マダム・ウェブ_何がしたかったんだSSU【4点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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マーベルコミック
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(2024年 アメリカ)
コミックではスパイダーマンのメンター役であるマダム・ウェブとエゼキエル・シムズが衝突するスピンオフだが、肝心のスパイディがこの世界線上にいるのかいないのかはっきりしない中、脇役同士で戦っても意味ないんじゃないか。志村けんも加藤茶も不在のドリフターズで、仲本工事と高木ブーでやってるコントを見せられたような映画

アメコミ映画史上屈指の事故物件

ゴールデンラズベリー賞を受賞し、主演女優からは「こうしたものは二度とやらない」とまで言われ、公開時からまぁ評判の悪い本作。

アメコミ映画の事故物件ランキングを作れば確実に上位に食い込むであろう作品なもんで今の今まで見てこなかったんだけど、たまたま時間の空いた週末にNetflixで見たら、やっぱりつまらなかった。

ヒーローものなのに目の覚めるようなアクションも、アガる展開もなく、そう長くもない上映時間にも関わらず途中で寝落ちしてしまった。結果、二度に分けて見るハメに。

NYで救命隊員をしているキャシー・ウェブ(ダコタ・ジョンソン)は、職務中の臨死体験を経て、未来が見えるようになる。

見ず知らずの3人娘が黒いスパイダーマンみたいなコスプレ男に殺されることを予知したキャシーは、その襲撃から彼女らを救うのだが、実は黒スパとキャシーとの間にも彼女の生前よりの因縁があったというのが、ざっくりとしたあらすじ。

まず本作の良い点を言うと、キャシーの未来予知の描写がとてもユニークかつ効果的なことが挙げられる。

ニコラス・ケイジ主演の『NEXT-ネクスト-』(2007年)のような「今からビジョンに入ります」という見せ方ではなく、現実だと思われた光景が、実は未来予知だったというシームレスな見せ方をする。

これには意外性があったし、未来と現実を同時に見ているキャシーの混乱を疑似体験させる効果もあった。

なおキャシーとはカサンドラの略であり、カサンドラはギリシア神話に登場する悲劇の予言者の名前でもある。

ただし良かったのはこの点くらい。他は本当にグダグダでまったく面白くなかった。

SSU(ソニーズ・スパイダーマン・ユニバース)の他作品と同じく、本作ではコミック『スパイダーマン』に登場した脇役キャラのオリジンが描かれる。

キャシーは後のマダム・ウェブであり、3人娘たちは後のスパイダーウーマンだ。

平凡な人間だった彼女らが能力に目覚め、やがてヒーローの姿でヴィランと戦う物語を誰しもが期待するところだが、なんと本作ではマダム・ウェブとしての戦いが描かれない。

ラストバトルにおいてもキャシーはキャシーのままであり、アメコミ映画を見に来た客の期待を完膚なきまでに打ち砕く。

本郷猛が最後まで変身しない「仮面ライダー」は無価値だろう。本作はそれをやってしまっているのだ。

では、ヒーロー不在を補って余りあるほどキャシーと3人娘たちのドラマが面白いかと言われると、そうでもない。

殺意を持って向かってくる黒いスパイダーマンに対してキャシーがとる行動はあまりに場当たり的すぎて、彼女は3人娘を守ってんだか追い込んでるんだかよく分からなくなるし、3人娘も3人娘で、ついさっき黒スパに襲われて怖い思いをした、そんな緊急事態の真っ只中であるということをモノの数分で忘れ、「隠れておけ」というキャシーの忠告を無視してフラフラと遊びに出てしまう。

これは典型的なイディオット・プロットだ。

イディオット・プロットとは映画評論家ロジャー・イーバートの造語であり、登場人物がバカじゃないと始まらない話のことだ。

このプロットのため、主人公自らが危険を呼び込んでいるようにしか見えず、相対的に黒スパの脅威の度合いも薄まってしまうという悪循環。これで面白くなるはずがない。

あと細かい点だと、中盤にキャシーが3人娘に心臓マッサージを教える場面が唐突に現れる。最後、死にかけたキャシーを3人娘が救う展開でもあるのかなと思ったら、本当にその通りになるというバレバレの伏線には絶句した。

映画作りが下手すぎない?

不完全燃焼を起こしたドラマ要素

そして4人に共通しているのは親がいない(もしくはいないも同然)ということで、そんな心の空白を持った者同士が疑似的な家族関係を結び、やがて強固なチームワークを発揮し始めることが、このフレームからうかがえるストーリー展開であるが、二時間見終わっても、ついにそのような熱い関係性は発生しなかった。

キャシーの相棒ベン・パーカー(言わずと知れたピーター・パーカー=スパイダーマンの叔父にして育ての親)の温かい家庭環境が描かれたのも、一方肉親に恵まれなかった彼女らのドラマを際立たせることが目的なのだろうと思うのだけど、これが全然活きてこない。

時間制約上、4人全員の背景を描くことはできないにせよ、せめてキャシーの物語だけでも深掘りすべきだったんだが、生まれた時にはすでに母親を亡くしていた彼女の生きづらさや、母親に対する複雑な思いなんてものには全然触れてくれないので、家族関係という軸がボキっと折れてしまっている。

そして描写が足らないのはヴィランの側も同じく

本作のヴィランはエゼキエル・シムズ。

2001年のコミックで初登場した割と新しめのキャラクターで、一時期はスパイダーマンのメンター的存在だったのだが、後に自分の身代わりとしてスパイディを利用しようとしていたことが判明する。

コミックでは初老なのだが、オリジンの描かれる本作では若い姿をしている。

ペルーのアマゾンで幻のスーパースパイダーを探しあてたキャシーの母からクモを奪ったばかりか、揉み合いの末に彼女を殺害したのは、この男シムズである。

その際に「自分は恵まれない生まれなのでこうして奪うことも致し方なし」という趣旨の発言をする。

こいつはこいつでいろんなご苦労があり、元は悪人ではなかったのだが、幾多の苦難の末に悪い意味でたくましくなってしまったのだろうバックストーリーを推測したのだけど、シムズの背景に係る情報はこのセリフ以外に存在しない。とんだ肩透かしだった。

この辺りの煮え切らなさは、脚本と監督を務めたS・J・クラークソンに由来するものだろう。

彼女はマーベル×Netflixの『ジェシカ・ジョーンズ』(2015年)や『ザ・ディフェンダーズ』(2017年)で数話の監督を務め、またNetflixのミニシリーズ『ある告発の解剖』(2022年)で全6話の監督とプロデュースを担当した。

元はイギリスのテレビディレクターであり、本作が劇場映画デビュー作となるのだが、2時間という枠内でキャラクターの情報を効率良く描ききることには不慣れだったようだ。

どのキャラクターにもちゃんと背景が考えられていたのだろうことは伺えるのだけれども、画面上でそれがまったく表現されていないので、一つの作品としてはうまく回っていない。

何がしたかったんだ、SSU

本作の後には『ヴェノム・ザ・ラストダンス』(2024年)『クレイヴン・ザ・ハンター』(2024年)が公開された。

年に3本もの新作公開で、いよいよSSU本格始動かという期待も高まった矢先の2024年12月、突如としてユニバースの終了が報道された。

スパイダーマンの名を冠しながら、ついに一度もスパイディと絡むことなく終了した世にも奇妙なユニバース。

今後振り返ることもないだろうから、その足跡を備忘的にメモっておきたい。

ソニーはかねてより保有するIPの展開を狙っており、『アメイジング・スパイダーマン2』(2014年)の後には、同作のマーク・ウェブ監督を司令塔としてスピンオフ作品を連打するつもりでいた。

『キャビン』(2011年)のドリュー・ゴダードが『シニスター・シックス』の監督に就任したという報道は、私もはっきり覚えている。

しかし肝心のアメスパ2が期待されたほど稼げなかったことからプランは白紙状態に。

2015年、MCUが破竹の進撃を続けるディズニーより、「MCUにスパイダーマンを登場させれば、ソニーとディズニーの双方が得するんじゃないか」という取引を持ちかけられ、これに乗ることにする。

かくして製作された『スパイダーマン:ホームカミング』(2017年)は、MCUからアイアンマンを貸してもらえるというこれ以上ないほどの強力なオプションも功を奏し、全世界で8億8千万ドルも売り上げる大ヒットとなった。

この成功に味をしめたソニーは、一度は挫折した独自ユニバース構想を再起動させる。

その第一号が人気キャラのヴェノムであり、人気スターでありながらそれまでライトな娯楽作を避けてきたトム・ハーディ主演という意表を突くキャスティングもモノにした。

結果、世界中で客が入りまくって8億ドルも稼いだ。

確かな手応えを感じたソニーは『モービウス』『マダム・ウェブ』『クレイヴン・ザ・ハンター』の製作を矢継ぎ早に発表。

が、ここで悩ましい問題が発生する。

誰もが気になるのが、ヴェノムはスパイディと対決するのかということである。

現在のスパイディはMCUの一員でもあり、もしもヴェノムとの対戦が実現するのであれば、ヴェノムもまたMCUの世界にいるということになる。

ソニーは「隣接する世界」「MCUの付属物」など、分かったような分からんような物言いに終始した。

噂によると、『ヴェノム』第一作においてスパイディのカメオ出演シーンが撮られていたのだが、マーベルスタジオからの要請でカットされたとのことだ。

どうやら話は付いていないらしい・・・

ファンたちはSSUに対して不安を覚え、待てど暮らせどスパイディが出てこないことに苛立ち始めた。

また世界観の不安定さゆえに作品の質も高まっていかず、興行成績は第一回作品『ヴェノム』を頂点として右肩下がりに下がっていった。

最終作の『クレイヴン・ザ・ハンター』に至っては全世界で6200万ドルしか稼げなかった。製作費1億ドル以上かかっており、完全な赤字である。

こうしてSSUは寂しく幕を閉じたが、発端である『シニスター・シックス』の企画はまだ完全には死んでいないとの噂もある。

またソニーは尻切れで終わった『アメスパ2』の続きも考えているようで、アンドリュー・ガーフィールドのスパイディと共にシニスター・シックスが復活する可能性は、まだわずかながら残っているようだ。

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