アメイジング・スパイダーマン2_悪くはないが面白くもない【6点/10点満点中】（ネタバレなし・感想・解説）

（2014年アメリカ）
世評ほど悪い映画だとは思いませんが、良い出来とも言えません。ピーターとグウェンの関係は前作の蒸し返しに感じたし、ピーターとハリーの愛憎関係は説得力ある形で提示されず、話がうまく回っていかないんですよね。

感想

冒頭、お馴染みのウェブスイングから始まるのですが、カメラの微妙なブレやスーツのはためき具合から浮遊感を演出し、観客にまで空を飛んでいる錯覚を抱かせるビジュアルは驚異のレベルに達しています。

公開時にはIMAX-3Dで鑑賞したのですが、観客にもスイングを疑似体験させる映像感覚には驚かされた記憶があるし、家庭での鑑賞でも本作の映像には格別のものがあります。

続いて壮絶なカーチェイスと銃撃で楽しませてくれて、ツカミは十分。

また、中盤でエレクトロが暴れるのはNYの中心タイムズ・スクエアだし、クライマックスでの発電所バトルもド迫力で、本作の見せ場は実にハイクォリティ。２億ドルという膨大な製作費はダテじゃないのです。

ただし140分という長めの上映時間で、大きな見せ場がたったの３つしかないので、アクション映画らしい満腹感は味わえませんが。

もうちょっとドラマとアクションのバランスを整えて、娯楽作としてまとめて欲しいところでした。

ではお話の方はというと、これが実によく考えられています。

エレクトロ、グリーン・ゴブリン、ライノの3大怪人を出すと聞いた時には、『スパイダーマン３』の悪夢の再現を懸念したのですが、これらとピーター親子の物語はオズコープ社の陰謀という軸でまとめられており、話は驚くほど整理されています。

さらには、前作でリザードになったコナーズ教授のエピソードも本件にはきちんと絡んでおり、シリーズを通しての設計がよくできているのだろうと思います。

ただし、これが面白いかどうかはまた別の話。

スパイダーマンの話って、ピーターが人助けをする話だと思うのですが、市民そっちのけで大企業の陰謀を暴く話を始めてしまうと、コレジャナイ感が出てしまいます。

またその真相が陳腐なもので、ピーターの父リチャード・パーカー博士は異種間交配を成功させたものの、オズコープはこれを軍事利用するつもりだったのでテクノロジーを葬ったという話で、そこには何の驚きもありませんでした。

ウエイランド・ユタニじゃあるまいし、軍事転用を避けるためでしたって陳腐すぎるでしょ。

しかも不幸なことに、同年には『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』（2014年）も公開されており、アメコミ素材でポリティカル・サスペンスをするという試みでほぼ完ぺきな回答を出してしまったウィンター・ソルジャーと比較されると、本作の欠点はかなり目立ちました。

ピーターのドラマも本作では大きく動きます。

グウェンとはくっついたり離れたりを繰り返しているうちに、彼女は英国行きを決断。グウェンは去っていく意思を明確にしたわけで、これに対しピーターはどう反応するのかというドラマがまず一つ。

また親友ハリーが亡き父を継いでオズコープ社長に就任し、ピーターは彼と再会。程なくしてハリーはオズボーン家の遺伝病を発症し、その治療のカギであるスパイダーマンの血清がどうしても必要であると言い出します。そしてピーターはスパイダーマンとの面識があるようなので、是非引き会わせて欲しいと懇願されます。

親友の命がかかった話とあれば、ピーターとしてもその要望を叶えたいのは山々なのですが、他方でスパイダーマンを生み出した異種間交配技術は父が命と引き換えに秘匿したものなので、安々と渡すわけにもいかない。

そんなわけでピーターはいろいろと決断を迫られるのですが、これが心に響いたかというと、そうでもありません。

まずグウェンとの関係は前作で結論を出したはずなのに、本作でも蒸し返して「僕は付き合っていいのだろうか」と悩んでいることが何とも無駄に感じられました。いつまでやるつもりなのと。

またハリーとの関係では、親友に心を開かなすぎ。

前作では大したこだわりなくスパイダーマンの覆面を取って、まぁまぁいろんな人に素顔をさらしてきたピーターが、なぜ本作では親友に対して、しかも彼の命がかかった重要問題を間に挟みながら、自分の正体を明かして丁寧に説明しないのだろうかと、その対応に疑問符が付きました。

ハリーがおかしくなってグリーンゴブリンになったのも、ピーターが協力しないせいで得体のしれない血清に頼ってしまったせいだし、親友としてもっと寄り添ってあげれば、ここまで問題は大きくならなかったと思うのですが。