋肉ではなく、適度に脂肪も乗った使うための筋肉って感じで、本当に喧嘩が強い奴の体つきをしている。

アダム・フランコのご尊顔。ザ・強面

アダムは政府の汚れ仕事を引き受ける特殊機関に所属しており、爆弾テロに手を焼いている大臣より、テロリストとの親交のある国内犯罪組織への潜入を命じられる。

組織への潜入自体はいとも簡単に成し遂げるのだが、どう見てもカタギではないこの見てくれが奏功したことは間違いない。

その後も、敵対組織との派手なケンカに勝って組織内での株を上げる等、ヤンキー漫画のノリで組織内をのし上がっていくアダム。かつて実弟を殺した変態議員に復讐したところを「君の才能を生かさないか」と闇の機関にスカウトされたという、スケバン刑事的な過去を持っていたことも判明する。

こうして振り返るとあまりに漫画的過ぎるキャラ造形ではあるのだが、演出のサジ加減が良くてリアルな暴力映画の主人公としてきちんと機能している。なかなか良いキャラではなかろうか。

ストーリーは混乱気味

このアダムがヤクザのボスの息子と親しくなり、やがて「殺すために戦う」から「守るために戦う」へと変貌していく過程が、本作のメインプロットとなる。

少年は妻の連れ子なのでヤクザのボスから目はかけられておらず、家庭での扱いは決して良くはない。しかも低身長が災いして学校ではいじめのターゲットになっており、なかなかしょっぱい立ち位置にいるのだが、それでも明るく生きる姿に、アダムも何事かを感じ取ったようだ。

いじめっ子を撃退する、トレーニンググッズをプレゼントする、喧嘩のしかたを教えるなど、気が付けば少年との距離が近づいていくアダム。

しかしテロリストとの関係も疑われる犯罪組織が実家なので、少年の身にも危険が及ぶに至り、そこでアダムは得意の殺人技を全開にすることとなる。

こうして書いてみるとなかなかアツイ筋書きではあるのだが、しかし残念なことに映画自体はさほどの熱を帯びていかない。

犯罪組織を通じてテロリストを探るという大目的以外に、ライバル組織との抗争があり、組織内での裏切りもありと、サブプロットが渋滞気味なのだ。

そもそも潜入捜査という一捻りがあるのに、その上にいくつもの展開を乗せすぎていて理解が追い付かず、感情移入が阻まれてしまう。

特に、少年の命か任務かを選ばねばならない局面において、主人公の葛藤が観客にうまく伝わらないという点は構成上の重大な落ち度だったと思う。

アダムのバックアップを務める2名の捜査官はなかなか良いキャラをしていたのだが、彼らを全く生かせていないばかりか、アダムとの関係性の説明がないので、しばらくは何者だかが分からないという点もどうかと思った。

個々の構成要素は良かっただけに、もっと素直に作ってくれれば見違えるほど面白くなったと思うんだけど。

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