5点/10点満点中
■ジョンの行動の不合理さはより深刻に
前作は、ジョンをはじめとする登場人物達の不合理な行動に問題があったのですが、その続編は前作の問題点がより拡大した内容となっています。
殺し屋が誓印という契約を交わした場合、その相手方の依頼は絶対に引き受けねばならないという掟があり、今回のジョンの戦いはそこから始まるのですが、最終的にジョンはコンチネンタルに殺しを持ち込まないというもう一つの掟を破って今回の戦いを終わらせます。
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結局掟を破ることになるのであれば、最初の時点からこれを反故にしていればよかったのではないでしょうか。
しかもコンチネンタルの支配人はジョンのマブダチなのだから、その場で射殺しなくても支配人と相談の上で掟に背かない殺し方もできただろうにと、このクライマックスにはまったく納得できませんでした。
更なる続編に繋げたくてこうしたんだってことは分かるんですけど、それならそれで、誰かを人質にとられていて一刻を争っているとか、この場を逃すとサンティーノを二度と捕まえられないとか、ジョンがその場で殺さざるをえないような追い込みが欲しいところでした。
■ウワサほど強くないジョン
そしてこれも前作から気になっていたのですが、ウワサと実物とでジョンの実力が違いすぎるかという問題も引き継がれています。
「ジョンを怒らせたのか。お前、終わったわ」という会話はこのシリーズの定番であり、これだけ言われる以上はセガール並みの圧倒的な強さが欲しいところです。しかし実際のところ、ジョンはしばしばピンチに陥るし、他人に助けを求めにも行きます。
主席連合にもコンチネンタルにも属さない独自の殺し屋集団を率いるモーフィアスに涙目で援助を求め、恐ろしく勿体ぶられた挙句に旧式の銃とたった七発の銃弾を恵んでもらうというくだりなんて、どこがババヤガ(ブギーマン)だよという感じでした。
■世界観にもそろそろ綻びが出始めている
前作のレビューでは、殺し屋稼業が一定の産業化されている点が面白いと書いたのですが、この設定って煮詰めるとアラしか出てきませんね。
本作の後半にてジョンは同業者から追われる羽目になるのですが、ジョンの行くところ殺し屋だらけ。
しかも本作ではNYのみならずローマにもコンチネンタルが存在しており、ここからは世界各国に殺し屋がいることが推測されるのですが、これだけ大勢の殺し屋がいて周辺業界も含めて潤っている世界って、日々何人の人が殺されてるんだって話ですよ。
さすがに需要と供給のバランスがおかしなことになっています。
■キレッキレのアクションだけが救い
前作の時点でキレッキレだったアクションはさらに加速。
前回奪われた愛車を取り返しに敵のアジトに潜入したにも関わらず、結局廃車寸前にまでしてしまった冒頭の激しいカーチェイスに始まり、ローマの遺跡での大銃撃戦、ジョンに匹敵する能力を持つカシアンとの対決など、見せ場は特盛状態。
キアヌも監督もノりにノっていたのか、クライマックスは『燃えよドラゴン』を継承・発展させたガラスの間での格闘なのですが、これがどうやってスタッフや撮影機材を映り込ませずに撮ったのかがサッパリ分からないほどの見せ場となっており、技術的にはものすごいことになっていました。
John Wick: Chapter 2
監督:チャド・スタエルスキ
脚本:デレク・コルスタッド
原作:デレク・コルスタッド(キャラクター創造)
製作:ベイジル・イヴァニク、エリカ・リー
製作総指揮:ジェフ・ワックスマン、ロバート・ベルナッキ、デヴィッド・リーチ、ケヴィン・フレイクス、ヴィシャル・ルングタ
出演者:キアヌ・リーブス、コモン、ローレンス・フィッシュバーン、リッカルド・スカマルチョ、ルビー・ローズ、ジョン・レグイザモ、イアン・マクシェーン
音楽:タイラー・ベイツ、ジョエル・J・リチャード
撮影:ダン・ローストセン
編集:エヴァン・シフ
製作会社:ライオンズゲート、サンダー・ロード・ピクチャーズ、87イレブン・プロダクションズ
配給:サミット・エンターテインメント(米)、ポニーキャニオン(日)
公開:2017年2月10日(米)、2017年7月7日(日)
上映時間:122分
製作国:アメリカ合衆国
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