ウインド・リバー_半端な社会派サスペンス【5点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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(2017年 アメリカ)
辺境の地を舞台にしたサスペンスドラマであり、その土地に宿る何とも侘しい雰囲気や、閉鎖的な人間関係の描写には成功しています。その反面、真犯人に行きつくまでの捜査に面白みがなかったり、犯人像がテーマと不整合を起こしていたりと首を傾げざるをえない部分も多く、雰囲気ものに終わったという印象を受けました。

あらすじ

野生生物局の職員コリー(ジェレミー・レナー)は、ネイティブアメリカン居留地で若い女性の遺体を発見する。FBIから派遣された新人捜査官・ジェーン(エリザベス・オルセン)とともに捜査を行うが、居留地の闇にぶち当たる。

スタッフ

テイラー・シェリダンの監督デビュー作

本作の脚本・監督を務めたのはテイラー・シェリダンという人物なのですが、この人は元々俳優で『CSI』や『サンズ・オブ・アナーキー』といった人気ドラマに出演し、また映画ではジェリー・ブラッカイマー製作の『ホース・ソルジャー』に出ていました。

ホース・ソルジャー_21世紀版『ランボー3』【4点/10点満点中】

ただしこの人を世界的に有名にしたのは俳優業ではなく脚本家業であり、2015年の『ボーダーライン』、2016年の『最後の追跡』は共に高評価を受けました。そんなシェリダンの監督デビュー作が本作『ウインド・リバー』なのです。

感想

辺境の荒んだ空気

『ボーダーライン』『最後の追跡』と同様に本作も辺境地域での犯罪サスペンス作品なのですが、荒涼とした雪景色はこの地域の土地柄を反映しており、社会背景とそこで起こった事件を有機的に結び付けることに成功しています。

またジェレミー・レナーが演じる主人公・コリーの、激しい怒りと悲しみを内に秘めつつも、そうした感情を押し殺しながら目的に向かって最短距離で進んでいくヒーローぶりも良いし、かつて自分の家庭を襲った悲劇と今回のレイプ事件を同一視したことでこの事件に深く関与することとなったという動機も簡潔ながらよく整理されています。

犯罪サスペンスとして面白くない

ただし本作の問題は、肝心の謎解き部分が面白くないということです。点と点を線で結びながら核心へと迫るのかなと思いきや、後半の処理がやたら雑なのです。

被害者女性の彼氏の遺体も発見され、その職場だった掘削場に話を聞きに行くと、何も聞かれていない段階なのに掘削場の男たちは警察に発砲を始めて、こいつらが犯人でしたで終わり。主人公達は事件当日の状況を聞き出す前に加害者側の人間を全員銃撃戦で殺してしまったので、どうやって真相を知ったんだろうという点も引っかかりました。

また、彼らの動機の部分もうまく説明されていないのでモヤモヤが残りました。娯楽のない場所で働いているために欲求不満が溜まっていたとはいえ、同僚の彼女をレイプしたり、同僚を殺したりなんてことを簡単にできるものですかね。単独犯ならばまだしも、5~6人の男がいて躊躇する者が皆無だったという点に違和感を持ちました。

社会派ドラマのようだが主題を外している

本編のラストでは、ネイティブ・アメリカン居留区における女性の失踪件数の統計データが存在しないということが字幕で説明されます。居留区では女性のレイプ被害が非常に多いのですが、統計データがないということはまともに捜査もされていないということであり、本作はその問題を扱った作品だったのです。

この主題から考えると、このレイプ殺人の加害者は出稼ぎに来ているよそ者の白人ではなく地元の男であるべきだったし、女性の被害に対して居留区警察がなぜ真剣に取り合おうとしないのかといった点を掘り下げるべきではないでしょうか。ネイティブ・アメリカンを加害者側に置くことが難しいという政治的な理由から、主題がボヤけてしまったような印象を持ちました。

居留区の暗部に迫った『フローズン・リバー』という先行例がある中で、後発であるにも関わらず政治的に妥協してしまった本作の腰砕けぶりにはガッカリでした。

≪雪景色の中のサスペンス≫
白い刻印_不器用な男がすべてを失うまで【8点/10点満点中】
フローズン・リバー_最上位クラスの社会派サスペンス【8点/10点満点中】
ウインド・リバー_半端な社会派サスペンス【5点/10点満点中】
ファイティング・ダディ 怒りの除雪車_興味深いが爆発力不足【5点/10点満点中】
白い沈黙_雰囲気は良いのに尻すぼみ 【4点/10点満点中】

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