(2017年 台湾)
度を越したスプラッタ描写と、それを上回る人間の内面のグロテスクさを描いた作品なのですが、「そんな奴おらんやろ」と大木こだまばりにツッコミたくなるほどデフォルメされた人間ドラマに難ありでした。もっとリアリティに目配せした作風であれば主張がより際立ったと思うのですが。
感想
度を越したスプラッター描写を見よ!
冒頭、二人の怪物がホームレスを捕食するのですが、ここでの血糊や内臓がやたらぐちょぐちょベチョベチョした感じで、のっけから物凄いものを見せられます。
本作はタイトルの通りのホラー映画なのですが、スプラッター描写にはやたらと気合が入っており、台湾映画界の底力を見せられたような気がしました。
女教師大出血からの炎上、スクールバスや学習塾での皆殺し大虐殺など枚挙に暇がないのですが、とにかく凄いものを見せてやる、観客を不快にさせてやるという作り手側の精魂込めた仕事には恐れ入りました。
本作は極めて優れたスプラッターホラーであると言えます。
そして汚らしいルックスの怪物がなかなかのインパクトなのですが、中の人はこんなに美人でした。よくこんな美人をあそこまで汚したなと、こちらでも感心致します。
人間ドラマはデフォルメしすぎ
高校生が怪物の子供を監禁していろいろと酷いことをして、怪物の姉が誘拐された妹を探して台北を血の海にするというのがざっくりとしたあらすじ。
主人公はいじめられっ子で、クラスのリーダー格4人からそれはそれは酷いイジメを受けていたのですが、たまたま怪物の捕獲&監禁のメンバーに入ったことから、いじめっ子グループから仲間と見做されるようになります。
いじめっ子グループが怪物に対して行う所業には嫌悪感を抱きつつも、仲間に入ったことで自分へのいじめは回避できたどころか、他のクラスメイトから攻撃を受けそうになれば「おい、何してくれてんだ」と言って守ってくれるようになったので、心は痛みつつも怪物いじめをやめられなくなります。
この通り、いじめ問題をかなり切実に扱った作品であり、気合の入ったスプラッタ描写以上に人間心理のドロドロが際立つ構成になっています。
いじめっ子のリーダー格がK-POPグループのメンバーにでもいそうなイケメンで、その彼女もアイドルみたいなルックスだったりで、見た目の美しさに対して内面のグロテスクさが強調されており、「怪物と人間とでは、どちらがより怪物ですか?」という禅問答的な問いかけを見出しました。
そうした方向性は良いと思うのですが、人間ドラマをちょっとデフォルメしすぎてリアリティが減衰しすぎかなという印象です。
例えば序盤、主人公は学級費を盗んだという疑惑をかけられてクラス全員から言葉の暴力を受けるのですが、その場にいる教師までが主人公を攻撃する側に回っているのは、いくら何でもリアリティに欠けます。
また、いじめっ子のリーダー格が他のクラスメイトを殴った件で教師から責められる場面でも、父親が犯罪者で血は争えない的な、さすがにそんなこと言う奴おらんやろという発言が飛び出します。
いじめっ子はいじめっ子で、学校からの命令で老人ホームへの奉仕活動へ行かされた際に老人をおもちゃにして遊ぶという、これまた常識をフライングしすぎたことをします。
全体的にやり過ぎであり、もうちょっと現実寄りにしてくれると素晴らしいホラー映画になったのに、なぜここまで振り切っちゃったんだろうという印象です。
面白いのは面白かったんですけどね。
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