(2022年 アメリカ)
ルッソ兄弟の最新作だが高尚さなどはゼロで、潤沢な資金と豪華なキャストを使ってB級アクションのブローアップ版を作ろうとしている。その企画意図は成功しており、頭空っぽにして見ればこの上なく楽しめるアクション大作として仕上がっている。
感想
高尚さゼロ!B級アクション超大作
- 『アベンジャーズ』シリーズで驚異の興行記録を樹立したルッソ兄弟の最新作!
- ライアン・ゴズリングとクリス・エヴァンスが対決!
- 製作費はネトフリ史上最高の2億ドル!
本作に並んだ怒涛の宣伝文句を見ると、スパイアクションの新境地を切り開くような意欲作を連想させられるが、いざ見てみると決してそんな作品ではないことに驚いた。
汚すぎる陰謀を知ったCIAの殺し屋が組織と反目し、大勢の殺し屋に追われる羽目になる。以上!
これが本作のあらすじであり、ストーリー自体はスタローンやヴァンダムが主演していても何ら不思議のないものである。
では一体何に力を入れているかというと、怒涛のアクションコラージュだ。
主人公が輸送機に乗れば墜落し、街のど真ん中で『ヒート』を上回る銃撃戦を繰り広げ、路面電車を巻き込むカーチェイスを行い、最後には古城を豪快に破壊と、これでもかと言うほどの見せ場が詰め込まれている。
ストーリーなんてものはアクションのつなぎでしかなく、見せ場の邪魔をしないよう極力シンプルにとどめられている。
あまりにもドラマツルギーなるものが存在しないためか、ロッテントマトにおける批評家レビューの結果は滅茶苦茶に悪いのだが、そんなの気にしない気にしない。
観客からの支持率は90%(2022/7/22閲覧)であり、一般客には圧倒的に受けているのだ。
かく言う私も、本作のアクションつるべ打ちには完全に魅了された。
主人公が行く先々でド派手な戦闘が起こり、欧州を戦場に変える。
話の筋なんてものは通っておらず、隠ぺいを目的としながらもっと大きな騒動を起こすなんて本末転倒とも思うわけだが、次第にそんな野暮なことも気にならなくなるほどの勢いと物量で、中盤以降は満ち足りた気持ちになってきた。
ラストでは『ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌』(1992年)ばりの武士道精神あふれる殺し屋が現れるんだが、定番ながらこちらも燃えた。
そしてマイケル・ベイもかくやというほどのおかしなカメラワークで監督が無駄に自己主張してくる辺りも微笑ましい。
なんだかんだとうるさそうなディズニーとの仕事で溜まっていたものを吐き出すかの如く、ルッソ兄弟が好き放題やっているのである。
今年見た『アンビュランス』(2022年)もそうだったが、才能ある監督が自分のやりたいことに特化して生み出した映画には特有の味がある。
彼らの実績を考えるとすべてを計算ずくでやっていることは明らかであり、映画としての完成度を落としてでも好きなもの・面白いものを優先するという、その遊び心が楽しくなってくるのだ。
本作を腐している評論家は、マクドナルドに向かって「栄養がない」「ジャンク」「体に悪い」と言っているようなもの。
作り手側はそんなことなんぞ百も承知でジャンクフードを作っており、観客側も真剣には見ないというのが、この手の映画に対する作法だろう。
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