忍びの家_日本のMr.インクレディブル【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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エージェント・殺し屋
エージェント・殺し屋

(2024年 日本)
日本が世界に誇るコンテンツであるニンジャを地に足の着いた現代劇として蘇らせた、マーケティング的には百点満点なドラマ。ただし中身はなんだかピンボケしているし、血沸き肉躍るチャンチャンバラバラを期待する視聴者に対して、冗長すぎる語り口が冷や水を浴びせる。

感想

Netflixの新作ドラマ。

主演を務めた賀来賢人の持ち込み企画らしいけど、シリーズを通しての脚本・監督はアメリカ人監督のデイヴ・ボイルという、何とも変わった座組となっている。

IMDBで調べてみると、このデイヴ・ボイルという方は過去に藤谷文子や北村一輝が出演した”Man from Reno”というサスペンス映画を製作しており、日本への関心はそもそも高かった様子。

事情を知らない人が見れば、良くも悪くも日本人監督が日本のテレビ局で撮ったとしか思えないような仕上がりとなっている。私は、見終わった今でも「実際に現場を仕切っていたのは日本人じゃなかったのか」と疑っている。それほどまでにローカルな仕上がりなのだ。

海外マーケットを狙ったドラマの場合、妙にグローバルな感性を持つキャラクターが登場したり、主要キャラの何人かは語学に堪能だったりして、日本人の目からは奇異に映ったりするものだけど、本作にはそうした違和感が一切ない。

本当にアメリカ人監督が撮った作品だとするならば、この仕上がりはちょっと凄いんじゃないか。

ただし、日本のドラマ特有の展開の遅さも完コピされているのが本作の欠点。海外の視聴者にはなかなか厳しいと思う。

主人公 俵晴(賀来賢人)とそのファミリーは服部半蔵の直系の子孫であり、小学生の末弟を除く全員が高い身体能力と高度な忍術を身に着けているが、6年前の任務の失敗で長男 岳(高良健吾)を喪ったことで、一家は忍者稼業からは引退していた。

しかし代々因縁のある風魔一族が活動を開始したことで、一家は再び戦いの渦中に身を置くことになるというのが、ざっくりとしたあらすじ。

かつて異能をふるっていた家族が、今は正体を隠して生活をしているという基本設定は、ディズニーの『Mr.インクレディブル』(2004年)を彷彿とさせる。

『Mr.インクレデイブル』と同様に、一家は「本来の力を発揮できないことにストレスを溜めている者」と「このまま平穏な生活を維持したい者」とで二極分化しているのだけれども、前者を担うのが女性陣、後者が男性陣というあたりが現代的。

で、『Mr.インクレディブル』では時に笑いを挟みながら軽快に展開していったファミリードラマが、本作ではしっとりしすぎだしテンポも悪い。

うじうじと煮え切らない賀来賢人の景気の悪い顔を何話にも渡って見せられるのは苦痛でしかなかった。どうせ最後には剣を手に取ることになるのだから、ちゃちゃっと進めればよかったのに。

そして物語は↓のような複数のサブプロットから構成されているのだけれど、これらがうまく収斂していかないまま有耶無耶にされていくあたりの構成のまずさもあった。

  • 山田孝之率いる宗教団体を追う雑誌記者/吉岡里帆
  • 乗客全員が死亡したフェリー事故を調査すべくツアー会社に潜入する母/木村多江
  • 経営の傾いた酒造を再生すべく新たな営業部長を雇う父/江口洋介
  • 退屈しのぎに骨董品を盗む妹/蒔田彩珠と、彼女を追う刑事/ピエール滝
  • 物心ついた頃には忍者稼業をやめていた影響で、何も知らされておらず孤独感を感じる弟/番家天崇

オチから振り返ってもフェリー絡みの話は必要なかったと思うし、弟君のドラマも弱かった。ピエール滝は居ても居なくても影響なかった(そんな役でも全裸になる滝さんの役者魂は買う)。

バラバラだった家族が再結集するあたりが感情的なピークになるべきだったにも関わらず、サブプロットが錯綜しすぎて視聴者の注意が分散してしまうという思わぬ弊害もあったし。

【注意!ここからネタバレします】

終盤に差し掛かると、6年前に死んだはずの兄/高良健吾が戻ってくる。

実は、兄は風魔に寝返っていたのだけれど、それは騙されたとか洗脳されたとかではなく、彼なりに風魔側の理念に共感し、政府の走狗となっている服部こそ悪と断定してのことらしい。

ここからドラマは理念vs理念の戦いに突入するのかと思いきや、風魔側が一体何を守りたくて戦いを仕掛けてきているのかが最後までよく分からず、また主人公が己の立ち位置を問われるということもなく、最終的には勧善懲悪的な終わり方をしてしまうことがカックンだった。

風魔が実現しようとする”日食”というイベントが一体何を指しているのかも最後までよく分からなかったし。

山田孝之が「私は神だ」的なことを言うので、『ベルセルク』の”蝕”的な超常イベントを発動させようとしているのかと思って見ていたけど、与党政治家を一掃したオチを見る限り、そういうものでもなさそうだし。

闇のクーデターが目的ならば日食のタイミングを狙う必要もなく、彼らが何をしたいのかは本当によく分からんかった。

シリーズの継続を視野に入れて、あえてオープンにしていない設定もいくつかあるのだろうけど、それにしてもシーズン1単体でうまくまとめる努力はしてほしいところだった。

あと、宮本信子扮するおばあちゃんが「忍者じゃない、しのびだ」と何度も連呼するにも関わらず、英語タイトルが”House of Ninjas”なのはどうかと思う。

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