ドーン・オブ・ザ・デッド_年寄りにチェーンソーは危険【7点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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終末

(2004年 アメリカ)
ザック・スナイダーのビジュアル意匠が炸裂した見せ場は素晴らしく、アクション映画として破格の完成度を誇っています。しかしロメロゾンビにあった緩急のバランスは失われたし、人間側の阿呆な行動も目立つため、完璧な出来でもありません。

作品解説

若いメンバーが挑むクラシックのリメイク

1978年に公開されたジョージ・A・ロメロ監督の『ゾンビ』(1978年)は瞬く間に人気を獲得し、世界中で亜流作品を生み出しました。その後数十年経ってもその影響力は衰えず、ホラー映画のクラシックとしての地位を確立したのでした。

こうして聖典の域に達した『ゾンビ』(1978年)のリメイクは失敗の可能性の方が高い難プロジェクトでしたが、それに挑んだのは2002年に設立されたばかりの製作会社ストライク・エンターテイメントでした。

彼らが脚本家として雇ったのはジェームズ・ガンで、今でこそ『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』の監督として有名ですが、当時はまだ30代で一般的な知名度のない脚本家でした。

キャリア初期にはトロマ・エンターテイメントでZ級映画を製作しており、本作製作時点での代表作は『スクービー・ドゥ』(2002年)の脚色作業だったことから、『ゾンビ』の脚本を書けるのかとホラーファンはその手腕にかなり懐疑的でした。

そして監督として雇われたのはザック・スナイダー。本作製作時点では30代前半であり、CF界では輝かしい実績を持っていたものの、長編映画は未経験でした。

フレッシュな人材に撮らせたいという方向性が明確に打ち出された企画だったというわけです。

興行的成功

本作は2004年3月19日に全米公開され、特大ヒット中だったメル・ギブソン監督の『パッション』(2004年)を抑えて初登場1位を獲得。

全米トータルグロスは5902万ドル、全世界トータルグロスは1億227万ドルで、製作費2600万ドルの中規模作品としては十分満足できる作品となりました。

続編の企画と消滅

この成功を受け、当然のことながら続編の企画が立てられました。

タイトルは『アーミー・オブ・ザ・デッド』。

2007年に製作が発表された同作はユニバーサルとワーナーの共同制作であり、監督にはオランダのCF監督マティス・ヴァン・ヘイニンゲン・ジュニアが抜擢されました。

しかし企画は遅々として進まず、マティス・ヴァン・ヘイニンゲン・ジュニアは同じく名作ホラー映画のリブート『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(2011年)の監督に就任しました。

その後も開発地獄状態だったのですが、2019年にザック・スナイダー監督が企画に加わり、ワーナーからNetflixへと引き継がれたことで軌道に乗りました。こうして作られたのがザック・スナイダー監督の『アーミー・オブ・ザ・デッド』(2021年)です。

ただし続編という方向性は改められてスタンドアローンの作品となり、本作の続編企画は消滅したということになります。

感想

しちめんどくさい説明を回避した超絶脚本

開祖『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)を除くすべてのゾンビ映画の課題とは、しちめんどくさい説明部分をどうやって手短に終わらせるかでしょう。

ゾンビの基本原則【死者が復活・生きた人間を食べる・噛まれるとゾンビ化】、劇中の登場人物達はこれを知らないはずので、彼らがこのルールを発見するというプロセスを入れないと話が成立しなくなるります。

他方、これは観客にとっては重々承知の原則であるため、「もう知っとるわい!」と思っていることを導入部で描かねばならないというめんどくささも存在しています。

これがゾンビ映画に共通する課題なのですが、本作では「騒動の発端部分で主人公が寝ていた」という壮絶な端折り方をすることで、劇中の登場人物達が基本原則を発見するというプロセスを省いています。

この脚色の妙には感激しました。ジェームズ・ガンは相変わらず良い仕事をしてくれます。

湿っぽいドラマがない!

あと、失った人命に思いを馳せるみたいな、ゾンビ映画にビタ一文求められていないドラマ要素を完全に排除したことも良かったですね。

序盤にて主人公のサラ・ポーリーは夫を失います。直前の日常描写から夫婦仲は良かったと思われるのですが、それでも亡くした夫を思ってさめざめと泣くような余計な展開がなく、自己の生存に邁進する辺りが最高でした。

他の生存者達も同じくです。皆、いろんなものを失ってショッピングモールに流れ着いてきたはずなのに、センチメンタルなことを言い出す人間がいないので見ていてストレスがありませんでした。

怒涛のアクション大作

上記の情報処理方法が象徴的なのですが、本作は世界観をじっくり描くような作品ではなく、怒涛のアクションでストーリーを紡ぐ一大娯楽作として構築されています。

従来はノロノロと動いていたゾンビはアスリートのような美しいフォームで全力疾走するようになり、生存者達のサバイバルはより厳しくなりました。

実は、走るゾンビはダン・オバノン監督の『バタリアン』(1985年)の時点から登場していたのですが、後続作品への影響力を持っていたのは本作でした。

で、ゾンビが全力疾走してくるものだから人間側も手加減一切なし。ゾンビに向けて銃弾の雨を降らせ、武装トレーラーでゾンビを轢き殺し、それでも進退窮まればガス爆発でまとめて処理して突破口を作るなど、戦い方は超ド派手になっています。

この見せ場を作り上げたのはザック・スナイダー監督。DCエクステンデッドユニバースの総帥を務めるなど映画人として確固たる地位を築いていますが、本作製作時点ではCF界から映画界に殴り込みをかけた新人監督であり、その手腕は未知数でした。

『ゾンビ』(1978年)のリメイクに新人監督抜擢というニュースにネガティブな反応があったことも記憶しています。

しかしスナイダーは新人離れした堂々たる手腕でやりきりました。

ロメロの作り上げたゾンビ像に微塵も引っ張られることなく独自のビジュアルを構築する。新人監督がこれだけやれるのは凄いことだと思います。

自分の仕事に置き換えてみればわかりますが、先人の偉大なワークを無視して自己のビジョンを通し、成果物だけで反対派を納得させるなんて並大抵のことではありません。

映画に緩急がなくなった

ただしタイトなアクション映画化したことでの弊害もチラホラ。

一人一人は大した脅威ではないのだが、気が付けば大勢に取り囲まれていてピンチという従来のノロノロゾンビ特有の恐怖は失われ、一般的なモンスター映画と大差のない見せ場が続きます。これならゾンビでなくてもいいのではないかと思ってしまうわけです。

またショッピングモールは楽しいところで、無人の店内で商品を好きにできるという『ゾンビ』(1978年)にあった終末世界ならではの醍醐味も随分と減衰しています。

ロメロのゾンビ映画には緩急があって、ゾンビとの戦いのみではないところに良さがあったのですが、本作はゾンビ戦争一本槍なので、映画としての幅は狭まったように感じます。

ただしこれは好みの問題なので、緩急がなくなったから映画として劣っているということでもありませんが。

最後はほぼ人災

登場人物達はゾンビ達を欺いてショッピングモールに生活圏を確立するのですが、なぜか「このままじゃジリ貧なのでモールを抜け出し、ヨットで無人島に行こう」というプランが持ち上がります。

今の生活が安泰に見えるのに、なぜ物資に恵まれた要塞を捨てるというリスクを冒すのか。なぜ無人島に渡れば安全が保障されると思うのか。この辺りの説明が足らないので、要らんことのために精出し始めたようにしか見えませんでした。

で、モールの向かいのガンショップ店主は戦闘力が高そうなのでぜひ計画に参加させたいのだが、あちらは物資が不足しているので店主は衰弱気味。そこで犬を使って食料をガンショップに運ぼうとします。

「ゾンビは犬に無関心だから大丈夫」と言う男連中に対し、「私のワンちゃんに危険なことをさせないで!」と抗議するギャル。

そんなギャルの意見は無視されて犬のウーバーイーツは実行に移されるのですが、男連中の読みは当たって犬はガンショップにまで辿り着きます。しかし店主のチョンボで犬と一緒にゾンビも店内に入ってしまい、そこで命運尽きる店主。

一部始終を見ていたギャルは「私のワンちゃんが大変!」と言って愛犬を救いに車を走らせるのですが、彼女はゾンビが犬に関心を示さなかった光景を見ていなかったんでしょうか?

また、戦闘力最弱のギャルが行ったところでゾンビの大群をどうにかできるはずもなく、この人の行為は無駄以外の何物でもないわけです。そして、

  • 案の定ピンチに陥るギャル
  • 男連中がギャルを助けに行く
  • モールにもゾンビ達が侵入する隙を作ってしまい生活圏崩壊
  • そのまま脱出作戦にシフト

という無惨な連鎖反応が起こります。私は阿呆な人間が阿呆なことをしでかした結果ピンチに陥るドラマを見ることが本当に苦手なのですが、本作のギャルはまさにそのパターンだったのでストレスが溜まりました。

こうしてなし崩し的に始まった脱出作戦ですが、とりあえずうまくいって一行はゾンビの大群の囲いを破り、大通りに出ることには成功します。

しかし一難去った後にも関わらず車を爆走させ続けるものだから、豪快に横転してピンチ再来。しかも「わしに任せとけ!」と言ってじじいが握ったチェーンソーが豪快に仲間を切りつけるという事故も発生します。

「年寄りにチェーンソー」は私の中では格言です。

そんな感じで最後はほぼ人災だったので、見ていて辛かったです。見せ場の出来は相変わらず良かっただけに、もうちょっと熟慮のある行動であれば文句なかったのですが。

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公認会計士の理屈っぽい映画レビュー

コメント

  1. […] 次に雇われたのが『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2003年)のザック・スナイダーで、ジャック・ブラックのコメディからザック・スナイダーの写実路線ってどんな振れ幅だよという感じですが、結局実現しませんでした。 […]