(2022年 アメリカ)
海外で凄まじい酷評を受けているネットフリックス版バイオハザードだが、確かに芳しい出来ではなかった。身勝手な人物が身勝手なことをして危機を引き起こす内容だし、ドラマも説明不足なので感情移入が難しい。ただし酷評するほど酷くもなく、まったく見られないレベルというわけでもない。時間に余裕があればチャレンジしてみてもいいと思う。
登場人物
2022年パート
- アルバート・ウェスカー:アンブレラ社の研究開発担当。社運を賭けた精神安定剤ジョイの開発を行っているが、副作用のある同製品を販売することには否定的。
- ジェイド・ウェスカー:アルバートの娘で、ビリーの双子の姉。父のパスワードを使ってアンブレラ社の極秘ファイルを見たことから会社の悪行を知ってしまい、その秘密を探ろうとする。
- ビリー・ウェスカー:アルバートの娘で、ジェイドの双子の妹。アンブレラ社のゾンビドッグに噛まれたことでTウィルスの保菌者になるが、なぜか症状を発症しない。
- イヴリン・マーカス:アンブレラ社CEO。父親から引き継いだ会社を立て直すべく、精神安定剤ジョイの販売計画を進めている。
- サイモン:イヴリンの一人息子で、ジェイド、ビリーの同級生。ハッキングを得意としており、ジェイドからの依頼に応えるうちにジェイド&ビリーと親しくなる。
- アンヘル・ルビオ:アンブレラ社の悪事を追っているルポライターで、旧ラクーンシティのことや、ジェイド&ビリーの正体を知っている。
2036年パート
- ジェイド・ウェスカー:崩壊したロンドンに長期滞在してゼロ(Tウィルス感染者)の研究を行っていたが、その大群に襲われたことから活動基盤を失い、仲間の研究チームと合流すべく仏カレーを目指す。
- ビリー・ウェスカー:アンブレラ社の実質的な支配者となり、ジェイドが所属する”ユニバーシティ”と呼ばれる研究者チームを探している。
- ビー:ジェイドの娘で、文学と芸術に興味と才能を示している。
- アルジャン:ジェイドの夫で、長期間の研究に出ているジェイドに代わってビーを育てている。
- リチャード・バクスター:アンブレラ社の依頼でジェイドを追いかけている男。太めの体格の割には戦闘スキルが高く、人柄も悪くないので味方にすると頼もしい。
感想
普通のつまらんドラマ
テレビゲーム『バイオハザード』を原作としつつ、ストーリーは完全オリジナルのドラマ。
2022年7月14日の配信開始直後からIMDB等では凄まじい酷評が相次ぎ、スコアは驚愕の3.7(2022/7/21閲覧)。
テレビドラマでここまで酷い点数が付いているものはいまだかつて見たことがなく、駄作中の駄作とも言える評価なので、逆に気になっていた。
で、全話見ての感想だが、一気見するような勢いがなく完走するのに5日もかかってしまったので、確かに面白くはなかった。
ただし海外でのレビューほど酷い出来というわけでもなく、ごく普通のつまらんドラマレベルである。
ミラ・ジョヴォヴィッチが主演したシリーズと比較して極めて落ちる出来でもなく、この題材を実写化するとこのレベルに落ち着くのかなとも思った。
迷惑姉妹が世界を滅ぼす話
ドラマは崩壊後の世界が描かれる2036年パートと、その発端部分が描かれる2022年パートに分かれている。
2022年パートはアルバート・ウェスカー一家がニュー・ラクーンシティに引っ越してくるところから始まり、思春期の双子ジェイド&ビリーが自分たち家族の秘密やアンブレラ社の暗部に迫るという形で進んでいく。
思春期の子供の自分探しという王道プロットが置かれているので感情移入しやすいし、スクールカーストや親の呪縛などのサブプロットも定番ながら有効に機能している。
またゲームでお馴染みのアルバート・ウェスカーが子煩悩な中年として現れるという捻りや、アンブレラ社が何をやってきたのかというミステリー要素など、引きの部分もよく計算されている。
最初の数話はなかなか楽しめたのだが、ミステリーの正体がこちらの予測の範疇を超えてこないので、後半になるにつれて「もしかして、何もないのでは?」と不安になってくる。
その究極が第5話「ホームビデオ」で、ジェイド&ビリーが自宅内で父アルバートの仕掛けを辿っていくという内容なんだが、絵画などの中に家族でないと分からないヒントが記載されているなど、結構どうでもいい仕掛けの数々をかなりの時間かけて見せられるので、驚くほど退屈した。
全体から見てもそこまで詳細に描く必要のないエピソードであり、尺を埋めるためにこういう意味のない展開も入れざるを得なかったのかななどと推測してしまう。
こうしてグダグダな途中経過を挟みつつも分かったことは、ジェイド&ビリーが無断でラボに侵入してゾンビドッグに噛まれた上に、あれこれ要らんことを嗅ぎ回って事態を引っ掻き回したのが悪いということである。
確かにアンブレラ社はメキシコで悪事を働いたし、精神安定剤ジョイの販売開始においては安全性を無視しようとしているが、これらが破滅の直接原因になったわけではない。
ビリーがゾンビドッグに噛まれてTウィルスの保菌者になったことが破滅の引き金であり、結論から振り返ると、バカ姉妹が世界を滅ぼした話ということになる。
このオチはさすがにどうなんだろう。
まぁでも総合するとこのパートはそこまで酷い出来でもなく、普通に見られたので良しとしてもいいと思う。
特にジェイドが阿呆すぎる
2036年パートは破滅後の世界でアンデッド(この世界ではゼロと呼ばれる)が山ほど出てきてバイオハザードらしい内容と言えるのだが、こちらの出来はかなりひどかった。
成長したジェイドがロンドンを脱出して”ユニバーシティ”と呼ばれる団体と合流するためフランスへと移動するのが骨子なんだが、この基本的な目的の部分がはっきりとは説明されないので、最初は何やってんだかよく分からない。
何かよく分からんけど行く先々でアンデッドやアンブレラ社と鉢合わせしちゃあ逃げ回ってんなという、考えようによってはゲームっぽい内容にはなっているのだが、ドラマとしては筋が通っていない。
そもそもジェイドがロンドンで何をやっていたのかもよく分からない。うっかりアンデッドを刺激して命からがら逃げだしただけなので。
分からんと言えばジェイド周りの人間関係もそうで、彼女にはアルジャンという夫がいるんだけど、このキャラクターは2022年パートには登場しないので、本作では描かれない期間に出会った人物のようだ。
ジェイドとアルジャンの関係性に係る説明があまりに不足しており、二人は夫婦である以上のことが分からないので、彼女が家族との再会を目指してフランスを目指すというストーリーにもイマイチ気持ちが入らない。
同じく、ユニバーシティという団体とジェイド個人のつながりもはっきり説明されないので、この組織や彼女の任務も見えてこない。
シーズン2以降のことを考えて意図的に曖昧にしている部分もあれば、本当に描写が足りていない部分もあるのだろうが、ドラマの基礎をなす人間関係が不明瞭なので感情移入が難しかったことは確かである。
そして多くの危機をジェイド自身が呼びこんでいるという点もマズかった。
一番ひどかったのはユニバーシティにアンデッドを持ち込むくだりで、アンデッドに上がり込まれづらい洋上を拠点にしているにも拘らず、ジェイドは実験目的でわざわざ船内にアンデッドを持ち込む。しかも組織には内緒で。
ホラー映画的には絶対に失敗する行動であり、実際、失敗してユニバーシティを危機に陥れるのだが、こういううっかりは脇役がやるものであり、主人公はそれを止める側に回るのが常道である。
しかし本作では主人公のジェイドがこれをやらかすので、彼女をどんどん嫌いになっていく。
その後も、どさくさの中で命からがら船に逃げ込んだ後に「あ、子供がいない」と気付いたり、必要もないのにゾンビワニを放って無駄に人を殺したりと、ジェイドのやっていることが阿呆すぎた。
一方妹のビリーはと言うと、彼女は父ウェスカーの跡を継いでアンブレラ側に回ったようだ。
で、彼女は私設軍隊を使って執拗に姉ジェイドを追い掛け回してるんだけど、何のためにそんなことをしているのかは前半部分ではよく分からない。
後半になると、ユニバーシティに辿り着くためにジェイドを利用したということが判明するんだけど、アンブレラ社とユニバーシティの関係性や、彼らがなぜ牽制し合っているのかが分からないので、依然として彼女の目的は判然としない。
ジェイドとビリーが家族喧嘩しているうちにアンデッドの大群を呼び込んでしまい、これまた大勢を死なせることとなるので、最後まではた迷惑な姉妹だった。
≪バイオハザードシリーズ≫
【凡作】バイオハザード_見てくれは良いがスリルはない
【良作】バイオハザードII アポカリプス_見せ場とヒロインで押し切った快作
【凡作】バイオハザードIII_設定は崩壊寸前
【凡作】バイオハザードIV アフターライフ_シリーズの立て直しに失敗
【良作】バイオハザードV リトリビューション_バカバカしくも楽しいアクション大作
【駄作】バイオハザード: ザ・ファイナル_ご都合主義で摩耗しきった最低作
バイオハザード(2022年)_迷惑姉妹が世界を滅ぼす【4点/10点満点中】
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