(2026年 イギリス)
28シリーズ第4弾。第一作より人間の醜悪さを描いてきたこのシリーズだが、ここにきてゾンビパンデミックをほぼ扱わないという豪快なシフトチェンジをしてきた。大きく賛否が分かれる内容であるが、私は賛成票を投じたい。

28シリーズ第四弾にして、三部作のど真ん中
そういえばレビューを一度も書いたことがないけれども、28シリーズ(私の命名)は第一作から映画館皆勤賞である。
『28日後…』(2002年)を見たのはテアトル梅田だった。
実はこの第一作、ゾンビ映画としての宣伝がされておらず、粋のいい若手監督だったダニー・ボイルの新作程度の扱いだったので、劇場にはおおよそホラーなんて見そうにない客層も大勢いらしていた。
あの人たちはどんな感想を持って帰ったのだろう。
その5年後、ゾンビパンデミックを極限にまで追い込んだ続編『28週後…』(2007年)は、アクション性を求める私のような単細胞の観客にとってはご褒美のような映画だった。
私にとってのシリーズ最高傑作はこの『28週後…』であり、続く『28か月後…』の製作を心待ちにしていたのだが(ロシアが舞台になるという噂だった)、その後、シリーズは長い凍結状態に入ることになる。
『バイオハザード』シリーズ(2002-2017年)、『ワールド・ウォーZ』(2012年)、そしてテレビシリーズ『ウォーキング・デッド』(2010-2022年)などゾンビモノ乱立状態の中で、特異性を打ち出す余地がなかったことが原因だろうか。
突如、28シリーズの再開が発表されたのが2024年5月のこと。
17年ぶりの吉報に歓喜したが、時期が空きすぎたためか『28か月後』は省略され、製作されるのは『28年後…』だという。
しかも三部作構想があって、1~2作目を同時撮影し、興行成績を見て3作目の製作を決定するという、知らぬうちに『ロード・オブ・ザ・リング』並みの壮大な話となっていた。
これはどんだけすごいことになっているのだろうと期待も高まったのだが、18年ぶりに公開された新作『28年後…』(2025年)は、何ともパンチ不足な凡作に終わっていた。
28年も経てば、さすがに人々はゾンビパンデミックにも慣れきっており、この非常事態下で生きる術を完全に身に着けている。
それができなかった奴はとっくに死に絶えているからだ。
よってゾンビは大した脅威ではなくなったので、『28年後…』の主人公は非力な少年に設定された。
ただし弱い奴を修羅場に放り込んだところで何が起こるでもなく、実に弱々しい序章よりこの三部作は幕を開けたのであるが、本作『白骨の神殿』より、ようやっとこのサーガの方向性が見えてきた。
パンデミック前を知る世代と知らない世代の相克
まずこの映画、ゾンビ映画としては作られていない。
これが本作の評価を難しくしているところなんだけど、ゾンビには正しく対応できる人間しか生き残っていないので、ゾンビ映画としては成立しようがないのだから仕方がない。
28年前のゾンビパンデミックにより文明が崩壊したことで、パンデミック前を知る世代と、崩壊後しか知らない世代に分断された。
この二つの世代の交流を通し、文明や人間とは何ぞやということを問う、実に高尚なテーマをぶち上げた三部作なのである(おそらく・・・)。
表面上の主人公は、前作に引き続きスパイク少年(アルフィー・ウィリアムズ)なんだけど、本作ではほとんどしゃべらず、ロクな活躍もせず、基本的には傍観者に徹している。
実質的な主人公と言えるのは、レイジウイルスの研究を続けるケルソン博士(レイフ・ファインズ)と、悪魔崇拝者のジミー(ジャック・オコンネル)である。
ケルソン博士は前作からの続投で、名優レイフ・ファインズがチンチンを放り出しての大熱演をしている。
ぶっ殺したゾンビの頭蓋骨をうず高く積み上げたり(タイトルの由来)、ヨウ素を頭から塗りたくって全身真っ赤な姿をしていたりと、外観的にはキ〇ガイでしかないのだけれども、実のところケルソンはゾンビの様子を冷静に観察し、彼らをどうやって人間に戻すのかの研究をたった一人粘り強く続けている。
ゾンビの中でもひときわ体が大きく、武器として使っている麻薬を打ち込んでも死ななかった個体に、ケルソンは「サムソン」と名付けた。
すっかりヤク中になったサムソンは、ドラッグ目当てでケルソン宅を訪問するようになる。
ヤクを打たれてボーっとしているサムソンを見て、「こいつの核には人間が残っているんじゃないか」と考えるケルソン。
ここから「ゾンビたちの凶暴性は幻覚から来ているのではないか」との仮説を立て、ついには投薬治療にまでたどり着く。まさに学問の勝利である。
もう一人の主人公ジミーは、覇王の子を自称している。
本気でそう信じ込んでいるのか、ちょうどいい作り話をしているだけなのかは定かではないが、ともかくこいつは悪魔崇拝者のトップとして君臨し、「ジミーズ」と呼ばれる部下たちを顎で使っている。
ジミーは「チャリティー」と称した拷問をジミーズに命じる。
何の因縁もない家族を縛り上げ、生きたまま彼らの皮を剥がす拷問はシリーズでも屈指のグロ場面で、ヘラヘラと笑いながらこれを遂行するジミーズの嫌らしさも追加され、不快度数はMAXとなる。
何の得にもならない拷問をしているこいつらはゾンビ以下の存在ではないか。
そして自分は覇王の子であるという話を得意満面にするジミーも、その話を鵜呑みにしてしまうジミーズも、どちらもバカで、教養がないこと、情報を精査する能力がないことが、いかに恐ろしいかを本作は描き出す。
このテーマは実に示唆に富んでいる。
例えばSNSにおいても、出所不明の情報を信じ込んでしまい、他人に対して言葉の暴力を振るうことに何の躊躇も抱かないバカどもは大勢いる。
ああいうのもジミーズと同じ性根と言えるだろう。
で、ある時、偵察に出したジミーズの一人がケルソンを目撃する。
白骨の神殿に暮らす全身真っ赤な老人が、巨大なゾンビを従えている。
きっとあれは覇王に違いないと思った部下は、ジミーに対して「あなたのお父さんがいましたよ」と伝える。
「違うし」とも言いづらいジミーは、「あ~確かあの辺にいらしたかもね。お前らにも会わせてやるよ」と超適当な返事をして、とりあえず覇王のところに行ってみることにする。
その後なんやかんやあって、教養のあるケルソンはジミーを論破してその虚構を暴き、ジミーは手下に殺されるのだけれども、その過程においてケルソンもまたジミーから致命傷を与えられて絶命してしまう。
ゾンビの治療法という人類の宝ともいえる英知が、ジミーという大馬鹿によって失われてしまうという皮肉。
圧倒的な絶望と後味の悪さこそがこのシリーズの特色であるが、それでいうと、この〆は過去最高を更新したと言える。
2025年12月に、めでたく第三弾製作の許可がソニーより下りた。
人知れず開発されたゾンビ治療法はどう復元されるのか、続きが気になって仕方ない。


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