デイシフト_派手で楽しくて雑【6点/10点満点中】(ネタバレあり・感想・解説)

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スプラッタ
スプラッタ

(2022年 アメリカ)
バンパイアハンターに組合が作られていたらという一風変わった吸血鬼ものだが、奇妙な設定はさしてドラマに影響を与えておらず期待外れだった。他方でスタントマン出身の監督の手腕は見せ場でこそ発揮されており、アクション映画としては見どころの多い作品となっている。

感想

バンパイア×ジョン・ウィック

タイトルの『デイシフト』とは”日勤”という意味。

ジェイミー・フォックス扮するバド・ジャブロンスキーはL.A.のサンフェルナンド・バレーでバンパイアハンターをしているのだが、この世界ではバンパイアハンターが産業化・組織化されており、彼らを管理する組合が形成されている。

かつて、あまりにも派手な仕事ぶりが問題視されたバドは組合を除名されており、以降は闇ハンターとして活動してきたのだが、目の中に入れても痛くないほど溺愛している娘が経済的事情から嫁の実家のフロリダに引っ越そうとしていることから、金策のため組合に入り直そうとしている。

バンパイアハンターというフィクションの産物に、組合だの規定だのと世知辛い事情が付いて回るという設定からは、殺し屋が産業化・組織化された『ジョン・ウィック』シリーズを否応なく思い出すが、本作は『ジョン・ウィック』シリーズのチャド・スタエルスキが製作している。

そして監督はチャド・スタエルスキと同じくスタントマン出身のJ.J.ペリーだし、脚本の手直しを行ったのは『ジョン・ウィック/パラベラム』(2019年)を執筆し、現在制作中のシリーズ第4弾と第5弾でも続投しているシェイ・ハッテンである。

この通り『ジョン・ウィック』関係のスタッフが集まって作った、『ジョン・ウィック』に近いコンセプトのバンパイア映画だと言える。

ただしバンパイアハンターを個人事業主として描くという試みは、さほど面白さに繋がっていない。

有能だが粗暴な主人公にとって組合は煩わしい存在ではあるのだが、彼の活動に著しい制限をもたらすというほどでもなく、いざバンパイアとの戦いが始まれば全員が組合の掟など忘れてしまう。

設定と見せ場が遊離しており、双方が影響を及ぼし合っていないのである。

またストーリーの焦点はバドのお目付け役として組合から派遣された事務職員セス(デイヴ・フランコ)との関係性に移っていき、個対組織から個対個へと変容していくので、組合や掟の存在が余計に希薄になっていく。

奇抜な世界観をストーリーに反映する努力をして欲しいところだった。

バンパイア側の設定はグダグダ

対するバンパイア側も設定こそよく練られてはいるが、うまくストーリーに反映しているとは言い難かった。

この世界には5種類のバンパイアが生息しており、お互いに単独行動を好んで異種間の交流は発生しないらしい。

なのだが、表向きは不動産業者であり、バンパイアとしては古株のオードリー(カーラ・ソウザ)は、ここサンフェルナンド・バレーをバンパイアの街にすべく画策しており、本来は仲の悪い5種のバンパイアを統合している。

かといってオードリーは社会の支配権獲得などといった野心に突き動かされているわけではなく、バンパイアハンターの活動により仲間が狩られ、数を減らしている現状に胸を痛めており、団結することでの繁栄を目指しているようにも見受ける。

この通り設定上は善とも悪ともつかない複雑なキャラクターではあるのだが、物語においてその多面性は生かされておらず、ひたすら純粋悪に近い平板な描写となっているのはもったいない限りだった。

バンパイアが5種類いるという設定も同じくで、彼らの特徴の違いを戦闘場面などに落とし込めば面白かったと思うのだが、何がどう違うんだか最後まで分からず仕舞いなので設定が活きてこない。

その他、動機は分からないが強い味方になってくれるファーストサマーウイカみたいなお隣さんバンパイアのキャラがよく分からなかったり、他のバンパイアが首を落とされると絶命する中、バンパイア化したセスだけは首を落とされても生き続ける理由が分からなかったりと、説明不足な点も部分も多い。

アクロバチックなアクションは見る価値あり

そんなわけでストーリーはイマイチなのだが、アクションの達人が集まって作った作品だけに見せ場の質はピカイチで、目で見て楽しめるアクション映画になっている。

冒頭、老婆の姿をしたバンパイアを倒す場面からして凄いのだが、人間ではありえない方向に関節を曲げられるバンパイアと、銃器で完全武装した主人公との戦いには激しさと奇抜さが同居している。

中盤ではバンパイアハンターとして我らがスコット・アドキンスが登場するのだが、その素早い身のこなしには惚れ惚れとしたし、銃撃と格闘のバランスは抜群に良かった。

クライマックスではガトリング砲乱射や紫外線爆弾炸裂など派手な破壊が炸裂し、大作らしいボリューム感もバッチリである。

この通り、見せ場に関してはほぼ成功しており、アクション映画らしい満足感を味わうことができる。多くを期待しなければ及第点を付けられる映画ではなかろうか。

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