(2017年 アメリカ・スペイン・ドイツ)
B級映画かと思いきや、かつてハリウッドの第一線で活躍していたメンバーが集合した作品なので、作りはかなり堅牢だった。迫力のある見せ場や意外性のある物語でなかなか楽しませてくれるし、上映時間はコンパクトだし、こういう映画もたまには良い。
感想
コンパクトでウェルメイドなB級アクション
Amazonプライムの新作欄で偶然見かけ、90分程度と短めの上映時間も丁度良かったので鑑賞。
一番ダメだった頃のスタローンが主演したやつとか、千葉真一のドラマとか、松方弘樹のV シネとか、ロシア映画とか、『ザ・ボディガード』という作品はいろいろあって紛らわしいんだけど、それだけ投げやりに付けられた邦題ってことでもあるので、本作のレベルは何となく見えてくる。
何が驚いたって、最後まで見てもボディガードという職業の人は一切出てこないこと笑
担当者はロクに本編も見ずに邦題を付けたのだろう。
ちなみに原題は”The Hunter’s Prayer”で、ハンターの祈りみたいな意味。ボディガードなんて一言も申しておりません。
そんなわけで投げやりな扱いが悲しくなってくる本作だが、監督は『U-571』(2000年)のジョナサン・モストウ、主演は『アバター』(2009年)のサム・ワーシントンで、かつてハリウッドの第一線にいた人たちが関わっている。
なおモストウは『ターミネーター3』(2003年)を監督し、ワーシントンは『ターミネーター4』(2008年)に主演。そして脚本を書いたジョン・ブランカトー&マイケル・フェリスはターミネーター3と4の両方に関わっているので、本作はターミネーターつながりの作品でもある。
そして少女役は一時期ハリウッドで期待されていたらしいオデイア・ラッシュで、主演作『ギヴァー 記憶を注ぐ者』(2014年)ではジェフ・ブリッジスやメリル・ストリープといった大物と共演した。
とまぁ投げやりな邦題からは想像もつかないほど豪華なメンバーが関わっていることには見始めてから気づいたのだが、確かにそこいらのB級アクションとは一線を画すものがあった。
重厚なアクションを得意としたジョナサン・モストウの手腕はいまだ健在で、アクションの質はなかなかのものだし、バカでかい効果音を好んできたモストウらしく、音の演出にも迫力があった。
アクション映画を見たという満足感はそれなりに味わえるのだ。
90分程度というコンパクトな上映時間もあって、期待しなければそれなりに楽しめる小品となっている。
かつてハリウッド大作を背負ってきたメンバーがこういうのに関わっているということに悲しくもなってくるが。
ヤク中の殺し屋というありそうでなかった設定
内容は至ってシンプルで、殺し屋が少女の殺害を依頼されるのだが、自分の娘と重ね合わせたために殺すことができず、守る側に回るというもの。
ターゲットに情が移った殺し屋というありふれたストーリーではあるのだが、本作の目玉は細かい部分での意外性や裏切りの連続にあるので、軸となるストーリーはあえて紋切り型に徹しているのだろう。
まだ主人公ルーカス(サム・ワーシントン)がどういう奴か分からない序盤で、彼の車には注射器が散乱しているという場面が挿入される。
ヤク中と見せかけて、実は糖尿病を患っていました的な展開を辿るのだろうと推測するところなのだが、ルーカスは本当にヤク中なので驚いた。場面によっては呂律が回っていなかったりする。
映画に出てくる殺し屋といえばジェイソン・ボーンとかレオンとか、職人的なこだわりとストイックさの中で生きている者が相場で、そういう連中は感覚を鈍らせる麻薬とかアルコールの類には手を出さないのだが、一方ルーカスには自分に課した掟のようなものは一切ない。
その家は綾波レイの部屋なんぞ比較にならないほどとっ散らかっており、殺しの腕前以外には何の取柄もないということが分かる。この殺し屋像は斬新だった。
また中盤ではルーカスが信頼を置くダニー(ヴェロニカ・エチェーギ)という友人が登場する。殺し屋は付き合う相手を厳選しており、ピンチの場面で呼び寄せるくらいなのだからダニーは本当に信頼できる奴かと思いきや、こいつが金目的で平気で裏切ったりする。そしてルーカスは友人相手でも躊躇せず反撃する。
これもまた王道の展開の裏を行っているので驚いた。
またルーカスの暴れ方もすごい。
殺し屋とくれば闇に紛れて活動する者という予断があるのだが、ルーカスは人が大勢いる公の場であってもバンバン銃を撃つ。
序盤でのナイトクラブの銃撃戦には『ターミネーター』第一作へのオマージュも感じたんだけど、「まさかここで発砲するとは」という意外性が楽しかった。
ちなみに脚本を書いたジョン・ブランカトー&マイケル・フェリスはデヴィッド・フィンチャー監督の『ゲーム』(1997年)も執筆しており、観客を騙すスキルには定評がある。
こういうウマい人たちが関わったことで、本作にはB級映画らしからぬ面白さが宿っていたと思う。過大な期待な禁物だが、B級アクションの枠は軽く超える佳作だったと思う。
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