アーミー・オブ・ザ・デッド_身勝手なキャラにストレス【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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終末

(2021年 アメリカ)
稀代のビジュアリスト ザック・スナイダーによるビジュアルは素晴らしく、ラスベガスは地獄の戦場と化します。戦闘は派手で大規模で楽しいのですが、キャラクターの動かし方に難があるために面白い映画にはなりえていませんでした。

作品解説

『ドーン・オブ・ザ・デッド』のザック・スナイダーが監督・脚本・撮影

本作の監督はザック・スナイダー。DCエクステンデッドユニバースを主導していたクリエイターであり、最近では『ジャスティス・リーグ: ザック・スナイダーカット』(2021年)も話題になっています。

1966年カリフォルニア出身。名門アート・センター・カレッジ・オブ・デザイン卒業後にミュージック・ビデオやCMのディレクターとして数多くの賞を受賞。その勢いで映画界に進出し、『ドーン・オブ・ザ・デッド』(2004年)で映画監督デビューを果たしました。

今でこそ良作として認識されている『ドーン・オブ~』ですが、名作『ゾンビ』(1978年)のリメイクということもあって製作時点では「いらんものを作るな」という空気が支配的だったと記憶しています。

そんな強いプレッシャーを受けつつも新人監督スナイダーは圧倒的な絵力で作品をまとめあげ、誰もが失敗すると考えていた名作『ゾンビ』(2004年)のリメイクを成功させたのでした。

開発に14年かかった映画

そんなわけで『ドーン・オブ・ザ・デッド』が全世界で1億ドル以上稼いだので、当然のことながら続編の企画が立てられました。

タイトルは『アーミー・オブ・ザ・デッド』。本作の源流となる企画です。

2007年に製作が発表された同作はユニバーサルとワーナーの共同制作であり、監督にはオランダのCF監督マティス・ヴァン・ヘイニンゲン・ジュニアが抜擢されました。

しかし企画は遅々として進まず、マティス・ヴァン・ヘイニンゲン・ジュニアは同じく名作ホラー映画のリブート『遊星からの物体X ファーストコンタクト』(2011年)の監督に就任しました。

その後も開発地獄状態だったのですが、2019年にザック・スナイダー監督が企画に加わり、ワーナーからNetflixへと引き継がれたことで軌道に乗りました。

なお当初は続編企画としてのスタートでしたが、完成した作品は『ドーン・オブ~』とは無関係な内容となっています。

本作の前日譚を描く『Army of Thieves』やアニメシリーズ『Army of the Dead: Lost Vegas』の配信も予定されており、一大ゾンビユニバースが誕生するかもしれません。

ちなみに『ドーン・オブ~』の脚本を書いたのはジェームズ・ガンであり、後に彼は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(2014年)を大ヒットさせます。そして本作の主演デイヴ・バウティスタは元プロレスラーで、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のドラックス役が俳優としての代表作です。

本作にジェームズ・ガンがどの程度関与したのかは分からないのですが、何かしらの交流はあったような気がします。

感想

『ゴースト・オブ・マーズ』×『エイリアン2』

「死者の軍隊」を意味するタイトルが示す通り、本作のゾンビたちはある程度の知能を持ち、強力なリーダーの元で組織化されています。

予告編でその様子を見た時にはジョン・カーペンター監督の『ゴースト・オブ・マーズ』(2001年)っぽいなと思ったのですが、本編の印象もおおむねその通りでした。

そんな死者の軍隊に挑むのは一癖も二癖もある元軍人や犯罪者スレスレの者達。彼らのキャラ立ちと言い、ゾンビに向けてバリバリと発砲する様と言い、ジェームズ・キャメロン監督の『エイリアン2』(1986年)を見ているようでした。

ゾンビとの初戦。スリープ状態にあるゾンビの群れの間をすり抜けようとするが、うまくいかず戦闘状態になる場面などは『エイリアン2』の大気処理施設での戦闘そのものでした。

ザック・スナイダーは影響を受けた監督としてジェームズ・キャメロンの名を挙げていることからも、その影響は濃厚であると考えられます。

その他にも、仲間内における卑劣漢の存在や、進退窮まったメンバーが仲間たちを救うため手りゅう弾で自爆する場面など、『エイリアン2』を想起させる場面が多数あります。「この場面はそうじゃないか」と思いながら見ると盛り上がれるかも。

ザック・スナイダーの怒涛のビジュアル

そんなわけで僕たちの大好きなものが詰め込まれた作品なのですが、さらに嬉しいことにはザック・スナイダーのビジュアルセンスはカーペンターやキャメロンを凌いでいるということです。

その戦闘場面はもうキメッキメであり、アクションのカッコよさには溜まらないものがありました。

本作の登場人物は銃の名手ばかりなのかゾンビにやたらと弾を命中させます。しかもほとんどがヘッドショット。FPSをやられる方ならわかりますが、ヘッドショットを決めると気持ちいいんですよね。バシバシとゾンビにヘッドショットを決めていくので、もうそれだけで見ている側のテンションも上がっていきます。

ひとつ残念だったのは電動丸ノコが活躍しなかったことで、出撃前、キャラクターの一人が電動丸ノコを持っていたのでいざと言う時にはこれが炸裂するのかと思いきや、最後まで全員が銃で戦うのでアクションのバリエーションは広がっていませんでした。

ホラー映画においてチェーンソーや電動丸ノコは大事なアイテムなので、積極的に活用していただきたいところでした。

人間ドラマが未消化

問題を感じたのは人間ドラマの部分。

真田広之からラスベガスの金庫に眠る2億ドルを回収してこいと命じられた元軍人スコット・ウォード(デイヴ・バウティスタ)が昔の仲間を集め、また使えそうな新人をリクルートしてチームを結成します。

で、スコットと昔の仲間たちとの間には浅からぬ因縁があるようなのですが、具体的に何があったのかが明確に説明されないまま本編がスタートするので、いまいちドラマにのめり込めませんでした。

この辺りは前日譚『Army of Thieves』で描かれるのかもしれませんが、その後のユニバースの存在を前提として映画単独でドラマを成立させないというのは、作品の在り方としてどうかと思います。

『スターウォーズEPⅣ』のようにサーガの中間地点から始まった作品で成功作もありますが、それだって一本の映画として成立する形にはしていたわけです。

ザック・スナイダー監督は『バットマンVSスーパーマン』(2016年)も同様の構成にして批判を受けたのに(あとで『ザ・バットマン』を作りますからという不親切な内容にしていた)、また同じ失敗をするのはどうかと思います。

メンバーの身勝手な行動がストレス

また、ラスベガスに入った後のチームの足並みが揃っていないことも問題でした。

真田広之の直属の部下の男が実は別命を帯びており、チームの壊し屋のポジションとなります。で、ほとんどの厄介事はこいつが引き起こすのですが、いくら何でも不合理な動きが多すぎて冷めました。

いかにこいつが卑劣漢で、チームを利用する気満々でいても、戦場に入ってしまえばかなりの部分で他のメンバーたちと利害は共有するわけです。

すなわち、自分の目的を遂行したいのであれば他のメンバーと持ちつ持たれつでやることこそが最良なのに、チームを壊してわが身をも危険にさらすようなおかしな動きが多いので困ったものです。

いかに腹に一物抱えていても、圧倒的な脅威の前では敵とも共闘するという『ザ・グリード』主義を徹底して欲しいものでした。

勝手な行動の多い主人公の娘も同じく。

彼女は非戦闘員なのですが、直前に危険区域に入ってしまった友人を救うためにチームに同行します。ただしチームの関心は人命救助にはありません。だから彼女はある時点でパーティをこっそり抜け出して友人を探しに出るのですが、この戦場で娘が行方不明になった主人公は彼女を探さざるを得なくなるります。

自分の目的のためにチームが動いてくれないとしても、ここは戦場ですよ。戦場で勝手に動けば他のメンバーにも迷惑がかかるわけで、そこはきちんと報告してから動かなきゃいけないでしょ。

この二人がおかしな行動をとらず、金髪のお姉ちゃんの言う通りにしていれば問題なく任務を遂行できたはずであり、味方が足を引っ張ることで状況が悪化していく映画というのは見ていてストレスが溜まります。

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終末
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公認会計士の理屈っぽい映画レビュー

コメント

  1. 匿名 より:

    様々なゾンビ映画のオマージュを「ストレス」「未消化」とのドヤ顔評価、あまりにも浅すぎて笑ってしまった…

    • コメントいただき、ありがとうございます。

      >様々なゾンビ映画のオマージュ

      具体的にどの場面が何の映画のオマージュになっているのかを教えていただけるのでしょうか。それを踏まえてもう一度見てみようかと思いますので。

  2. やーの より:

    この映画は正直友人にレビューしようにも役者がいい所ぐらいしか出来ませんね。この監督は映画作るのはやめた方がいいと思いました。

    • 登場人物の関係性すらよく分からないというのはカンベンして欲しかったですね。
      クリエイティブ面に口出しをしないというネットフリックスの方針が悪い方に出てしまったように思います。