ダーク・プレイス【4点/10点満点中_面白いのは最初だけ】(ネタバレあり・感想)

スポンサーリンク
スポンサーリンク
クライムサスペンス
クライムサスペンス

(2016年 アメリカ)
リビーは8歳の頃に一家惨殺事件に遭い、それ以来30代の現在に至るまで被害者への寄付金で食いつないできたが、その金も底を突こうとしていた。そんな折、殺人事件の愛好家クラブから興味本位での事件の再調査の打診があり、リビーはアルバイト感覚でこれを引き受けることにする。

4点/10点満点中 スタートダッシュが決まったのにどんどん迷走していく

導入部の見事さ

一家惨殺事件の唯一の生き残りである元少女が寄付金のみで食いつないできたが、世間の関心の低下とともに寄付金が底を突き、かと言って寄付金漬けの身には労働という選択肢もないことから、変態揃いの殺人事件愛好クラブでの小遣い稼ぎがてら、過去の事件の再調査を開始する。この斬新な序盤には心底引き込まれました。

「家族の仇を探し出す!」みたいな強烈な情念の物語ではなく、今さら蒸し返しても仕方のない話ではあるけど、調べろと言われるからとりあえず調べてますよみたいな主人公のやる気のなさという意外性から、この物語がどんな着地点を迎えるのかの予想がまったく立てられなくなるのです。ミステリーとしては絶好調な導入部であり、結構な傑作になるのではないかという期待も高まりました。

本丸となる人間ドラマが浅い

が、そうした盛大な序盤がウソのように、本編はとにかく味気なくて退屈しました。人間の美しさと醜さが入り乱れる因果に溢れた物語をまるで扱えていないのです。

わが身よりも家族の幸せを願った2名の自己犠牲が、その崇高な意思とは裏腹に家族をより不幸にしたという悲しい物語なのですが、見ている側がその因果の深さや人間ドラマの壮絶さをまったく感じ取れないのです。

パディ・デイ

まず、パティ・デイの苦悩がセリフで語られこそするものの、観客に対して痛みを感じさせるレベルにはまったく達していません。このために、ラストで明かされる事の核心部分が「そんな悲しいことが」ではなく「そんなアホな」になってしまっています。殺人請負業者というミステリーとしての禁じ手をやってまで原作者が描きたかったことを、本作の監督はまったく描けていないのです。

そもそもあの役をクリスティーナ・ヘンドリックスというゴージャスな見た目の女優さんに演じさせたことが問題であり、あんな美人で巨乳の女性を世の男が放っとくわけがないだろうという点が終始ノイズになりました。
調べてみると、当初キャスティングされていたサマンサ・モートンが撮影直前に降板し、元はクリッシ・ケイツ役だったヘンドリックスが繰り上げ当選的にパティ役を引き継いだという経緯があるようです。

ストリッパーに堕ちたエロくて問題のある女性役にはヘンドリックスが適役だったように思うのですが、生活苦にあえぐ幸薄いアラフォー子持ちにはどうやっても見えないという点が厳しかったです。ここまで明確なミスキャストも珍しいのではないかと思います。

ド底辺のシングルマザーにはどうやっても見えない

ベン・デイ、その他

また、悪女を愛してしまったがために自分の人生と家族の命を失い、さらには30年近く経った今でも自分の愛情が間違った方向に向いているという自覚のないベン・デイや、一応は主人公の協力者ポジションにいるものの、そもそもは興味本位の変態であるライル・ワースなど、興味深いキャラクターが多いにも関わらず、それぞれの内面の複雑さがほとんど掘り下げられていません。

リビー・デイ

そして何より問題だと感じたのが主人公・リビー・デイをただの狂言回しにしてしまったことであり、幼少期には分からず、また30年間顧みてもこなかった母や兄の苦悩に直面した大人の女性ならば表すであろう感情や、自分の証言によってベンを刑務所へ送り込み事の核心を覆い隠してしまったことへの後悔といったものをまったく表現していません。
シャーリーズ・セロンという実力も実績もある女優さんを起用しながらこの体たらくは問題ではないでしょうか。

にほんブログ村 映画ブログへ
記事が役立ったらクリック

Dark Places
監督:ジル・パケ=ブランネール
脚本:ジル・パケ=ブランネール
原作:ギリアン・フリン『冥闇』
製作:ステファーヌ・マルシル、シャーリーズ・セロン、A・J・ディックス、ベス・コノ、マット・ジャクソン、アジム・ボルキア、マシュー・ローズ、キャシー・シュルマン
製作総指揮:ピーター・サフラン、ジンジャー・スレッジ、ジリアン・ロングネッカー、トビン・アームブラスト、ガイ・イースト、ナイジェル・シンクレア、アレックス・ブルナー、マティアス・エーレンバーク、ホセ・レビ、ニコラス・ヴァイバーグ、ジェフ・ライス、トビー・ムーアズ
出演者:シャーリーズ・セロン、ニコラス・ホルト、クリスティーナ・ヘンドリックス、クロエ・グレース・モレッツ、タイ・シェリダン、スターリング・ジェリンズ、コリー・ストール
音楽:グレゴリー・トリッピ
撮影:バリー・アクロイド
編集:ビリー・フォックス、ダグラス・クライズ
製作会社:Exclusive Media Group、Mandalay Pictures、Denver and Delilah Productions
配給:A24(米)、ファントム・フィルム(日)
公開:2015年4月8日(仏)、2015年8月7日(米)、2016年6月24日(日)
上映時間:112分
製作国:イギリス、フランス、アメリカ合衆国

スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
スポンサーリンク
記事が役立ったらクリック
スポンサーリンク

コメント